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リアクション
第1章 煩悩は作戦と爆発!
「ちょっ。ちょっと!? 何よこんなにでっかくなってるなんて聞いてないわ!」
蒼空学園の校庭で、ただ呆然と立ち尽くしていたホムンクルスを見上げながらセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は言った。
男の子だったはずのホムンクルスはビル2階分はある大きさにまで達し、男の子の顔つき、容姿こそはそのままだが下から見上げれば宛らゴ○ラ怪獣のようだった。
「オ〜ガ〜ネェ〜ッ」
突然、ホムンクルスはうなり声を上げながらセレンフィリティとセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)の二人を見下ろしてきました。
「え、今なんて?」
「お金って聞こえたわ」
半目を浮かべながら、セレアナはセレンフィリティに冷たく答えた。
セレンフィリティがなぜホムンクルスがそんな事を言うのかと悩んでいると、セレアナがあなたのせいよと鋭く突っ込んだ。
「あの、ホムンクルスは煩悩を吸収するのよ」
「てことは……」
少しセレンフィリティは考え込むと
「卑しい人がいた物よね〜年末までお金の悩みなんて〜」
「あなた、今年はシャンバラ女王杯(競馬)に年末ジャンボも外れたばかりでお金が欲しいって叫んでたばかりじゃない」
「え――わあああああっ!?」
セレンフィリティは、ホムンクルスに襟元をつかまれ遙か上空へとつり下げられた。
「た〜す〜けぇ〜てぇ〜!!」
「……そうなるわよね」
ホムンクルスはお金をセレンフィリティが持っていないかと、左へ右へと振り回す。
助けを求めるセレンフィリティをセレアナは冷たい視線を送りながらも、あそこまでどうやって上った物かと考えた。
「うおーいっ、大丈夫か〜!?」
キロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)がルカルカ・ルー(るかるか・るー)の操る竜の後ろに乗って、叫んできた。
「セレンフィリティをどうやって助ける!?」
「どうにか、あいつを止められると良いだがな!」
後ろを振り返りながら聞いてくる、ルカルカにキロスは必死で竜につかみながら考える。
が、特にこれといってよいアイディアは浮かびそうになかった。
「うーん……ホムンクルスをひとまず弱体化――あっ」
何か思いついたと、ルカルカはにやり顔でキロスを振り返った。
その表情にキロスは思わず額に汗をかく。
「な、何か思いついたか!?」
「キロス、私達爆発しようか!」
「はあ!? おま、何を言って――おりゃあああっ!!」
突拍子もないルカルカの言葉に戸惑っているキロスへ追い打ちをかけるように機晶爆弾が背後から飛んでくる。
それをキロスは、拳で弾き返すと空高くで機晶爆弾が爆発する。
「見損ないましたであります。同志!!」
葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)がグランドから空を飛んでいるキロスたちへ向かって叫んでいた。
その間、グランドの各地で爆発がおこる。
「うわー、派手ね!」
ルカルカがおでこの前に手のひら広げ、爆発の起こるグランドを覗き込んだ。
手を何本も巧みに操り、華麗なテクニックでリア充へと爆弾を充てるのはイングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)だった。
「見ろリア充があんなに高く飛んでゆく……」
イングラハムは自身の仕掛けた機晶爆弾で空高く舞い上がる、カップルの男女を見上げながらつぶやいた。
「おや?」
空飛ぶリア充達を見ながら、イングラハムは近くで何か調べている人影を見つけた。
「やっぱり……石化できるか」
校庭の隅っこで、コード・イレブンナイン(こーど・いれぶんないん)はキロスがホムンクルスに襲われた場所に跪き、地面を調べながら言った。
その手の中には白い石が握られていた。
「ルカ! ある程度弱体化させ動きを封じてから石化させる!」
遙か上空を飛んでいるルカへ向かって大声をだすと、すぐにホムンクルスへ攻撃の姿勢を取る。
「我々も手伝おう」
「頼む!」
横から助けに入ってくれたのはイングラハムと吹雪だった。
「爆弾を投げれば良いのでありますね!」
といって、吹雪が次々ホムンクルスに機晶爆弾を投げ入れる。が、その投げられるうちの機晶爆弾はルカルカとキロスへと向けられていた。
コードはサイドワインダーをホムンクルスに当てていく。
「うぉおおいっ!? こっちは的じゃねぇんだぞ!」
「同士が裏切るから悪いのであります!」
まったくキロスには理解出来ないと、何度も反論するが吹雪はキロスへ機晶爆弾を投げ続けていた。
「なんで、味方に爆弾をなげているんだ?」
「リア充爆発という願いを叶えようとしたら、キロスがすでにルカルカとリア充しているように見えたからだろう」
とどこかからかひょっこりダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が、歩いてきながら言った。
ダリルに思わずコードは眉間にしわを寄せた。
「今までどこ行ってた? なぜ早くこなかった」
低いトーンで問い詰めるられ、ダリルは冷たい視線をコードへ向けた。
その気迫の強さに思わずコードは少し後ずさりしてしまう。
「しばらくホムンクルスを観察しながら、ホムンクルスを作った奴が居ないか探し回っていた」
「……先にあのでっかいのをどうにかするのが先だろ!? それに、時間がかかりすぎだ!」
「喧嘩してる場合ではないのであります!」
「オガーネェーうぉうっ――」
突然ホムンクルスの体が少し小さくなる。
それは、吹雪の煩悩が消化された証拠だった。
が、同時にホムンクルスの動きが激しくなる。
「うわわわーっ、って、私は離されないの!?」
「おーがーぎゃっ!」
「女の子といちゃつく、ホムンクルスに命中であります!」
ホムンクルスの手元へ機晶爆弾が命中し、爆発する。
投げた本人、吹雪達は口をにやりとさせながら喜んだ。が、
「おおおおがあああああねぇええええっ!」
「な、さらに凶暴化していないかあいつ?」
「まずいな……周囲の建物にも影響が出る」
コードは、サイドワインダーをホムンクルスへ放とうとするがダリルに止められた。
「やめておけ、救命者に当たる」
「……」
コードはダリルの冷たい態度に少々苛立ちながらも手を下げた。
一方、ホムンクルスに空高く、上下左右へ振り回されるセレンフィリティ。
「や、やめっ――」
「お金をその子にあげれば?」
セレアナがひょっこりと蒼空学園の2階から顔を出してきた。
「えーっ!?」
「自業自得よ? お金は大切に使わなきゃ。それにこう言う時に備えて貯金はしっかりしておくものよ」
「うっ……わかったわよ〜」
渋々セレンフィリティはポケットから財布を取り出すとホムンクルスへと投げた。
「おが〜ね〜 せれ〜ん」
「へ? きゃっ〜!」
ホムンクルスはお金を吸収するとさらに小さくなった。まだまだ2階まで大きさは達していた。
そして、セレンフィリティはまっさかさまに落ちていく。
「あぶなーい!」
ルカルカが寸前のところで竜を使い、セレンフィリティを受け止めた。
「大丈夫!?」
「だ、だいじょうぶ〜ありがとう」
無事にセレンフィリティはルカルカに連れられ地上へと向かった。
「なんで最後にあの子は私の名前を叫んだんだろう」
地上に下ろしてもらいながら、セレンフィリティが言う。
煩悩を持った人の名前も呼ぶのかなというセレンフィリティにルカルカは、違うと言い返した。
「ホムンクルスは煩悩自体しか読み上げないみたいだから――」
「私の煩悩よ、セレンがお金への執着心をなくしてくれることが私の煩悩だったのよ」
頬をかきながらセレアナが答えた。
「今であります!」
「うむ」
地上から吹雪とイングラハムがすかさず爆弾をホムンクルスへと投げる。
見事につぎつぎとホムンクルスの各部位で爆風が巻き起きる。
「いまだ、コード」
「ああ、わかっている!」
コードはダリルの掛け声と共に、コードが鏖殺水晶を取り出すとホムンクルスへとそれを向けた。
ゆっくりとホムンクルスの手が水晶化もとい石化していく。
「ごごごっ」
その力に抗おうとするホムンクルスは、固まっていく足を無理やり動かしていく。
うまくいくとおもった、コード達の期待を裏切ってホムンクルスは水晶の光を跳ね返した。
しかも、妙な光をホムンクルスは手から発し始め、近くにあった木に当たると木は一気に石化した。
「これは……まさか」
「水晶の力を吸収したのだな。我々は一時引いたほうがよさそうだ」
イングラハムと吹雪は、ゆっくりと後ずさりをした。
「そんな馬鹿な……」
呆然と立ち尽くすコードの頭に、ダリルは軍帽をかぶせた。
「お疲れさん、ほら引くぞ」
「……」
コードは無言でダリルに背中を押され、後ろへと下がった。
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