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第8章 ジャウ家の参加(エロ注意)

 ベッドの上。
 クリストファーの白い肌に流れる汗を、ムティルの指がすくい取る。
「……どうだった? 俺の歌は」
「ああ。いつ聞いても素晴らしいが……ベッドの上で聞くのが一番だ」
「それが一番っていうのも何だか悔しいね」
 苦笑しつつベッドから出ると、上着を羽織る。
「ムティルくんに聞かせるのは久しぶりじゃない? この間……弟くんと一緒の時以来」
 クリストファーの言葉に、当時の、3人での出来事を思い出したのか顔を背けるムティル。
 しかしふと思いついたかのように、クリストファーに問う。
「あの時…… 気付かなかったか? その、違和感というか……」
「え……別に何も」
「そうか。ならいいんだ」
 それ以上何も言う様子のないムティルに、クリストファーは首を傾げる。
 が、それも一瞬。
「たまには運動するのもいいよね。外に出るのはどうだい? ちょうど今日、大きなオークションが開催されるんだって。弟くんの目くらい誤魔化せるよ」
「ああ。誤魔化すのは簡単だった」
「え?」
 ムティルの言葉の意味に気付き、驚いた様子で彼の顔を見る。
 悪戯が見つかった子供の様に小さく笑っていた。
「少し用事があって、そこの、窓からな」
 大きな窓を指差す。
 下は庭。
 二階だが、窓枠をつたえば簡単に降りることができるだろう。
「なるほど。部屋から一歩も出ない日って、そういう事だったの」
 得心がいった様子で頷くクリストファー。
 意外に食えない当主のようだ。
「た……大変だよ!」
 ムティルの部屋に走りこんできたのはクリスティーだった。
「何だ」
「どうしたの?」
「今、オークションのサイトをチェックしてたら……これ、この出品物!」
 パソコンの画面を二人に向ける。
 そこに映っていたのは、薔薇と月と雲の、ジャウ家の紋章。
 その、品物。
「ジャウ家の品が、オークションにかけられてるよ」
「ああ、知っている」
「大変なことじゃ……え?」
 慌てて報告に来たクリスティーは、ムティルの落ち着いた様子に拍子抜けした様子で動きを止める。
「それはもう、家の物じゃない。競売にかけられてもこちらの関わるべきことではない」
「ムティルくんの用事って……」
 クリストファーの呟きに頷くようにムティルは立ち上がると、服を羽織る。
「……しかし、最後まで見届けるべきかもしれない。行ってみるか」
 屋敷を出る途中で会った北都とモーベット、ルカルカとダリルらも誘うと、ムティルはオークション会場へ向かった。

   ※※※

「ムシミス。君はムティルを幸せにしないといけない」
「そうですね、先生」
「となると、ムティルを自分で養うということを考えないと行けない」
「なるほどそうなんですね」
「ということで、オークションに参加してみよう」
「はい、分かりました!」
 アーヴィンの言葉に素直にこくこく頷くムシミス。
 ムシミスは、アーヴィン・ヘイルブロナー(あーう゛ぃん・へいるぶろなー)から経済の授業を受けていた。
「ということで、出品者として参加してみようか」
「でも先生、出品する物は?」
「これを君に託そう!」
「これは……」
 取り出したのはアーヴィンが今まで作成した同人誌とそのデータ。
 どこかの学校の校長とパートナーのあれこれとか兄と弟のそれこれとか、そういう系統のお話という形の夢が目一杯詰まったもの。
「再販するもデータをばら撒くも、好きに使ってくれ」
「ありがとうございます先生! 僕、頑張ります」
 分かっているのかいないのか、手渡されたデータを胸に感激した様子でアーヴィンを見上げるムシミス。
 そして、彼らもオークション会場へ向かうのだった。