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パートナーの飯が不味いんだがもう限界かもしれない

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パートナーの飯が不味いんだがもう限界かもしれない

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■調理人集合中■


 ラナからみせて貰った美緒の料理の写真を見て、冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)は気が遠くなった。
「美緒の料理の腕、去年より悪化してる……?」
「とても上手に出来たと思います」
 横で嬉しそうに言う美緒に、冬山はなんとも言えない表情で見た。
(美緒の恋人として放っておけない……)
「料理パーティーをすると連絡をもらったので、私も料理に挑戦してみるわ」
 楽しそうなルシェン・グライシス(るしぇん・ぐらいしす)に。
「大変だって話だから、わたしもお手伝いをしようと思うんだ。なんだか大事なパーティーらしいね」
 お手伝いしに来たよ、と芦原 郁乃(あはら・いくの)
「たくさんの人に提供する料理ってなるとたしかに手が足りないよね。とりあえず料理を手伝えばいいかな」
「お願いします!」
 美緒の返事を聞いて、にぱっと笑って。
「お手伝い、お料理もできて一石二鳥! よ〜し、がんばるぞぉ〜〜〜っ!!」
「パーティーの料理なら、私に任せてください! そして兄さんに、私の料理の腕を認めさせてみせます!」
 料理人の数が足りないと聞いた高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)も、手伝いにと手を上げる。
 やる気満々の芦原の後ろでは、妹の荀 灌(じゅん・かん)が心配そうに姉を見て、左右を見ていた。
「話は聞いたぜー。よーし、オレに任せ……」
 ぽんぽんと肩を叩かれ、きょとんとシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)は後ろを振り返る。
「今日はわたくしたちも交代してみましょう」
 穏やかに笑みをつくり、自分を指すリーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)
「え、今日はお前がやるの? いやまぁ、大丈夫とは思うけど……」
 ものすごくやる気満々のリーブラに、気が抜けたシリウスだ。
「シリウスは最近、集中講義でお疲れですし……ね」
 料理教えるのは上手なんですけれども、と困ったように続けるリーブラは、シリウスに料理の腕を上げてもらった過去がある。
 実績はあって、信頼も出来るが……。
「オレだと厳しすぎ?」
 コクリと頷くリーブラ。
「そ、それ言われると立つ瀬ないけど……」
 自分の舌鋒の遠慮のなさを自覚しているシリウスは、今日ぐらいは気をつけようと思いつつも、リーブラとバトンタッチした。
 厨房で一人黙々と料理作っている――ような事はない気がする。
 シリウスは会場で料理が出来るのを待つ事にした。
 料理好きな女性陣が厨房へと入っていく。
 美緒の料理の惨状に不安を煽られていた冬山は静かに溜息をついた。
(去年、水泳を教えたけど、今年は料理を教えなきゃ……)
「まあ今は目の前の事に取り組むべきでしょうね」
 美緒の料理うんねんよりも、パーティに並ぶ大量の食事である。
 殺人的な料理が出来るかもしれないが、フォローしてくれそうなメンバーも揃っている。
 パーティ料理の数を揃える事が第一優先でも大丈夫だろう。
 厨房に入っていくメンバーの背を見ながらぐっと手を握るのは榊 朝斗(さかき・あさと)である。
(美緒さんたちの料理パーティー。彼女たち作る側にとっては楽しい一時かもしれないけど、僕ら食べる側にとっては生命を懸けた戦いだ)
 ルシェンが料理を作ると聞いて戦慄が走り、被害を最小限にと一緒に来た榊だが、周りをみればルシェン・美緒に限らず、恐ろしい料理を作る事で有名な人達が揃っている。
(正直言って食べたくない)
 だからと言って、皆を喜ばせたいという彼女たちの気持ちを台無しにもしたくない榊は、準備も万端にここに来ていた。
 ソウルヴィジュアライズで、榊達の感情をみてとったアイビス・エメラルド(あいびす・えめらるど)
「……あら」
 ラナがなんとも逃げ出しそうにしている。
 座り心地が悪そうに落ち着きのない所を見ると、感情を読み取らないまでも何となく解る。
 アイビスの声と視線を辿ってラナの挙動不審に気付いた榊は、にっこりと笑みを作った。
「ラナさん」
 歩み寄ってくる榊を見、ラナは立ち上がる。
 ラナが居る場所は出口に近い。ドアを見やった榊を見てラナの身体が少し強張った。
 榊の考えは間違ってなかったのだろう。気持ちも充分解る。
「一つ言っていいですか?」
「はい?」
 笑顔の榊に、同じく笑顔のラナだが。
「絶 対 に 逃 げ な い で ね ?」
 その言葉で、思い切り顔が強張った。
「ラナだけを辛い目にあわせたりはしない!」
 そして、がっちりとラナの肩に手をおくルカルカ・ルー(るかるか・るー)
「に・逃げ道が……」
「ないです」「ないよ」
 思わず漏れたラナの言葉に、きっぱり断言した榊とルカルカ。
 にこーっととても楽しそうなルカルカ。
「ラナ、話は聞かせて貰ったわ。美緒の料理の腕がどれだけ上達したかだね!」
 ぐっと手を握る。
「美緒の料理、凄く楽しみっ」
 美緒の料理が激マズだということを知らないワケではない。
 天然な性格が可愛いと思っており、その可愛さが爆発した結果の――美緒が一生懸命作る料理。非常に魅力的だったらしい。
 一緒に食べよう、という二人に、ラナはがくりと頷いた。