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決戦! 秘密結社オリュンポスVSヒーロー戦隊

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決戦! 秘密結社オリュンポスVSヒーロー戦隊
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リアクション

「うふふふ、混沌なる合成獣乙女、次百姫星!」
「地獄から来た屍の主、呪われた共同墓場の死者を統べる墓守姫」
「黒き翼のハルピュイアクイーン、バシリス・ガノレーダ!」
「私たちより後ろに行こうとするなら、その体に宿る魂を頂きます」
 まさに怪人の姿にて現れたのは、次百 姫星(つぐもも・きらら)呪われた共同墓場の 死者を統べる墓守姫(のろわれたきょうどうぼちの・ししゃをすべるはかもりひめ)バシリス・ガノレーダ(ばしりす・がのれーだ)の三人。
 数種の獣の部位を合成した姿の姫星、ゾンビの姿をした墓守姫、ハルピュイア(あるいはハーピー)の姿をしたバシリスの三怪人が行く手を塞ぐ。
 それに対抗するのは、二人。
「これは、そこらにいる怪人より怪人って気がするな」
「そうですね。人の姿ではありませんからね」
 紅坂 栄斗(こうさか・えいと)ルーシャ・エルヴァンフェルト(るーしゃ・えるう゛ぁんふぇると)が相対する。人の姿ではない三人にも怖気ず一歩も引かない。
「……どうするどうする! 今か、否か!? だがまだタイミングではない気が……」
「そこにいるのは、だーれーでーすーかー?」
 姫星の赤い瞳がギョロっと動く。
「く、くそう! バレたからにはしょうがない! ふぅはははは! 俺の名は高塚 陽介(たかつか・ようすけ)、お前らを灰にする者だ!」
 現れた三人目のヒーロー、高津 陽介。心なしか足が震えているように見えるが、武者震いだ。
「……助けになるのでしょうか?」
「大丈夫だと思うよ」
「相手は三人ですよ?」
「こっちも三人さ。それに今の俺たちは、ヒーローだからね」
「……そうでしたね。では参りましょうか」
「ああ、ヨウスーも援護、よろしくね」
「よ、ようすーって俺のことか? 貴様、人に勝手に渾名を!?」
「黒影招来!」

「「魔影装甲!!」」

 栄斗は右腕を左肩まで持っていき、掛け声とともにその手を振り下ろす。
 ルーシャもまた叫ぶと同時に左耳の『誓いのイヤリング』を指で弾く。
 黒い影の塊となり、やがて漆黒の金属鎧を纏った栄斗が現れる。
「闇より暗き影を纏いて、尊き世界の黄昏を断つ。魔影装甲ヴァルシャード、見参!」
「か、かっこいいー……って、俺も負けてられないな! 行くぞ、変身!」
 負けじと陽介も変身を敢行。
「我が大志は尽きることなく、燃え盛るッ!! サンバースト、参上!」
 変身時に、炎がモチーフのマントを羽織る、お手軽な変身をした陽介。
「おーかっこいい!」
「だ、だろ!? ずっと考えていた設定、じゃなくてずっと眠らせていた真の力をわかるとは、やるじゃないか! 本来なら怪人共々倒すところだが、今回は協力してやる!」
「ほんと? ありがとう、助かるよ」
「お喋りはそこまでですよ! 変身まで待ったんですから、いい加減戦ってください!」
「ゾンビたちもたんまりと出しといたわ! 質? 戦争は数、物量よ!」
「それじゃまずはバシリスからいくヨー! 〜♪」
「これは、歌か?」
 陽介が言うように、バシリスは上空から歌を歌いだす。だが、ただの歌ではない。
「な、なんだ? 意識が、刈り取られるように、朦朧として……」
 バシリスが歌っていたのは『呪いの歌』、恐怖心を煽らせかのようにビブラートが響き渡る。
「〜♪ 〜♪ 〜♪」
「ぐぅ、ぐぅう……」
 陽介は歌をまともに聴いてしまい、その効果から逃げられなくなってしまう。
「そうそう、悲鳴で歌を奏でてヨ♪ 血で大地を染めてヨ♪ 恐怖と絶望で世界を彩ってヨ♪ フフフ、フフフフフ……」
「こ、このぅ!」
 何とか持ちこたえて『火術』を使うものの、空中のバシリスには遠く届かない。
「だ、だめだ……力が……」
「そろそろ、行くヨ!」
 目を見開いたバシリスが急降下する。鋭い足の爪を陽介に向けて、刈り取ろうとする。
「だめだめ、ヨウスーは助っ人なんだから、ここで倒されると困るんだよ」
『だそうですので、止めさせて頂きます』
 絶妙のタイミングで陽介の助けに入る栄斗。
「も、もう一人が!? でも、ユーだってバシリスの歌にメロメロじゃ……」
「ああ、これ聞いてたから平気だったよ」
 栄斗の耳にはイヤホンが付けられていた。栄斗は携帯音楽プレイヤーを常に持ち歩いており、中に入っているアニソンを聞くことでバシリスの攻撃を回避していたのだ。
「そんな、バシリスの歌が機械に録音された歌に負けるなんて」
「好みの問題じゃないかな? 何にせよ、ヨウスーは倒させないよ!」
 栄斗の一撃がバシリスにヒットする。だがバシリスは倒れず、一旦後ろに引くことを選択した。
「ふ、ふんっ余計なことを!」
「ごめんねーつい手がでちゃったよ」
「さて、次は私の番よ?」
 前に出てきたのは墓守姫、そして無数に呻くゾンビたち。その大合唱は体を底冷えさえるようだった。
「な、なんだこの数は!」
「私は屍たちを統べる主、これくらいは容易いわ」
「く、くそう! 負けるものか!」
 ゾンビの群れに向き直り、魔力を貯める陽介。
「必殺、サンフレイム! 燃え尽きて、灰燼と化せッ!」
 魔力が、大きな炎の塊となってゾンビに放たれる。陽介の必殺技『サンフレイム』、太陽の如く大きな火球を敵にぶつける技だ。
「要するにでっかい炎の塊ね」
「概要を言うな! だが! これでゾンビの数も少なくなったな。ふっ、燃え尽きて灰と化せ……」
「掛け声と一緒じゃない」
「いーいーんーだ!」
「まあ、どうでもいいけれどね。いくらゾンビを灰にしようとも、蘇らすだけだし」
「なっ!?」
 倒したはずのゾンビたちが復活する。どころではなく更に数を増している。
「それと、このゾンビたちは映画なんかにでてくる鈍いだけではない」
 『指揮』を使用することでゾンビたちにですら連携を持たせることに成功する。
「うわ、すごい機敏になった。仕事したいです! みたいに早いゾンビも不気味だね」
「言ってる場合か! う、うわあ!」
 早速連携の餌食になる陽介。なるのだが、どうにかこうにか生き延びる。そこへ更なるゾンビたちが襲いくる。
「それじゃ、ちょっとの間頑張ってね」
「ちょっ!? 助けろ!」
「もちろん、そのつもりだよ」
 そう言って【ダークヴァルキリーの羽】を使用して、墓守姫に急接近する栄斗。
「……あちらは囮? ……あの速さじゃゾンビたちには捕らえきれない!」
「ヨウスーの強さを見くびるからこうなるんだよ? それじゃこっちも必殺技いきますか!」
 加速状態のスピードも考慮に入れて剣を構える栄斗。
「我、黄昏の帳断ち切る剣担う者なり! 喰らえ、『トワイライト・エッジ』!」
 巨大な光の刃がゾンビの群れ共々墓守姫を正確にとらえて、ダメージを与える。
「がはっ!?」
 事前に前にゾンビたち集めていた墓守姫もダウンすることはなかったが、これ以上の戦闘継続は不可能と判断して一歩下がる。
「まったく、情けないですね」
 そして堂々と現れたる、合成獣・姫星。不適に笑うその瞳は真紅のように赤く、見続ければそれだけ射殺されそうになる。
「お待たせ致しました。ここからは私が相手になりますわ」
「もったいぶらずに三人でかかってくればいいのに」
「私も思うところがあるのですよ、たまには一人で暴れまわりたい時が」
『他の二人よりも一層強い力を感じます、気をつけてください』
「わかった、守りは任せるよ」
『命に代えてもお守りします』
 そうして二人は戦い始める。栄斗は【ソードオブトワイライト】を使用し、姫星は強化された竜の爪を駆使して激しい攻防を繰り広げる。
『……左68度から攻撃、来ます』
「ここかな!」
『そのまま繋ぎに蛇の尾が来ます。かわしてください』
「はいよっと!」
『足が来ます。早いですから』
「先に対処だね!」
「……やりますね、魔鎧さん」
『お褒めに預かり光栄です』
 二人が一進一退の激戦を繰り広げる中、陽介が力をためていた。
「貴様ら、俺を無視して話を進めるなー! 必殺、サンフレ……」
「させないよヨ!」
「お、お前はさっきの……ぐあああっ! 必殺技くらいちゃんと打たせろ!」
 バシリスが陽介の必殺技を妨害。そのせいで『サンフレイム』が栄斗の方へと向かっていく。
「あら、大きな火球ですこと」
「そうだねぇ、大した大きさだよね」
「あ、危ない! 避けろ!」
 栄斗が火球をかわして、一旦後ろへ。それにあわせて姫星も後ろに下がった。
「ふぅ、一息つけたよ。ありがとう」
「す、すまん。誤ってお前の方に火球を……」
「当たってないから平気だよ。それにヨウスーはそれ以上に助けてくれたじゃない」
「……俺が?」
「ゾンビの群れを焼いたり、囮になってくれたり、歌の時だって必死に反撃してた」
「いや囮はお前が勝手にしただけだろう!」
「大丈夫だって思ったからね、だから今回もよろしく頼むよ。ヒーローっぽく決めちゃって」
「な、何を言って、おい!」
 それだけ言い残して三人へと向かう栄斗。
「……だー! もうやけくそだ!」
 腹を決めたかのように走り出す陽介。
「安心して、あなたたちもすぐに仲間に入れてあげるから、フフフ……」
「歌に狂って、ズタボロになる。それがあなたたちへの手向けのレクイエム〜♪」
「さあ! 何よりも、強く逞しく恐ろしくそして美しい私に平伏すのです。そして、そのまま…死んでください。フハハハハハッ♪」
 悠然と向かえる三人の怪人。
「こんのぅ!」
 『火術』を複数出して、三人を狙い打つ陽介。
「当たりませんわ!」
「かもね。だから本命はこっち!」
 避けた状態の三人に『トワイライト・エッジ』を繰り出す。

ドーンッ!

「や、やられたか……」
「そんなー! だヨー……」
「だけど、まだ私がいます!」
 余力を残していた姫星だけが栄斗の攻撃をかわすことに成功する。
「とりましたわ!」
「ううん、とられたんだよ」

トン……

「え、なに―――」
「僕が本命って言ったね? ごめん、あれ嘘なんだ。ね、ヨウスー」
 空を飛んでいる姫星の付近に飛べないはずの陽介がいた。その右手は姫星の腹部に触れている。
「な、なぜ! あなたは飛べないはずじゃ!」
「……まさか、『飛ぶためだけに『サンフレイム』使うとは、設定泣かせだよ」
「……! さきほどの爆発音はそれだったのですか!」
 『トワイライト・エッジ』が繰り出された瞬間、爆発音が聞こえていた。しかしあくまで剣技である攻撃では爆発は起き得ない。
 そう、あの爆発音は陽介が地面に『サンフレイム』を叩きつけて、『トワイライト・エッジ』をかわした姫星に届くための、いわばジャンプ台。
 そして届いた。
「俺さぁ、魔法が恰好良いからって学校決めたのに才能無さ過ぎて触れてる物にしか魔法使えなかったんだ。今でこそ、ちょっとは使えるけどさ」
「……!」
 なぜ、そんなことを今言うのか。その意図を察した姫星が陽介を放しにかかる。
 だがもう遅かった。
「だから来る日も来る日も練習したんだ、お手製のやられ役人形で……。だからさ、これだけはさ! 
 かっこ悪いけど! 大得意なんだよぉっ!
 ありったけ、自身がこめられる魔力を内側へと注ぎ込み、燃やし尽くす。
「か、はっ!」
 陽介の最弱で最強の輪にによって遂に姫星が倒れる。
「お見事だよ! ヨウスー!」
 陽介の見事な活躍に賞賛を送る栄斗。しかし、陽介の様子がおかしい。
「……おっ」
「おっ?」
「落ちるー!」
「あっ、飛べないんだっけ。ヨウスー」
 そのまま地面へと落下し、大・激・突! を果たす陽介だった。