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いい湯だな♪

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いい湯だな♪

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    ★    ★    ★
 
「遅かったか……。すでに、Pモヒカン族が入り込んでいるようね。とりあえず、一班はここを片づけて。二班は、ホールで怪しい者のチェック。その後で、浴室内の巡回をするわよ」
 女子脱衣所の惨状をまのあたりにして、天城紗理華が言いました。入浴者の衣服は脱衣場中に散乱していて、ここで何らかの争いがあったことは明白です。もしかすると、下着泥棒も発生しているかもしれません。
 とりあえず、脱衣場を出て簡単な検問のような物を作ります。
「どうかしたのですか?」
 ちょっと物々しい雰囲気に、ホールにいたソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)が気づいて、天城紗理華たちの方へとやってきました。何が起こっているのか、アリアス・ジェイリルに聞きます。
「Pモヒカン族が紛れ込んでいるんです。あなたも気をつけて」
「Pモヒカン族ですって……。お手伝いさせてください!
 思わず、かつての悪夢を思い出して、ソア・ウェンボリスが天城紗理華に申し出ました。ここで黙っていては、またパンツを取られてしまいそうです。
「人手は多い方が助かるわね」
 いつの間にか姿を消している大神御嶽とキネコ・マネーに溜め息をつきながら天城紗理華が言いました。
「そこの人、それはなんですか」
 天城紗理華が、女子更衣室から出て来た水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)マリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)を呼び止めました。ロングバスタオルを身体に巻いた二人とも、なぜか銃器を携帯しています。
「護身用の物ですが何か?」
「ええ」
 平然と答える水原ゆかりに、マリエッタ・シュヴァールがうなずきました。
「没収します!」
「えーっ!!」
 抵抗しようとする水原ゆかりたちから、問答無用で天城紗理華たち風紀委員が武器を没収します。
「これを保管しておいて」
「はい」
 没収袋とでかでかと書かれた防水袋を天城紗理華から渡されて、ソア・ウェンボリスが受け取った武器をその中にしまい込みました。
「まったく、御主人ったら、何をやってるんだか」
 その様子を見て、雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)が溜め息をつきました。ここへは、風呂に入りに来たはずです。何が嬉しくて、P級四天王に関わらなければならないのでしょう。
「俺様は、ゆっくりとしよう……」
 持っていたタオルを、ペシンと頭の上に叩きつけて載せると雪国ベアは風呂にむかいました。
「すばらしい。風呂の平和を守る姿、感動した。ぜひ、私にも手伝わせてほしい」
 きびきびと危険物を取りあげていく天城紗理華たちの姿を見て、コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)が協力を申し出ました。裸……なんでしょうが、見た目いつもと変わりません。
「えっ、これもなの?」
 錬気の棍を取りあげられて、スポーツ水着を着た夢宮 未来(ゆめみや・みらい)が残念そうに言いました。
「例外は、ない! これも正義のためなのだ」
 すっかり風紀委員に協力モードのコア・ハーティオンが、有無をも言わず夢宮未来から棍を取りあげてソア・ウェンボリスに手渡しました。
「後でお返ししますね」
 ソア・ウェンボリスが、袋の中に棍をしまい込みます。
「ちょっと、今日は、ハーティオンがお風呂を案内してくれるんじゃなかったの?」
 可愛らしい赤のフリルパネル水着を着たラブ・リトル(らぶ・りとる)が言いました。つい最近、アトラスの傷跡へコア・ハーティオンたちが行ったときは、夢宮未来は連れていってもらったのに、ラブ・リトルはお留守番でした。今日は、その埋め合わせに、コア・ハーティオンがお風呂巡りに連れていってくれる約束でしたのに。
「許せ、ラブ。これも正義のためだ」
 はっきり言って、すでにコア・ハーティオンは聞いちゃいません。こうなっては無駄です。
「ごめんね、この間はあたしばっかりで。きっと、次は、ラブちゃんが主役だよ。ハーティオンなんてほっといて、一緒にお風呂楽しもうよ」
「うん、ハーティオンなんて、きっと水で錆びて、助けてくれーって言ってくるに決まってるわよね」
 気を取り直すと、ラブ・リトルと夢宮未来とお風呂を楽しみに行ってしまいました。
 
    ★    ★    ★
 
「Pモヒカン族が徘徊しているって言うのに、護身用の武器を取りあげられるなんてねえ」
「大丈夫よ。もし二人の時間を邪魔する人がいたら、即行ぶちのめせばいいだけよ」
 ちょっと困ったような水原ゆかりに、マリエッタ・シュヴァールが少し物騒なことをさらりと言いました。
「そうね。二人っきりになれるお風呂を探しましょ」
 そう言ってマリエッタ・シュヴァールのむきだしの腕をとると、水原ゆかりは人気の少ない茂みの方へと歩いて行きました。
 
    ★    ★    ★
 
「わーい」
「おお、さすが混浴よね。全裸の男がいるよっ♪ じゅる」
 走り去っていく医心方房内と救世主たちを見て、ミネッティ・パーウェイス(みねってぃ・ぱーうぇいす)が、じゅるりとピアスをつけた口許を拭いました。
「ねえ、そこの……えっ!?」
「いただくのじゃあ」
「ははーっ」
 声をかけたとたん、医心方房内の命令を受けた救世主が目にも留まらぬ早業でミネッティ・パーウェイスの白いブラジャーをかっぱらっていきます。
「よくやった。さらばじゃ」
 あっという間に、医心方房内たちがミネッティ・パーウェイスのブラジャーを持ったまま逃げていきました。
「ちょ、ちょっとぉ、このプレイは料金高いわよ。こらっ、払ってけー!」
 手ぶらで胸を隠しながらミネッティ・パーウェイスが叫びますが、すでに医心方房内たちの姿はジャングル風呂の茂みに遮られて見えません。
「踏み倒しかよ、こらあっ!」
 ミネッティ・パーウェイスが地団駄を踏みますが、時すでに遅くです。残ったのは、白いビキニの下の紐パンだけでした。
「こうなったら、絶対いい男をゲットして元をとってやるんだもん」
 どこかに金払いのいい男はいないかと周囲を物色しますと、のんびりと大神御嶽が菖蒲湯に浸かっています。
「お隣いいですか?」
 さりげなく菖蒲湯に滑り込みながら、ミネッティ・パーウェイスが訊ねました。ちょうど水面には菖蒲の葉が一面に浮かべられていますので、いちいち手ぶらをしなくてもすみます。
「イルミンスールってあまり知らないんですけど、詳しいですか?」
 スリスリとすり寄って、軽くむきだしの胸を押しつけながらミネッティ・パーウェイスが大神御嶽に聞きます。
「えっ、あの、ちょっと、困りますよ」
 さすがに顔を赤らめて、大神御嶽があわてて湯の中に潜りました。
「意外とシャイなんですね。よかったら、この後、二人っきりで案内とかしてくれませんか?」
 お湯の中に手を突っ込んでいろいろつかみあげようとしながら、ミネッティ・パーウェイスが言いました。
「それはいいですら。どこでも、案内してあげますら」
 ざばーっと盛大にお湯を跳ね上げて飛び出してきたのは、巨大な招き猫、キネコ・マネーです。
「化け猫!?」
「失礼ですら、こんないい男に対して。さあ、好きなだけなでくりまわすといいですらー」
 ニヤニヤと笑いながら、キネコ・マネーがドテッとした腹を突き出して、ミネッティ・パーウェイスにむかってダイブしました。
「きゃー!!」
 さすがに、ミネッティ・パーウェイスが悲鳴をあげます。
「やれやれ、危ないところでした……!?」
 水飛沫と悲鳴を後にして、すんでのところで光学迷彩で脱出してきた大神御嶽でしたが、いきなり、もの凄い殺気を感じて振り返りました。
「や、やあ」
 背後で豪奢な緋色の髪を逆立てて怒っている天城紗理華を見つけて、大神御嶽が引きつった顔で声をかけました。
「姿が見えないと思ったら、ここで何をしていたのよ……」
「いや、何もして……」
「してたでしょう。裸の女の子にだきつかれてたでしょう」
「ここはお風呂ですよ、みんな裸です」
「そんな詭弁が通るかあ!」
 いきなり、天城紗理華が火球を投げつけてきます。
「あれは事故です。私は被害者です!」
 かろうじて結界で火球を消滅させながら大神御嶽が叫びました。
「問答無用!」
「まあまあ、二人とも、痴話喧嘩はそのへんで……」
「なんですって!」
 見かねたコア・ハーティオンが、間に入ろうとしました。けれども、激高した天城紗理華にあっけなく吹っ飛ばされます。
「あれは、失言でしたね」
 飛んでいくコア・ハーティオンにむかって両手を合わせながら、ソア・ウェンボリスがつぶやきました。