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平行世界の人々と過ごす一日

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平行世界の人々と過ごす一日
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リアクション

 昼、ザンスカール。

「驚いたけど、また会えて嬉しい!!」
「まさか再会出来るとはな」
 遠野 歌菜(とおの・かな)月崎 羽純(つきざき・はすみ)は食料の買い出しの帰りに思わぬ出会いに遭遇した。
 その思わぬ出会いとは
「俺も驚いたよ。たまたま二人で歩いていたら見覚えのある二人を発見して」
「……丁度会えたらいいと思っていた時に」
 平行世界の男性アイドルで男前の歌菜と美女の羽純であった。
「ではでは、折角再会と言う事で自宅に招待しちゃいますよ! ね、羽純くん」
 歌菜ははしゃぎ気味に隣の羽純に同意を求めた。その両手には大量の食料。
「あぁ、食料を沢山買っておいてよかったな」
 羽純の両手にも食料がある。また振り回されてはいるが。
「是非、招待を受けるよ。な?」
「えぇ」
 こちらも真っ先に食い付いたのは青年歌菜であった。
 そして、歌菜達の自宅で楽しい夕食会が開かれる事となった。

 自宅、キッチン。

「さぁ、張り切って作るよ!」
 歌菜は包丁を構え、料理を開始する。
 それからすぐ
「私も手伝うわ」
 羽純さんが登場。
「招待したのは私で羽純さんはお客様だから……」
 歌菜は手を止め、少々言葉を濁す。
「気にしないのよ。前回は戦いだったしあなたと話したり一緒に何かをする機会があまり無かったから」
 羽純さんは食材を手に取り、引く様子は全く無い。
「では、お願いしますっ!!」
 共闘時を思い返すやいなや歌菜は料理参加を認めた。

 賑やかな料理の最中。
「…………(やっぱり凄い美人さんだ。何かドキドキしちゃうよっ)」
 隣で作業をする羽純さんの整った横顔をちらちら見る歌菜は胸がドキドキして少々息苦しい。
「どうかした?」
 視線を感じた羽純さんは少し首を傾げる。
「ええと、羽純さんが凄く美人で驚いちゃって。だって羽純くんだから、仕方無くて」
 歌菜は思わず先程考えていた事が口から出てしまった。
 すると
「私も同じ事考えていたわ。やっぱり同じだって。明るくて可愛くて……後、人を振り回すところも」
 羽純さんは口元をほのかにゆるめた。だから放って置けなくて手伝いに来たというのもあったり。つまりは惚気いっぱいの発言をぶちかます二人という事だ。
「もぅ、羽純くんと同じ事言わないで……って同じでした」
 歌菜は可愛らしく頬を膨らまして余計な一言に文句を垂れた後、思わず笑うと羽純さんもつられて笑った。
「本当、楽しいわね」
 笑いが落ち着いた所で羽純さんは再び作業に戻った。
「えぇ、本当に」
 歌菜も共感しながら作業に戻った。
 二人は他愛の無い話をしながら料理をし、羽純さんは歌菜が可愛くて堪らないのか何かと手伝っていた。
 何とか夕食は無事に完成させる事が出来た。

 羽純さんがキッチンに消えた後。
 残された男性二人はのんびりと過ごしていた。
「しかし、こっちの羽純さんも綺麗な顔をしてるよな」
 じっと羽純の顔を見ていた青年歌菜が唐突に褒めだした。
「唐突に何を言うかと思えば……」
 羽純は少々呆れ気味。
「いや、前は戦いで慌ただしかっただろ。今こうして改めて見るとさぁ。その端正な顔立ちに……」
 青年歌菜は瞳を輝かせながら羽純を褒める。
 それに対し
「……俺はお前の方が美人だと思うけどな(何より歌菜だし。というか褒めてる様子が全く歌菜と同じだ)」
 羽純も褒め返す。胸中では歌菜とのそっくりぶりに苦笑していたり。
「あはは、やっぱり、あれだな。好きな人の平行世界の人物だからって奴」
 羽純の褒め言葉に青年歌菜は急に噴き出した。自分達が全く一緒だったから。共に歩む人を愛しているという事が。ようはただの惚気。
「そうだな」
 羽純も苦笑気味にうなずいた。
 この後も賑やかにお喋りしながら夕食会が始まるのを待っていた。
 ようやく準備が整い夕食が始まる事となった。

 夕食。
「乾杯♪」
 歌菜の音頭でまずはワインで乾杯をしてから夕食が始まった。
「羽純さんの作ってくれたクリームコロッケ、凄く美味しい♪ 今度、真似して私も作ってみようかな」
 歌菜は羽純さん作のおかずを頬張りながら素直に褒める。
「あら、ありがとう。ポタージュスープも美味しいわよ」
 羽純さんは歌菜作のスープを一口飲んで褒めた。歌菜を可愛がっている感じ。
 互いを褒め合った二人は顔を見合わせ思わず笑い合っていた。
「羽純さんの料理も最高だけど……俺、料理うまいなー! 美味しいっ!」
 青年歌菜はあれこれと頬張るなり声高く素直な感想を口にした。
「……どれも美味しい(本当、素直な所も同じだな)」
 羽純は青年歌菜の素直なリアクションに笑ってしまう。
 夕食は賑やかに進んだ。食事の手もお喋りの口もひっきりなしだった。

 賑やかな食事を終えた四人はそれぞれ女性陣と男性陣に別れて入浴し終えてからゆっくりと晩酌がを始めた。
「そうそう、聞きたいと思っていた事があるんだけど、羽純さんとの馴れ初めとか♪」
 歌菜はお酒を飲みながら以前聞けなかった事を青年歌菜に訊ねた。
「……あの時の事ね。ステージで派手に告白された時の」
 羽純さんはお酒を楽しみつつ溜息を吐いた。
「ステージで告白!? どんな感じだったの?」
 歌菜は興味津々に食い付き、少し身を乗り出し気味にもう一人の自分に訊ねた。
「あぁ、実はな……」
 青年歌菜は楽しそうに語った。羽純に予告もなくステージで派手に告白し結ばれた事を。
「ステージから告白ってすごーい。それにロマンチック」
 聞き終えた歌菜は目をキラキラさせて平行世界の夫妻を嬉しそうに見つめていた。
「ステージから告白か。凄いな(向こうの歌菜には羞恥心が無いみたいだな。未だに俺に照れる歌菜に、その大胆さを分けて欲しいかもな)」
 羽純はこっそり歌菜を見るなり胸中でつぶやきを洩らした。
「そりゃ、告白も派手になるさ。俺を支えてくれるのは羽純さんしかいないんだから」
 青年歌菜はどんな時でも自分を支えてくれる羽純さんに満面の笑みを向ける。
「そういう事をさらりと言って……あの時は突然の事で本当に驚いたんだから」
 向けられた笑顔に少々照れつつ羽純さんは嬉しさが混じった溜息を吐き出した。
 この後、楽しいお酒とお喋りは翌朝まで続いた。