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リアクション
魔王城、裏門。
「ここから城内に入りますよ」
「城が動いているのを見た時は驚いたねぇ」
稲穂と木枯はフレンディス達を城の裏門に案内した。その途中、第七式が動いているのを見て驚きつつも楽しんでいた。
「はい。動く城もあるんですね。それに花火や花びらが降って来たりこの世界はとても楽しいですね」
フレンディスも木枯と同じように楽しんでいた。
「……そんな事よりも早くあの二人に会いに行くぞ」
さっさとこの気苦労から解放されたいベルクはロズフェル兄弟に会って文句を存分に言いたい。
「ご主人様、突撃です! 勇犬たる僕の活躍をしっかりと見ていて下さい」
ポチの助はぴんと背筋を伸ばし、胸を張ってフレンディスに言った。すっかり可愛い勇者である。
「はい。お願いします」
フレンディスは笑顔でポチの助に言った。
そして、稲穂と木枯の案内で裏門をくぐった。
待っていたのは、
「……よく来ました」
ホリイだった。あらかじめ木枯達がフレンディス達をここに案内するのは知っていたので自分一人だけである。
「勇者を案内しましたよ」
「来たよ〜」
案内人の稲穂と木枯。
「あの兄弟に会わせて貰おうか」
ベルクが疲れ気味に言った。
「下等生物、戦いを挑むのなら勇犬たる僕が相手なのだ!」
ポチの助はやる気満々。
「…………(本気でかかると相手さんも本気だから厳しいですよ。どうしよう降参か逃走しましょうか)」
ホリイはどうしようかとポチの助を見ながら考えていた。相手をあんまり怪我をさせないようにしなければならないが、本気のようだし。本気の相手に手を抜けば確実に痛い目に遭う。ここは降参か逃走か。ブリジットが自爆するまで後少しなのに。
「戦うのか」
さっさと終わらせたいベルクがホリイに問うた。
「戦うのはやめようよ。怪我なんかしても楽しくないよ〜」
「そうです」
困っているホリイが何か言う前に心優しき木枯と稲穂が力強く言った。ポチの助達に怪我をして欲しくないしホリイも当然傷付いて欲しくないから。
「……それもそうですね」
ホリイは一緒に街を歩き回った木枯と稲穂の言葉で戦うのをやめた。
「ご主人様! 急ぎましょう」
ポチの助はさっさと行った。
「あ、はい。あの、ありがとうございます」
フレンディスは一言ホリイに礼を言ってポチの助を追った。ベルクも続く。
「私達はここまでです。気を付けて下さい」
「それじゃね〜」
稲穂と木枯はフレンディスを手を振って見送った。本当は魔王軍だったのだが、ポチの助が頑張っているのを見ると思わず協力したくなったのだ。
勇者三人を見送った後、
「君はこれからどうする?」
木枯がホリイに訊ねた。
「そうですね。役目も終わってしまったですし」
ホリイは返答に困った。予想外にあっさり終わってしまったので。
「それなら街に行きましょう。ここにいたら他の勇者軍と戦闘になりますよ」
稲穂が楽しい提案をした。
「そうだよ。少し楽しんでから避難しても大丈夫だよ〜」
木枯も誘う。
「……先ほども楽しかったですし、行きます」
ホリイは少し考えた後、二人と一緒に行く事にした。
「行こう。人数が多い方が楽しいからねぇ」
「三人で何か食べましょう」
楽しそうな木枯と稲穂。
「はい」
ホリイも楽しそうにこくりとうなずいた。
三人はまた街を歩き回り、しばらくして避難場所に移動した。
樹の『指揮』でとりまとめられたキスミを含む勇者軍は森にある抜け道を抜け、城壁を越えた。
「ようやく、来おったか、キスミよ」
抜け道の先に待っていたのはモンスター達を引き連れた羽純だった。
「……あっ」
キスミは羽純を見た途端、表情が明らかに曇った。
「……魔王軍としての仕事の前に少しばかりよかろうか」
羽純はゆっくりとキスミの前に立ち、『その身を蝕む妄執』を使い、ヒスミに見せた情景をキスミにも見せた。
「……」
見終わったキスミの表情は真っ青だった。
「……楽しんでおるのも結構じゃがこれが最後の楽しみかものぅ」
羽純は含みのある物言いをしながらキスミを見た。
「……」
言葉を失ったままのキスミ。
「よく考えることじゃ。魔王軍としてのは仕事はさせてもらうがな」
羽純はしっかりと釘を刺した。
「……」
ぼうっとしているキスミが現実に戻るのを待たずに羽純はモンスターを突撃させ、自分も『稲妻の札』や『歴戦の立ち回り』を使い戦闘に加わった。
モンスターには真っ先にキスミを狙わせる。
「おい、ぼんやりするな」
セリカが勇ましく登場し、ハルバード型の『光条兵器』でモンスターを容赦なく葬り去った。モンスターが瀕死になる隙も与えずに。
「自分が始めた事なんだから最後までやり遂げないといけないぜ」
ヴァイスは叱責と共に登場。
「……仕方が無いからキスミを引っ張って行って」
アゾートは近くにいる協力者達に言って自分はヴァイス達と共に戦闘に加わった。
「くらいやがられなのですっ!!」
ジーナはハリセンを存分に活躍させた。
「……何なのよ」
セレンフィリティは『アルティマ・トゥーレ』で氷付けにして行った。
「……互いに大変ね」
セレアナは『女王の加護』で羽純の攻撃から身を守り、『光術』を使った。
「……む」
羽純は目くらましに攻撃を一瞬止めた。
「キッス君、行くよ」
戦闘にまだ慣れていないため魔鎧化したホープに守られているアスカがキスミの腕を引っ張った。
「行くのだ。まだ、我の説教があるのだ」
「ぴきゅ(行くのだ)」
「……任せた」
薫、ピカ、孝高もキスミと共に行く。
「ルカも行くよ」
「……ようやく終わりか」
当然ルカルカとダリルもキスミに付き添う。
心得ている羽純はヒスミの元に急ぐ勇者軍はわざと無視をする。
この世界を脱出するためとヒスミにさらなる説教を加えるために。
羽純と残った勇者軍の戦闘はモンスターが全滅するまで続いた。
モンスター全滅後、
「……わらわの役目も完了じゃ」
羽純は攻撃をやめた。
「お疲れ」
ヴァイスが陽気に労う。
「しばらくすればブリジットが自爆するから避難をした方がよいぞ」
羽純は皆に知らせている内容をもう一度念のために口にした。
「そう言えば、そんな事言ってたわね」
セレンフィリティは思い出したように言った。
「派手に終わりそうね」
セレアナはため息をついた。
「他はどういう状況でございますか」
ジーナが他の場所での戦闘具合を訊ねた。
「……今頃、他もわらわと同じ状況じゃろう。自爆もすぐじゃ」
羽純は推測で答えた。
「そうか。自分達が花火になる訳にはいかないな。勇者と魔王の盛大な花火を見たかったが」
「ですね。こたちゃん、行くでございますよ」
樹とジーナは避難する事に決めた。
「あい」
コタローは元気に返事をした。
樹達は避難場所に移動した。
「セレン、私達も避難するわよ」
「そうね」
セレンフィリティ達も避難に決めた。
「……俺達は行くぞ」
「最後まで役目は果たさないとな」
「ボクも行くよ」
セリカ、ヴァイス、アゾートはヒスミの所へ。
「……さて、わらわも避難するかのぅ」
羽純は避難場所へと移動した。