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リアクション
七尾 蒼也(ななお・そうや) ミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ) シェイド・クレイン(しぇいど・くれいん) リネン・ロスヴァイセ(りねん・ろすヴぁいせ) ヘリワード・ザ・ウェイク(へりわーど・ざうぇいく) フェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)
数か月前、マジェスティックのロンドン動物園で仕事をしたあの夜、動物園内には自分たち以外にも何人もの人間がいてそれぞれに目的を持って動いていた。
あの夜、結局、なにが起きていたのかしら。
リネン・エルフトがアンベール男爵の招待におうじたのは、それを知りたかったからだ。
「たいして興味があるわけでもないのだけれど、それでも、知りたくはあるって程度かしら」
「なるほど。
では、こうして自分たちから私のところへ殺人お告白に訪れたのは、なぜだね」
あらかじめ、自分の立場をはっきりさせておいたほうが、話をすすめやすいと思ったから、かな。
「そうね。状況が把握しやすいでしょ。私たちも、あなたも」
真実の館のいくつかある応接室の一つで、テーブルを挟んで、ソファーに腰かけてリネンたち3人は、アンベール男爵とむきあっている。
「あらためて、も1度、説明するわね。
私、リネン・エルフトと、パートナーのヘリワード・ザ・ウェイク、フェイミィ・オルトリンデの三人は、あの夜、ロンドン動物園で殺害した人間の死体を動物に食べさせたわ。
直接の目撃者はいないはずよ。
でも、あの夜は、妙に騒がしくて、いろんな人が出入りしていたみたいだから、私たちがしていたことを見てた人もいるかもね」
「オレの知る限りはそんなやつはいねぇがな」
「もし、いたとしても、あたしが気づかないのはありえないな」
フェイミィとヘリワードが、異口同音にリネンの言葉を否定する。
しかし、リネンは楽しげに微笑を浮かべた。
「私たちやその他の人たちがあの夜、動物園でなにをしていたのか、誰よりもよく知っているのは、ロンドン動物園の夜の園長である、アンベール男爵。
あなたじゃないかしら。
私たちをこの館へ呼びだすくらいだから、なにもかもご存じのはずでしょ」
「もし、私があの夜の動物園でのなにもかもを把握していたとして、だったら、どうして、あなたたちを含めた多くのお客人をここに招く必要があるのか、理解に苦しみますな」
男爵はわざとらしく、首を傾げる。
「ウソつけ。わかってるだろ。
あんたが予想もしていなかった出来事があの夜、あそこで起こったからだよ。
マジェの裏の支配者であるあんたが見過ごすことのできないトラブルがあの夜、ロンドン動物園で発生した。
あんたは事態を把握、収拾するために、真実の館にこれだけの人を集めたんだ」
自分の意見に確信を持っているらしく、フェイミィは男爵に人差し指を突きつけた。
「男爵。
あたしたち『シャーウッドの森』空賊団は、仕事の取引相手の1つとして、あなたの組織に興味があるの。
だから、あの夜の真実をあたしたちも知りたいわけ。
あたしたちの知っていることも包み隠さずお話するから、あなたのほうの事情も教えてよ」
ヘリワードの口調は、どこか挑発的だ。
「七尾くん。
リネンさんたちはこのように言っているのだが、彼女があの晩、動物園にいたのは間違いないのかい」
男爵が肩越しにうしろへ声をかけると、背後のドアが開き、茶色いおかっぱ頭の少年、七尾蒼也が入ってきた。
彼は控えの間でこちらの会話を聞いていたらしい。
リネンは、百合園推理研究会の会員である蒼也とは知り合いだ。
「俺はロンドン動物園の関係者への聞き込みで、事件が起きたらしい日にだいたいのめぼしをつけたんだ。
そして、動物園の共同オーナーの一人であるアンベール男爵の許可を経て、園内の監視カメラの画像をすべて確認させてもらった。事件当夜をふくめて、前後の数日間分をね」
「リネンさんたちがここにくるまで、私は七尾くんの話を聞いていたんだ。
リネンさんたちが急にたずねてこられたので、もうしわけないが、七尾くんには控えの間で待機していてもらった。
そうしたらちょうど、リネンさんたちの話題が動物園の殺人についてだったのでね。
七尾くんの意見をきいてみたのさ」
リネンは蒼也にかるく会釈をした。
「ご苦労様ね。それでなにがわかったの」
「わかったのは、園内の一部、防犯カメラで撮影されていた部分の出来事だけだ。
リネンが言った通り、きみたちはたしかにあの夜、動物園にいた。
でも、ビデオに犯行そのものは映っていない。
きみらの行動で確認できているのは、PMRの仲間のミレイユとシェイドに会っていたことのみだ」
「それは事件と関係ねぇな。悪いけど黙っててくれ」
「それとも、百合園推理研は、あたしたちの敵にまわるつもりなの」
フェイミィとヘリワードににらまれ、蒼也はとまどいの表情を浮かべた。
「ハハハ。右も左も入り組んでいるようだな。
リネンさん、悪いが、まずは蒼也くんと話の続きをさせてくれないか。
きみたちの気持ちはわかった。
後で私の方から使いをいかせるので、それまで、館内で自由にしていて欲しい。
よろしいかな」
アンベール男爵がリネンに頷きかける。
「あまり待たされるようなら、先に帰らせてもらうわ。
それでよければ」
「結構だ」
男爵様は、私たちにはあまり興味がなさそうね。
またお呼びがかかるかどうかは、5:5いや8:2くらい。
事件の夜の真実を知るためには、他をあたったほうがいいかも。
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