First Previous |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
Next Last
リアクション
空京にて服役中のオリヴィエ博士に面会に行く為に、ハルカを迎えに行く約束をした日は、明日だった。
その前日である今日は、ハルカは家庭科室を予約して、お菓子作りをするのだと、予定を聞いて知っている。
なのについ今日来てしまったのは、心配というか、今回頼りにされなくて何となく寂しいというか、いや別にショックなわけではないのだが
「何、ぶつぶつ言っているの」
漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)に言われて、ブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)は我に返った。
「いや別に。
それより、随分予定より早くなってしまったから、大図書室にでも寄って行くか」
「うん」
本好きの月夜に提案してみると、案の定瞳を輝かせて頷く。
――だが、月夜が発見、読み耽っていた「彼の胃袋を掴む百のレシピ」という本にブルーズも興味を抱きつつ、二人とも、家庭科室が気になって仕方がないのだった。
「一応我等は部外者だからな……覗く程度なら問題ないかもしれんが」
別に見学を禁止されてはいない、と解っているのだが、何となく中に入れない二人。
拗ねてなんていないし、後ろめたいものなどもない。ないったらない。けれど結局家庭科室の外に来ている。
「あの窓から中が見えそう。でも此処からだと、届かない。
……こんな時、刀真なら肩を貸してくれるんだけど」
月夜が、家庭科室外側の窓を指差した。
教室からなら窓枠が胸の下に来る窓だが、外からだと、足場がイルミンスールの枝だから、高低がむちゃくちゃなことになっているわけである。
「……」
じー、と無言で二人は見詰めあう。
じー。
じー。
(樹月も、こうやって負けているのだろうな……)
心の中で嘆息しつつ、ブルーズは壁に手をつき、肩に乗れ、とジェスチャーした。
「肩を貸してくれるの? ありがとう!」
わあい、と喜んで、月夜はブルーズの肩に乗る。
「上見ちゃ駄目よ」
そう言いながら、月夜が窓枠に手をつき、中を覗き込もうとした時、
「何やってんだ?」
背後から声を掛けられた。
ビクッ、とブルーズはバランスを崩す。
「わっ、ブルーズ、危ないよ」
何とか踏みとどまり、振り返ると、トオルとシキが呆れていた。
「この向こうは確か、風呂場でも更衣室でもなかったはずだが……」
「ち、違う違うっ」
濡れ衣だ、と月夜が慌てて首を横に振る。
「……二人とも、元気そうだな」
ブルーズは、月夜を肩に乗せた不審者然としたまま、この後で寄ろうと用意していた差し入れを渡した。
「え、賄賂?」
くすくす笑いながら、トオルは受け取る。
「違う。我が作ったチョコプリンだ」
――――――――――――――――――――――――――――――――― 複雑な保護者心
First Previous |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
Next Last