First Previous |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
Next Last
リアクション
雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)も、想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)と白波 理沙(しらなみ・りさ)の二人と過ごしている。夢悠が、雅羅を誘っている理沙とも一緒に遊びたいと申し出たからだった。
「美味しそう!」
そう声を上げる雅羅たちの前には、理沙と夢悠の作ってきたお弁当が並んでいる。理沙の作ってきた、手作りのサンドイッチとおかずの詰まったバスケット。隣には夢悠の作った、数種類のフリカケをかけたオニギリに唐揚げ、タコさんウィンナーにポテトサラダというお弁当のバスケット。
「これ、オレの手作りなんだ。味見してみる?」
雅羅の作ってきたお弁当といくつか交換したりしながら、夢悠はピクニックを楽しんでいた。
楽しんでいた、と言っても、雅羅の災厄体質が引き寄せそうな危機に備えて周囲への警戒は怠らない。辺りに広がる風景を眺めながら、危険物がないかと気を配っている。
雅羅にピクニックを楽しんでもらうため、雅羅のボディガードになった気分だ、と夢悠は思う。でも、それも悪くない。
一通りの屋台を巡った後、三人は丘でウサギを探しながら祭りの雰囲気を楽しんだ。
「見て、ここにウサギがいるよ!」
「本当ね、こっちにもウサギが……って、きゃあ!?」
雅羅にヒールをかけて治療する夢悠。
「あ、ありがとう……」
夢悠は夕方になる前に、二人と別れて先に帰った。ピクニックに誘う時に「アイドルの仕事があるから」と雅羅には話していた夢悠だったが、本当は、夕方になってウサギの逸話にあった告白のことを意識したくなかったのだ。
その場には、理沙と雅羅の二人が残った。徐々に傾いて行く日に照らされながら、二人は今日一日のことを思い返し、丘を登っていた。
「お弁当を食べたところから見る眺めも良かったわね」
「近くでウサギも見られたし、本当に楽しかった」
理沙たちは人ごみから少し離れた、丘の頂上に近い一画に辿り着いた。
「ここ、今日過ごしていた場所が一望できるのね」
雅羅が眼下に広がる丘と草原を眺めて、呟いた。
「……雅羅」
理沙が、雅羅の顔を見て、真剣な表情になった。
「私ね、もし、雅羅に恋人が出来た時の事を考えてみたの。雅羅が幸せそうにしてるならそれはそれで嬉しいなって思うんだけど……、
でも、その時に雅羅の幸せだって感じる居場所は私が居る場所じゃないんだなって思ったら急に寂しくなって……」
俯きながら少しずつ言葉を紡いで行く理沙を、雅羅は見守るように見つめる。
「雅羅を一番に想っているから、他の誰かじゃなく私と一緒に歩んでほしいの。親友としても勿論好きだけど、それ以上の愛しい人としても雅羅が好き……」
「理沙……」
「誰を選んでるのかもう決まってるなら、それに従うけど……」
理沙の言葉に、雅羅はゆっくりと答えた。
「まだ、私自身の気持ちが整理できていないの。もう少しだけ、私が私自身の中で答えを見付けられるまで、待ってもらいたいんだけど、それでもいい――?」
雅羅の言葉に、理沙は大きく頷いた。
「うん。気長に待つから」
オレンジ色に染まり始める丘を眺めている二人の背後で、急に悲鳴が上がった。どうやら、何か災厄がまたひとつ起きたようである。
First Previous |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
Next Last