空京大学へ

天御柱学院

校長室

蒼空学園へ

ぶーとれぐ 真実の館

リアクション公開中!

ぶーとれぐ 真実の館

リアクション



メッセージフォーユー 偽悪の少女

ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと) ファタ・オルガナ(ふぁた・おるがな) 茅野 菫(ちの・すみれ) リリ・スノーウォーカー(りり・すのーうぉーかー) シャーロット・モリアーティ(しゃーろっと・もりあーてぃ) ブリジット・パウエル(ぶりじっと・ぱうえる)



なにがどうなったのか僕には、わかんないんですけど、偶然、たまたま、ヴァーナー・ヴォネガットちゃんを抱き上げて、自分もくるくる回転して、

「ママンは神のもとに召されていました! 神は私を裏切りませんでしたよ」

わはははは。

「ルディおにいちゃん。よかったですね。

ボクもうれしいですよ」

「天使、ヴァーナーよ。あなたは天使だけあって、こうして宙を舞っているのが、よく似合いますね」

あはははは。

とか、噂の神父がホールでやってるのを目撃しちゃった。

ヴァーナーちゃんには、悪いんだけど、この神父さんとはかかわりあいになりたくないんで、僕はこそこそとその場から撤退しました。
それで、幽霊の件も片づいたようだし、今度はちょっと違った視点で館を探索してみようよ、と僕が誘ったら、ファタちゃんはすぐにのってきた。

「秘密の部屋でもみつけて、そこで、わしとなにをしたいのじゃ。ンフンフンフ」

「ふかふかのソファでもあればすこし休憩するのもいいかもね。先客がいなかったら」

「休憩ぐらいでよいのか。わしは別に宿泊でもかまわぬぞ。ずいぶん人に会ったから、疲れておるじゃろう」

「疲れているは、疲れてるんだけどね」

最終回ならではのサービスというか、プラスアルファが、幼、少女のポルノ描写でも需要はあるのだろうか。

「世間では規制が厳しくなって、合法的な専門店もたちゆかぬので、愛好者の中には、これでは教育職か、医療関係の仕事に就く以外は、表の社会でおのれの欲求を満たす道はなくなるのではないか、と不安におののいているものも多いらしいからのう。
幸運にも、例えそれらの仕事に就けたとしても、1つ間違えば、たちまち性犯罪者じゃ。
底辺の水は甘くはないぞ。
汚れない魂と肢体を愛でるだけの趣味だというのに、世間は厳しいのう」

語りながら、それこそあっちの魂に火がついたのか、ファタちゃんは僕の背中をそっとなでた。
いつの時代も絶対少数者の各種変態さんたちは、世間の大多数に、しいたげられればられるほど、進(深)化してより高度な楽しみを開発してきたと思うんだよね。
僕は、変態さんたちの高みについていきたくはないけど、誰も知らないところで、好きもの同士でこっそりやってるぶんには、幼、少女ポルノもいいんじゃないの。

「子供にうちに、性は汚いもの、けがわらしいもの、ふれてはいけないものと教育しすぎるのも、過剰な恐怖や清潔感をうえつけるのじゃ。
性風俗のアンダーグラウンド化と、少子化の原因の一つは間違いなくそこにもある。
性行為がなければ子供は生まれてこぬし、そもそも人間の多くは一生のうちに必ずそれを経験するのであるからして、だったら、危険性と同時に楽しみかたも正しく教えるべきじゃ。
多くのものが性愛の正体をつかんでおらぬから、攻撃的で歪な幻想が生まれるのじゃよ」

生き方やら趣味やら、いろいろ間違っている人に限って、口にする意見は、一見、正統派の王道だったりする。
15歳以下の少女をこよなく愛する、全世界の少女の味方、ファタ・オルガナちゃんは、そういうタイプの代表みたいな人だ。

「こういう人の話をまじめに聞いていると、そのうち、なにが正しいのかよくわからなくなって、人はカルトにはまったりするんだよね」

「はじめから、なにが正しいのか自分は把握していると思っているものほど、案外、偏見に縛られた、傲慢で、おかしな世界観を持っているものじゃ」

「ファタちゃんといると本物の変態さんは、勉強家で、正道をよく知ったうえで独自のルートにはみだしてゆく、一部のげーむまにあみたいな人だってよくわかるよ」

「その程度は朝飯前じゃ。
げーむとエロを一緒にするとイヤがるものも多かろうが、なに違いは些末なことじゃよ。
小さいけれども大きな、でも小さな違いじゃのう」

なんのこっちゃかわからないが、僕はでも、ファタちゃんやみなさんに感謝している。
ありがとう。

「おおっ。タイミングよく隠し部屋をみつけたぞ」

熱弁をふるいつつも、壁をぺたぺたとさわりながら歩いていたファタちゃんは、立ち止まると壁の一部を押し込んだ。そこがスイッチだったらしく、壁がスライドして木製のドアがでてきた。
ドアを開けると、中はところ狭しと書棚がおかれた、薄暗い小さな部屋で、メガネをかけた小柄な少女が一人、椅子に座っている。
あの有名な映画にでてくる魔法学校みたいな名前の学校の制服を着ていた。
彼女は、僕らに気づいていないのか無視しているのか、机のノートパソコンから目を離さず、キーボードを打ち続けていた。
僕は彼女を知っている。
背後にまわって、こっそり液晶ディスプレイをのぞきこんだ。

「世界の終りと呼ばれるものがいつか必ずくるとして、いよいよマジェにそれがくるのならば、あなたたちがそこにいないのは、おかしいと思います。
あの、ある意味、あなたのかわいい相方さんにそっくりな、いつも自分の部屋から絶対にでてこずに、同じ遊びばかりを一人で繰り返している犯罪王もきているようですし、自分たちが失いかけた本物を再び手に入れるために、ニセモノを装って懸命に生きている不器用な三人にも、選択の時が訪れるかと思います。
ようするに、最終章だから家で映画ばっかりみてないで、さっさと外にでてこいよ! って、あたしは彼に言ってあげてるの。おわかり?」


彼女はメールを打っていた。

「実は連続殺人鬼のくるとを呼んであげるなんて、意外に優しいんだね」

「うっせーよ」

僕がチャカすとディスプレイを眺めたまま、茅野菫ちゃんはこたえてくれた。

「人のメールを盗み見するんじゃねー。クソガキ」

「僕は、ほんとうは親切な人ほど口が悪かったり、ウソつきだったりするって法則を信じてるんだ」

「フン。どさくさにまぎれて、自己肯定してんじゃないよ。
だいたい、そんな法則、聞いたことないわ」

「良薬、口に苦し。だっけ」

「我田引水。ね。
あんたがなに言っても、ウソ吐きの人殺しが自己を正当化しようとしているようにしか聞こえねーっうの」

「菫ちゃんは、わざとそう言って僕の心を鍛えてくれているんだね」

「素よ。素。
あんたもこれからもずっと大変だと思うけど、結局、自分をつらぬいて生きるしかなさそうだから、せいぜい口先を磨いてどうにか生きぬきなさいよ」

ほら。やっぱり親切だ。

「僕はね、菫ちゃんみたいに偽悪的なのも疲れると思うんだけど、どうなの」

「基本、正直にやってるだけだけど。
ま、楽しけりゃいいじゃんってのはある。
偽悪だかなんだか知らないけどさ、偽善よりはよっぽどいいと思わない?」

ほんとうのほんとうをまっすぐに知ろうとすると人は、とても疲れてしまうから、偽悪ぐらいのスタンスでないとやってられない。でも、それはなにが善でなにが悪か自分は知ってると思ってるやつの言い分だよな

ん。いま、歩不くんたちの声がした気がする。

「あたしたちスコット商会がお世話になってる娼館「牝牛の乳房」には、マジェ中の噂話が集まってくるんだ。男も女も中間も、赤子から老人まですべての人を満足させられるお店だからね。
他ではできないお楽しみをして、他ではけっして話さないようなことをお話してくれる。
ノーマン・ゲインがマジェによくくるのはね、ここには、あいつの家族がいるかららしい、とか。
その家族は、抗争だか、ノーマン自身が殺そうとした時だかの後遺症で、過去の自分をなにもかもを忘れてて、現在はマジェで、ゲイン家とは関係ない別の人生を暮らしてるのよ。
なのにノーマンは、いまになって家族の力が必要になって」

「犯罪王の妹さんだね。
僕もその話をリリちゃんから聞いて、びっくりした。
まさかね。
たしかにあの3人は、奇妙ではあったけど」

「地球で代々の名家だったグルジエフ家は、ノーマンの陰謀で財産を奪われ、汚名をきせられ、あわや没落しそうになったところを双子の母親の機転で危機を脱したんだって。
お母さんが、財産を取り戻してノーマンたちの犯罪も暴いたの。
大ファインプレーよね。
やつらが容赦のない報復にでるのも当然なくらいの」

「ルディ神父のお母さんは、もしかしてノーマンに」

「結果として、母親の犠牲によってグルジエフ家は守られた。
心に傷を負った兄弟は、自分自身についてのすべての記憶を失っていたセリーヌと出会い、契約してパラミタにきたの。
家族に殺されかけて、セリーヌも過去の自分と決別したところだったのよね。
家族をなくしたもの同士が、ニセモノの家族として暮らしていた。
でも、それも、なにもかもノーマン様の策略なのかもしれないです、か」

菫ちゃんは、口元をゆるめ、マウスをクリックした。
メール送信だ。
宛先は古森あまね。

「わざわざ、あまねにメールして、くるとにノーマンを捕まえさせたいの。
菫ちゃんが自分でやればいいんじゃないのかな。
スコット商会や名探偵大先生のシャルちゃん、ブリ大根ちゃんのサークルとか、ここに探偵はたくさんいるよ」

「人にはそれぞれ役割があるでしょ。
あたしは、ショタ探に出番がきてるのを教えてやっただけ。
スコット商会も無事、依頼を果たしたし、あたしの仕事はここまで。
じゃぁ、維新。ファタ。
次に会うときのあんたたちが犯罪者でないのを祈るわ」

席を立った菫ちゃんに僕は、頭をさげた。

「かわい家おばさんが、これまでずっと、ありがとうって。
僕やくるとを気にかけてくれて、僕も菫ちゃんは、親切な人だと思う」

「さらばじゃ」

僕とファタちゃんの挨拶に菫ちゃんは、意地悪っぽく鼻を鳴らす。

「お2人とも、さようなら。ここではね」