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【ですわ!】パラミタ内海に浮かぶ霧の古城

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【ですわ!】パラミタ内海に浮かぶ霧の古城
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第10章 闇巣食う牢獄

 古城内で敵の策略に分断され、遠回りを強いられた生徒達。
 ロビーに戻ってきたエヴァ・ヴォルテール(えう゛ぁ・う゛ぉるてーる)は、高熱の炎を発生させて≪アンデットナイト≫を攻撃していた。
 すると、異変に気付いた。
「おっ!? レン、これはもしかして……」
「ああ、やってくれたようだな」
 額に大量の汗をかきながら、カラドリウス・アウラー(からどりうす・あうらー)で敵を切り裂いてた桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)の口元に笑みが浮かぶ。
 どんなに焼いても、切り裂いても、ある程度の原型をとどめていた≪アンデットナイト≫。それが、今はほとんど残らないほどになっている。
「≪バイオレットミスト≫が消えたことで無限再生ができなくなったんだ。これなら――切り抜けられるぞ!」
 煉は衝撃波で周囲の≪アンデットナイト≫を吹き飛ばした。
 そこへ、佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)が炎を纏った両手の剣で六連の追撃を叩き込む。
「では、皆さんの所に急ぎましょう。あの逃げた人が気になるんです」
 ルーシェリアが話していると、背後から襲いかかってきた≪アンデットナイト≫を中原 鞆絵(なかはら・ともえ)が足払いして抑え込んだ。
「あたしの目からも、『追って来てください』そう言っているように見えました」
「ですよね……」
 ルーシェリアは胸騒ぎを感じた。
「エヴァっち、皆の場所は?」
「……上の方、だってさ」
 煉の問いに、エヴァは【テレパシー】で聞いた仲間からの情報を伝える。
「上のどのあたりかわかればいいんだが……仕方ない。探しながら合流しよう」
 追いかけて走り回っていた生徒達には、古城のどのあたりに自分達がいるのかわかないようだった。
 騎沙良 詩穂(きさら・しほ)が声をあげる。
「みんな! こっちに階段あるよ!」
 ロビーの両端に、埃の被った赤い絨毯が敷かれた階段があった。
 駆けあがる生徒達の行く手に立ち塞がる≪アンデットナイト≫。
「本当に数が多いですねッ!」
 詩穂はまじかる☆すぴあを振り回し、敵を階段から叩き落とす。
 その脇を、縞模様の尻尾をした自称タヌキのマスコットになったリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が手すりの上を走り抜ける。
「どけどけ!」
 リカインは【咆哮】をあげて敵を怯ませる。
 そして、リカインは一緒にやってきたアライグマ(古代の霊獣)と共に、前足で強烈な一撃を放つ。
「ユニゾンスタンプ!!」
 殴り(?)つけられた≪アンデットナイト≫は吹き飛び、ボーリングのピンのように背後の敵も一緒に倒れていった。


 そんな彼らが合流しようとしていた先行部隊は、パラミタ内海が見渡せる広々とした古城のテラスに辿りついていた。
「こっちに来たはずなんだけど……水晶がいっぱいだね」
 霧が晴れたテラスに出た魔法少女ポラリス(遠藤 寿子(えんどう・ひさこ))は、床から突き出した無数の水晶に驚いた。
 紫色の水晶は内から淡い光を放っていた。
「おいっ、いたぞ!」
 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)が指さす方向には、テラスから空へと斜めに伸びる螺旋階段んがあった。
 そして、階段を駆け上がる者が一人、生徒達が追いかけてきた辿楼院 刹那(てんろういん・せつな)の姿があった。
 刹那が目指す階段の先には、巨大な黒い球体が浮かんでいた。
 ミュリエル・クロンティリス(みゅりえる・くろんてぃりす)がエヴァルトの袖をつかんだ。
「お兄ちゃん何ですか、あれ?」
「さぁな。でも行くしかないだろう」
 生徒達は不安を感じながらも螺旋階段を駆け上がった。
 港の方まで見渡せる高さ。海上ではまだ生徒達が戦っている。森の中では戦闘の音が聞こえる。
 今ならわかるが、黒い球体は古城の入り口の真上にあった。ただ、霧のせいでわからなかったようだ。
 階段の途中はその球体に飲み込まれ、先は真っ暗だった。
「いくぞ……」
 エヴァルトは息を飲みこみ、飛び込んだ。
 たどり着いた球体内部は、周囲を黒い壁に覆われ、足場一面が白大理石で出来ただけの殺風景な所だった。
「――待ちくたびれよ。私はコルニクス。キミたちを招待した者だ」
 声がした方を振り返ると、刹那とファンドラ・ヴァンデス(ふぁんどら・う゛ぁんです)の間にフードを被った男が立っていた。
「案内、ごくろうだったな」
「これくらい楽な仕事――」
 刹那が返答していると、エヴァルトが走ってきた。
 暗器を放つ刹那だが、エヴァルトはそれを躱しコルニクスに殴りかかる。
 だが、その攻撃をギリギリの所でファンドラが槍の柄で止めた。
「くっ――やらせません」
「邪魔する――くっ!?」
 押し切ろとするエヴァルトだったが、首を狙ってきたコルニクスを避けるために距離をとった。
「ちぃ!?」
「まぁまぁ、落ち着きたまえ」
 コルニクスが指を鳴らすと、周囲の黒い壁から≪アンデットナイト≫が続々と現れて生徒達を囲んだ。
「まずは話し合おうではないか」
「話し合うという雰囲気には見えませんけど?」
 緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)が武器を構えながら言うと、コルニクスは鼻で笑った。
「信じる物はなんだ」
「は?」
「金か、人か、信仰か……私はグランツ教の教えを信じている。世界統一国家神様が世界を救ってくださると」
 コルニクスは両手を黒く染まった天井に広げて語る。
「キミたちはグランツ教の何を知っているのかね? ほとんど物が知りもしないのに蓋をして、権力者が囁く内容で一方的に批判する。そんなことはあってはならないのだ。だから私は、より深く、隅々まで、全ての者に世界統一国家神様の素晴らしさを感じてもらうのだ」
 コルニクスは言葉の最後に『多少強引でも』と付け加える。
 エヴァルトが拳を握りしめる。
「ふざけるなっ! そのために誰かを傷つけていいと思ってるのか!?」
「私は誰一人怪我を負わせた覚えはない。崩壊する世界で命を落とそうとしている者を、この世界統一国家神様に認められた力で救おうとしている。それだけだよ」
 確かに今回救出された人々は、衰弱はしていたが外傷はなかった。
 オークションのことを問いただせば、支配人が勝手にやったことで、彼は信者ではなかったと言い張る。
「そんな道理が通ると思っているのか!?」
 話をしても無駄だと感じたエヴァルトは、拳を構える。
 すると――
「……傷つけるたとか、救うとか、私にはどうでもいいわ」
 セシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)が床を蹴りつける。
 相当イライラした様子のセシルは、海賊船長の帽子の埃を掃って被り直す。
「人のシマでナメた真似をしてるお馬鹿さんを私がブッ飛ばします。お覚悟はよろしくて?」