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ニルミナスの一年

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ニルミナスの一年

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クリスマス

「あら瑛菜。久しぶりね」
 ミナホの部屋を出て村の出口へ向かう瑛菜達に前からやってきたローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)はそう声をかける。隣にはローザマリアのパートナーであるエリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァ(えりしゅかるつぃあ・にーなはしぇこう゛ぁ)の姿もある。
「久しぶりって……ついこの間も会ったろ」
 ほんの二、三日前……クリスマスの日に瑛菜とアテナはローザマリアたちと会っていた。


「ぅゅ、このケーキ、とってもおいしい、の!」
 クリスマス用に作られたケーキを美味しそうに頬張りエリシュカはアテナにそう言う。
「もう……エリーってば口の周りにいっぱいクリームついちゃってるよ?」
 エリシュカの口の周りをフキフキと綺麗にしながらアテナはそう言う。
「ぅゅ……アテナ、ありがとう、なの」
「どういたしましてだよ。でもこのケーキほんとうに美味しいね。瑛菜おねーちゃんたちも早く食べればいいのに」
 アテナもエリシュカ同様美味しそうにケーキを頬張りながら言う。
「ぅゅ……ローザとえーな、どこいった、の?」
「外で少し話してくるって」
「ぅゅ、そとはさむい、の」
「まぁ、でも、今日みたいな夜は寒くても外で話してみたい気持ちも分かるかなぁ」
 聖夜。実際に何かが変わるわけではないが、その夜は冷たい空気も何か聖なるものに感じさせるような……そんな何かがある。
「ぅゅ……おいしいもの、たべてるほうがいい、の」
「あはは、エリーは花より団子だね」
 そう言うアテナも食べる手は止めていない。
 アテナとエリシュカはそうして楽しいクリスマスの夜を過ごしていった。


「ニルミナスもそうだけど、日本という国も、つくづく不思議な所よね。その土地に古来からある宗教に照らし合わせた行事と、西洋の習慣の代表格なクリスマスが混在しているのだから」
 ウエルカムホームの屋根の上。そこからニルミナスのクリスマス風景を見渡してローザマリアは瑛菜にそう言う。
「ま、そうだね。ニルミナスは前村長の影響で日本びいきでこうなってるだけだから、日本がおかしな国ってことになるな」
 そのおかしな国のおかげでこの夜をどこか特別に感じれることを瑛菜は感謝していた。
「そうね。そのおかしな国と前村長のおかげでこうしてニルミナスでクリスマスを瑛菜と過ごせる。……感謝しないとね。……何を笑ってるの?」
「いや……なんでもないよ」
 ただ、ローザマリアが自分と同じようなことを感じていると分かって嬉しくなって笑っただけだった。
「クリスマスという日はね、魔法を持っているの。かつて第一次世界大戦ではクリスマスに一時的ながら交戦国同士が前線レベルで休戦したエピソードもあるくらいよ」
「うーん……どっかで聞いたことあるような」
 ローザマリアの話を必死に思い出そうとしている瑛菜を見てローザマリアは思う。
(クリスマスを一緒に過ごせる素敵なお相手を見付けなさいな、瑛菜)
 この少しだけ特別な夜をもっと特別な夜にできるように。
「はい、メリークリスマス。瑛菜」
 用意していたクリスマスプレゼントをローザマリアは瑛菜に渡す。
「これってピック?」
「そ。二ルミナスの森で取れる木を削り出して作ったのよ」
「ありがとローザ。嬉しいよ。……今この場で返しのプレゼントしたかったけど、部屋に置いてきてるな」
「別にいいわよ。急がなくても。まだこの夜は終わらないんだから」

 聖なる夜を少しだけ特別に瑛菜とローザの二人は過ごすのだった。