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反撃のマリア

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反撃のマリア

リアクション

「さあ、グロッグ司祭指輪を」
「……あ、ああ」
 マリアと深月の前にはいつの間にかファンドラまでが現れ、グロッグ司祭を守るように立っていた。
 グロッグ司祭はゆっくりと、指輪の保管された扉を開くと声をあげた。
「ようやく……ようやくここまで来た!!」
 グロッグ司祭は振り返ると指輪を片手で持ち上げると、光にかざしてみていた。
 マリアは銃を拾うと、グロッグ司祭へと構える。
 同時に刹那がさざれ石の短刀を構えた。

「その指輪を下ろしてください」
「ふっ、もう遅い! そこで見ておると良い人狼の真の力をな!!」
 グロッグ司祭は指輪をはめるとうなり始める。
 命の恩人であるからだろうか、それとも何か引っかかるものがあったのだろうか、マリアは銃を撃つことは出来なかった。
 その不甲斐なさにマリアは自身を責めながらも司祭の変化を見守った。
 だが、司祭は唸るばかりで一向に変化は無い。
「ど、どういうことだ! 指輪は一つでもあれば効果を発するはずでは」

「その指輪は偽物ですよ」
 突然、マリア達の背後からジョン・オークが近づいてくる。その隣にドリル・ホールも居た。
「なんだ……と?」
「あなたの持っている指輪はほんの数分前に、呼雪さんにお借りしたおもちゃの指輪とすり替えておいたのですよ。本物は……ここですよ」
 ジョンはドリルを指さした。
 途端、グロッグ司祭の顔は青ざめるなり、刹那達に「お前達、あいつから指輪を奪い返せ」と命令する。
 しかし、ジョンはさらに笑みを浮かべた。
「おっと、ただ持ってるわけではありませんよ。彼はゆる族、チャックの中に放り込めば、どうなるでしょうね?」
 ゆる族はチャックを無理に開けると爆発する習性がある。
 しかし、ほんのちょっとの隙間にねじ込む形で入れたら、それを取りだすのは至難だろうとジョンは考えたのだ。
 実際はねじ込む瞬間に爆発するかもしれない。
 ドリルは緊張感からか、先ほどから汗をだらだらと流しながら、無言だった。

「ふっ……してやられましたね。司祭、どうします?」
「まだ、もう1つの指輪をマリアが持っている……マリアを殺してでも良い取り上げろ!!」
「し、司祭っ!!!」
 グロッグ司祭の表情は今まで見たことの無いような鬼の形相でマリアを睨み付けてきた。
 刹那はすかさずしびれ粉を仕込んださざれ石の短刀をマリアに向けて投げた。
 マリアは覚悟を決め、短剣が刺さる前に司祭を打ち抜く覚悟で、銃口を司祭へと向ける。
「待てっ!!」
 突然マリアの拳銃は、横を走りすぎたシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)に取り上げられた。
 マリアの周囲をトリップ・ザ・ワールドが囲むと、短剣はマリアに刺さること無く地面へと落ちた。
「マリア、悪いがこの銃は俺が預かって置くぜ」
「な、なんでですか!」
「お前は手を出すな、いやお前は手を汚すな。必要な暴力はオレらが裏でやる。世間的にお前はまだ聖人だそれは、きっとこれからお前の武器になるだろ」
「聖人……私はすでにグランツ教からも信者からも犯罪者と言われているのに……?」
 小さくつぶやくマリアにシリウスは深く頷いた。
「それは司祭のせいだろ? 司祭をとっ捕まえれば元の聖人にもどれるぜ!」
 シリウスは銃をなお仕込むと、ファンドラ達へむき直す。
「マリア、君は責任を感じているのだろうけど……ならばなおさら清くあり続けなければならない。それが何より教団への追求になるんだ」
 シリウスの捕捉をするように、マリアの横でサビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)は言った。

「悪いが、時間はねぇんだ、一気に行くぜ。変身! エクスプレス・ザ・ワールド!!」
 シリウスは一瞬で4人へと分身し、それぞればらばらの魔法少女へとあっという間に変身する。
 そして、シリウス達は一斉にファンドラと刹那へと4人は襲いかかった。
「か、数が多すぎるのじゃ!!」
 さらに、シリウスのその攻撃は、マリアの願いをトランスシンパシーで力へと変換されたものでさらに強力な者だった。
 刹那はなんとかスウェーでそれらを交わすも、その強さで次々と繰り出される攻撃に反撃する余裕は無く、次第にダメージを負っていく。
「くっ……大変残念ですが、ここは引きましょう」
 ファンドラは対電フィールドを展開すると、シリウス達はその防壁に一瞬阻まれてしまう。
 その間にファンドラ達は司祭を連れ後ろへと逃げ出す。

「おっと、ここから先は通さないよ!」
 しかし、逃げ道をふさぐようにしてファンドラ達の前へサビクが立ちはだかる。
 サビクは剣を構えると、ファンドラ達へ目がけて女王の剣を発動させる。
 ひとたび、白い光を纏わせた剣が、ファンドラ達へ深傷を追わせた。
「イブさん!!」
「作戦続行……プランA実行シマス」
 突然、サビク目がけてイブのミサイルが飛んでくる。
「なっ!」
 サビクは辛うじて避けるも、大きな爆風に阻まれ追尾することは出来なかった。
 だが、まだ策が尽きたわけでは無かった。
「ローズ!!」

「あまり出番が無かったのですから、最後くらいは任せなさいですわ!!」
 サビクが叫ぶと、ローズフランは逃げるファンドラ達の前へ飛び出て拳銃を構える。
「なんじゃっ!?」
 刹那は再び暗器を取り出すとローズフランへ投げる。
 ローズフランはそれをローリングで避けると、刹那達の足下横を狙って銃弾を撃ち込んだ。
 ファンドラ達は必然的にそれを横へと避けたのが、突然大きな物音が上から響いた。
「罠ですか!!」
 突然天井から大きな網がファンドラ達目がけて落ちてくる。
「にひひ、予定通りなのだよ!」
「ふう……」
 那由他は仮面を外しながら、トラッパーで仕掛けておいた罠に手応えがあったことを喜んでいた。
 そして、ローズフランは深く深呼吸すると、網へと向かっていく。
 ただ、そこでローズフランは立ち止まってしまったので気になった那由他は縄をのぞき込むと、驚いた。
「げ……司祭しか捕まってないのだよ!?」
 網に捕まったのは司祭1人だけだった。
 ファンドラ達には逃げられてしまっていたようだった。