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とある共産主義者(コミー)の共産主義的政治宣伝(プロパガンダ)

――空京のとある広場。
 この広場ではアマチュアのミュージシャンや芸人といったパフォーマー等々、集まった者達に『自分自身』を見てもらうべく、活動をする者達が多く集う。
 その中に一人、一際異彩を放つ者がいた。

「おはよう! シャンバラで日々、額に汗して働く労働者同士達よ!」

 彼女の名は藤林 エリス(ふじばやし・えりす)
 エリスは何も持たず身一つで空き箱の上に立ち、通りゆく人々へ語りかける様に声を張り上げる。
 エリスが行っているのは、音楽を奏でる事でも、自身の芸を見せる事でもない。

「世界が未曾有の危機に瀕しているからこそ一般庶民の民生の充実は急務である! 充実した国力こそが困難を乗り越える原動力であり、それを支える労働者の給与・待遇の改善は待ったなしの課題である!」

 彼女が行っているのは、シャンバラの共産化の為の街宣活動である。
 空京はシャンバラの政治経済の中心地でもある。
 エリスはこの広場で人民の苦境を訴え、労働者階級の生活改善を求める為の演説を行っているのだ。
 何事かと足を止める者達が現れると、彼女の演説は更に熱くなり、耳を傾ける者達へと語りかける。

「シャンバラ王政はいたずらに戦線拡大に走る前に、庶民生活の実態に真摯に目を向け、労働環境の改善に強力な指導力を発揮せよ! 労働者諸君、諸要求貫徹に向け、おくさずにストライキを構え団体交渉に臨むのよ!」

 だが、この演説を聞いた人の評価は芳しく無い。物珍しさで足を止める者はいるのだが、暫くすると飽きてしまったかのように歩き出してしまう。
 あくまでも広場で演説をしている姿が珍しいだけであり、内容に関しては興味を持たれなかったのだろう。最後まで足を止めてエリスの演説を聞く者は居なかった。

「労使の適切な緊張関係があってこそ、風通しのよい健全な企業が育まれそれは結果として会社にも好影響をもたらすことに、自信と確信を持って望むのよ!」

 それでもエリスは演説を止めない。誰も足を止めなくても、道行く人がいる――誰かが耳を傾ける可能性がある限りは彼女が止める事は無いだろう。

――何故このような広場で、こんな事を?

 演説を聴いた者の中には、彼女にこの様に問いかける者も居た。そんな者に対して彼女は、溜息を吐きつつこう答える。

「私だって本当は王宮の前でやりたかったわ。けど許可が下りなかったのよ」

 当初エリスは、警察まで赴き事前に許可を取ろうとしていた。王宮前での街宣活動の許可だ。
 これはあくまでも平和的闘争。公的な物として行いたいと思ったのである。
 だが、結果はお分かりの通り「いかんやろ」とNG。流石に王宮前での活動は許可が下りなかったのである。
 代わりに、と提示されたのが広場で、という事だったのである。

 日が落ちて、人気がなくなる頃エリスは演説を止める。
 そして翌日、同じ場所でエリスはまた熱弁を振う。
 シャンバラ共産化を目指した地道な日々の活動。これが彼女の日常なのだろう。

「万国の労働者達よ、団結せよ!」

――今日もまた、空京にはエリスの演説の声が響いていた。