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年忘れ恋活祭2022 ~絆~

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年忘れ恋活祭2022 ~絆~
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リアクション

 中央広場。

「何で俺だけおいてけぼりなんだよ。しかも財布も無いし」
 漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)に財布を抜かれ放置された樹月 刀真(きづき・とうま)は仲間捜しを始めた。しかも携帯電話は月夜しか持っておらず、メールには三人で飲みに行くというメールしかなかった。手掛かりとしては頼りなかったり。

 賑やかな居酒屋。座敷の部屋。

「信じられないっ! 刀真、私の前でおっぱいが大きい方が良いって言うんだよ。私が気にしているの知っているのに。デリカシーが無いと思わない? 刀真なんか知らないもん」
 月夜は酒をがぶ飲みしながら刀真に対しての愚痴を並べる。その刀真の発言で月夜は拗ねて今日みたいに勝手に行動する事が多くなったのだ。

「そんなに速いペースで飲むのは身体に毒ですよ。そもそも支払いはどうするのですか」
 封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)はひっきりなしに酒をあおる月夜と豪勢な酒とつまみの支払いを心配する。
「支払いは心配ないよー。刀真の財布を借りて来たから」
 月夜は刀真から抜き取った財布をひらひらと見せながら答え、酒をさらにあおり続ける。
「知らないもん! とか言いながら刀真が我らとだけ仲良くするのが嫌で飲みに連れてきているのだろう?」
 玉藻 前(たまもの・まえ)が日本酒をちびちび飲みながら言った。
「ち、違うもん」
 図星を突かれた月夜は焦って否定し、つまみをがぶ食いする。

 何やかんやと騒がしい酒盛りは続き、
「……これだけ可愛らしいのにな。刀真が早く手を出せば済む話しだというのに」
 だいぶ酔いが回ってきたせいか月夜はテーブルに突っ伏して一休みしていた。玉藻はそんな月夜の頭を撫でつつふと妖しい目つきになったかと思ったら抱き寄せ、
「……何なら我が手ほどきをしてやろう。刀真が胸の大きさなど気にせず手を出してくるように」
 月夜の耳元で囁きながら服のリボンを緩め、手を差し入れ胸を揉み始める。
「ひゃっ、た、玉ちゃん。変な気持ちになるから駄目〜」
 月夜は顔を赤くして照れながらやめるように訴える。
「……ふむ」
 玉藻は月夜の訴えに手を止めるも手は服に差し入れたまま。訴える月夜の様子を楽しんでいる。

 しかし、それも長くは続かなかった。
「むっ、白花か」
 突然、玉藻の視界が暗くなって月夜の顔が見えなくなったのだ。
「ですよ。悪戯は駄目です」
 両手で玉藻の視界を奪っている白花が注意。
「むっ、もうやめるからどけろ。月夜が見えぬ」
 観念しない限り、視界が晴れないと知った玉藻はゆっくりと月夜から手を離した。
「分かりました。月夜さん、酔い潰れちゃいましたね」
 白花は玉藻が月夜から手を離したのを確認してから視界を自由にした。玉藻が手を離してすぐに月夜はくたっと畳に眠ってしまいました。
「……もうそろそろ出ましょうか」
 白花は乱れた月夜の服をただし、靴を履かせてから背負った。
 ここで
「やっと見つけた」
 必死に仲間捜索をしていた刀真が登場。

「刀真さん」
「刀真」
 白花と玉藻が驚いたように刀真を迎えた。

「玉藻に白花と月夜? というか酔い潰れたのか。白花、俺が代わろう」
 刀真は仲間を確認後、白花から月夜を受け取り月夜の頭が自分の肩に乗るように調整してお姫様抱っこした。
「お願いします」
 白花は月夜を刀真に任せた。
 刀真は白花と玉藻を引き連れて店を出た。当然、支払いは刀真の財布だった。

 店前。

「うにゃ〜」
 刀真にお姫様抱っこされている月夜は大好きな刀真の匂いにふにゃんとなり、夢現の中頬ずりをした。
「はいはい。あまり不安にさせないでくれよ」
 刀真は微笑みながら頬ずり返した。
「……」
 白花と玉藻は物言いたげな目で刀真を見る。
「おい、恥ずかしいから余り見るな」
 二人の視線に気付いた刀真は一気に戸惑う。
「……私が酔い潰れても同じように心配してくれますか」
 白花は抱っこされている月夜を羨ましそうに見ながらぽつりと聞いた。
「当然だろう。行方が分からなければ方々を捜すし、酔って潰れていたら抱きかかえて連れて帰る」
 刀真は当然だと即答した。
「……」
 白花と玉藻はまだ何か不満そうな物足りなさそうな目で刀真をじっと見る。
「あのな、俺はお前達に手を出したら、溺れて腑抜けになりそうだから我慢しているんだ。ほら、真っ直ぐ帰るぞ」
 刀真はため息をついてから素直な気持ちを吐露し、すぐに歩き始めた。
「そうだな」
「はい」
 玉藻と白花は刀真の答えに満足し歩き始めた。
「……やれやれ」
 ため息を吐きながら刀真は寝息を立てている月夜に優しい眼差しを向けていた。
 刀真にとって月夜は特別らしい。パラミタに来る前から一緒にいる刀真の剣で身近な異性だからだろう。

 どんちゃん騒ぎの居酒屋。座敷部屋。

「あーーーーーーーーー」
 雄叫びを上げるのは酒を一気にあおったハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)
「疲れたであーりーんーすー!」
 ハイナはたっぷりと酒をあおり、臭い息を吐き出しながら日頃のストレスも発す。
「それは分かるが、ハイナ、もう少し大人しく……」
 お忍びで祭りに来たハイナの下僕として紫月 唯斗(しづき・ゆいと)もこの祭りに参加し、ハイナのストレス発散にと居酒屋に来たのだ。唯斗は最初酒が飲めると意気込みチビチビ飲みながら酔ったハイナを可愛いなぁなどと眺めていたのだが、今はご覧の有様。
「今日は無礼講でありんす」
 他の客を気にする唯斗にケタケタと笑いながら酒を飲みつまみを食べる。
「そりゃ、まぁ、そうだが、他の客もいるし」
 無礼講には賛成するも何とか止めようとする唯斗。
「飲むでありんすーー」
 そう言ってハイナはちびちび飲みの唯斗の杯にたっぷりと酒を注ぎ込む。
「おいおい、ハイナ、入れ過ぎだ」
 少し残っていた杯があっという間に満杯になってしまい唯斗は仕方無く飲んだ。元来あまり酔わないタイプなのでハイナに追加された酒も平気な顔をして飲んでいた。

 その間も
「あぁ、毎日毎日毎日毎日……」
 ハイナは山積みの総奉行の仕事を思い出しては延々と愚痴を言っては酒をがぶ飲みする。
「……つまらん。何か芸しろ」
 愚痴が終わったかと思ったら今度は唯斗に無茶な命令する。ハイナの目はすっかり酔ってトロンとしている。
「は?」
 酒やつまみをマスク越しに消失いや食べていた唯斗は予想外の要求に間の抜けた声で答えた。
「芸だ。何か面白い芸。唯斗」
 ハイナは箸でテーブルを叩きながら要求。
「……急に言われてもな」
 何をするかと考えあぐねる唯斗。
 そんな唯斗を無視して
「仕事はもう嫌でありんすー」
 ハイナはがっつり酒をあおる。
「はいはい。いつもご苦労様だ。これでも食べて……」
 唯斗は労いながらつまみを差し出した。
「唯斗、食べさせるでありんすーー」
 またまた無茶な命令をするハイナ。
「は?」
 酔いどれハイナを困った顔で見る唯斗。
「唯斗」
 ハイナは口を大きく開けて待機する。
「はいはい」
 ハイナの下僕いや付き人である唯斗は仕方無くつまみをハイナの口に放り込んだ。
「うぃ〜〜」
 唯斗につまみを口に放り込んで貰ったハイナは満足そうにばったりと畳に倒れ、景気の良い寝息を立て始めた。
「……はぁ、寝たか。仕方が無い。あぁ、脱下僕で付き人歓迎だと思ったのにこれじゃ同じだよな。一応、これって俺を信頼しているって事だよな」
 唯斗はため息をつきながら眠ったハイナを見つつ、ハイナが自分を誘ってくれてその上酔い姿を披露したのは自分を信頼してくれているからだろうと嬉しくも思っていた。
 唯斗は起こさないようにハイナをおぶって店を出た。