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白い機晶姫との決戦! 機甲虫・イコン型を撃墜せよ!

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白い機晶姫との決戦! 機甲虫・イコン型を撃墜せよ!

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一章 エースたちの発進


 ヨルクのメッセージは、多くの契約者たちに伝わった。
 事態を収拾すべく、多種多様なイコンがアルト・ロニアに集結。航空母艦たるアイランド・イーリは契約者たちのイコンを積み込むと、すぐさま浮上した。
 リネン・エルフト(りねん・えるふと)はモニター越しに地上を見やった。住民は既に避難を完了しており、アルト・ロニアに人気は無い。
(この戦いに終わりはあるのかしら……)
 情報によると機甲虫はアルト・ロニアには向かわず、イコンに戦いを仕掛けていると言う。しかしながら機甲虫の矛先がいつアルト・ロニアに向かうか、それは誰にも分からない。
 何にせよ油断はできないし、する気も無い。リネンはモニターから視線を外すと、艦長に向き直った。
「身体に払った金額分は働いてもらうわ……頼むわよ、艦長」
 今回のイーリの艦長は、ミュート・エルゥ(みゅーと・えるぅ)だ。ミュートはのんびりとした口調で、出航を告げた。
「それではまいりましょうかぁ……アイランド・イーリ、出航しますよぉ」
 出航を知らせる合図が各イコンに伝送され、アイランド・イーリが飛び立つ。
 アルト・ロニアと大廃都の距離はそれほど離れていない。しばしの時を経て大廃都上空に到着したイーリの艦内モニターに、地上の光景が映り込んだ。
 大廃都周辺は以前訪れた時と変わらず、鬱蒼とした針葉樹に覆われている。だが、各学校のイコンとイコン型機甲虫の戦闘によって森の一部は焼き払われ、所々に火の手が移っていた。
 これ以上戦禍が広がるようなら、大廃都を覆う森は遠くない内に消え去り、何も残らぬ不毛の地と化すだろう。
 イーリの艦橋に立つリネンは、モニターに視線をやった。時刻は夜。気温は低め、湿度は高め。大廃都の上空は灰色の雲に覆われており、今にも雨が降り出しそうだ。
 あまり良い天候ではない。加えて、先ほど起きた原因不明のトラブルがリネンの胸中を微かにだが掻き乱していた。
 先日、リネンは新型艦を完成させた。本来であれば新型艦を今回の戦闘に使用したかったのだが、戦場に向かう直前になり、原因不明のトラブルが発生。新型艦は使用できなくなり、急遽アイランド・イーリを使う事となったのだ。
(これが後に響かなければいいんだけど……)
 無論、アイランド・イーリに不満がある訳ではない。イーリでも十分に戦えるはずだ。
 リネンは目を細めた。艦橋に複数設置されたモニターには、イコン型機甲虫の姿が映っている。【ホワイトクィーン】と呼称される純白の機体が1体、更に、その周囲を守るようにして4体の機体が配置されている。
 あれがイコン型機甲虫。彼女らは今なお各学校のイコンと戦闘を繰り広げており、大廃都の森を不毛の地へと変えつつある。
 リネンは、静かに拳を握った。
「どんな理由であれ……暴力に訴えるなら、殴り倒して話を聞くしかないわね」

 ――機甲虫は進化を続けている。
 今の世界は人類が支配している。人類による、人類のための環境――即ち、『人類環境』とでも呼ぶべきだろうか。機甲虫は己の身体を人類環境に適応させる事で、徐々に人の形へと近付いているようだった。
 イーリのモニターを通じてイコン型機甲虫の姿を確認したヘリワード・ザ・ウェイク(へりわーど・ざうぇいく)は、低く唸った。
「……これほど嬉しくない大当たりもないわね」
 前回、ヘリワードは『機甲虫が進化しているのではないか?』という予想を立てた。
 その予想は見事に的中し、今こうしてイコン型機甲虫が暴れ回っている。
(でも、相手は何を狙っているのかしら)
 生物にとって進化は手段に過ぎない。手段の先には目的がある。だが、イコン型機甲虫の目的は未だ分からずにいる。
 ヘリワードが思案する中、不意にミュートが告げた。
「レポートより随分と敵数が少ないですねぇ……あちらも追い詰められてるのかも、ですよぉ?」
 確かにミュートの言う通りだった。今回の敵の数は異常と言えるほど少ない。前回まではあれ程までに多くの機甲虫が出現したと言うのに、今回はイコン型機甲虫が5体と、ごく少数の通常型機甲虫が存在するのみ。
 前回の作戦で機甲虫の巣の一部を破壊できたが、それが影響しているのだろうか? それとも、他に理由があるのだろうか?
 分からない。分からないが――これまでとは『何か』が違う。それは明白な事実として、ヘリワードの心を強く穿った。
「……ミュート、イコンを出して」
「了解ですぅ、団長! カタパルト、発進どうぞぉ?」
 ミュートの合図と共に、イーリに搭載されたリニアカタパルトが作動した。発進準備の整ったイコンが次々と戦場に射出されていき、既に戦闘を繰り広げている各学校のイコンと持ち場を交替していく。
 全てのイコンが発進した事を確認すると、ヘリワードは【飛竜“デファイアント”】を駆り、ネーベルグランツに乗るリネン、【空賊団 親衛天馬騎兵】らと共に戦場に飛び出していった。