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魔王からの挑戦状? ~起動せよ魔王城!~

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魔王からの挑戦状? ~起動せよ魔王城!~

リアクション

「……状況は了解したわ。事故ではしかたないわね。 GVおよび空賊団、国軍の指揮下に入ります」
 超弩級母艦『ガーディアンヴァルキリー』のブリッジでリネン・エルフト(りねん・えるふと)は通信で状況を説明してくれたルカルカ・ルー(るかるか・るー)に実にわざとらしい言い回しで応えていた。
「ありがと、そうしてくれると助かるな」
 しかし、そんなリネンの態度を気にせず、笑顔で通信を切るルカルカ。
 それを見てリネンは大きなため息をついた。
「どうしましたぁ?」
 そんな彼女が気にかかかったのか、艦長席に座るミュート・エルゥ(みゅーと・えるぅ)の顔が目の前のモニターに映った。
「こんな事に巻き込まれるとは思ってなかっただけだよ」
 実際、蒼空学園に顔を出した際にイルミンスールが制作したシミュレーションのテストをして欲しいと頼まれた結果こんなことになっていた。
 これは全くの予想外ではあったが、とりあえずはこの事態を乗り切らねばとリネンは気合を入れ直す。
「私はネーベルと共に艦の直援に入る。 後は頼むぞ?」
「はぁい、お任せ下さい」
 ミュートが応えると、リネンは頷いてブリッジから出ていった。
「しかし、この睡眠学習装置……色々使えそうですねぇ」
 艦長席に座り直し、正面の要塞『魔王城』を見直す。
 まるで本物のGVに座してる感覚、まるでシミュレーションとは思えないのだ。
 だがしかし、この空間から脱出できなくなってしまっているのも事実。
「まぁ今は目の前の窮地を味わいましょうか、ね?」
 ミュートは困った様子を見せず、着々と指示を出していく。
「イコン使う方、母艦は引き受けますよぉ」
 今回の先頭の主力となるイコンパイロット達へ通信をつなぐ。
「では出撃どうぞ」
 ミュートが出撃許可を出すなり、次々とGVのカタパルトからイコンたちが出撃していく。
「さて、ワタシらはどうしましょうか」
『ラグナロクと共に要塞に進行だよ!』
「了解ですぅー」
 ペガサスを駆り、GVのブリッジ付近を飛び回るリネンから指示が入った。
 GVの正面にはダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が艦長を務める戦艦ラグナロクの姿があり、防御に優れた装甲でGVを敵の砲火から守ってくれるつもりなのだろう。
「じゃあ、これよりGV及びラグナロクとその護衛艦は魔王城へと突撃しますぅー!」
『ま、魔王の城をぶっこわすんじゃねぇですよぉ!?』
「それは皆次第ですねぇ」
 ミュートの突撃指示に合わせ、それぞれが作戦開始といった様子で進撃を開始する中、魔王からの通信が全軍に通達されるがミュートののんびりした口調で一蹴され、通信には笑い声が上がっていた。
 その笑い声に合わせる様に、護衛艦の中でも一際目立つ見た目をしている【ピヨ型戦艦Perfect Invincble Yellow Object】通称『PIYO』の艦首に備え付けられたピヨの頭部の形をした物の目が光り、一筋のビームが敵陣を焼き払う。
「ピヨッ!」
 ブリッジではその様子を見ていた巨大なヒヨコの様な姿をしているが、それとは違う生命体であるジャイアントピヨが誇らしげに囀っていた。
 それに呼応するように乗組員である通常サイズのピヨ達も鳴き出し、艦内は一斉に騒がしくなる。
『見た目が戦力には左右されない、とはよく言ったものだ』
「ピヨッ!!』
『……なんだ、ヒヨコ!?』
 先ほどの一撃を見た鋭峰が通信を入れてくるが、通信に出たのはジャイアントピヨ。
 艦長っぽい帽子をかぶり、白鬚を付けている姿を見て鋭峰は困惑した。
「ああ、アリス。 翻訳してあげて」
「しょうが無いわネ」
 珍しく困惑している団長が面白くあるものの、このままでは埒が明かないと操舵を担っていたアキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)はゲスト席でピヨ達の様子を眺めていたアリス・ドロワーズ(ありす・どろわーず)に声をかけていた。
 床に足が届かず、足をぶらぶらさせていたアリスは目の前の基盤を操作し、ジャイアントピヨと鋭峰の会話に割り込む。
「その通り、我らが道を切り開く。 らしいワ」
『う、うむ? では先鋒はお任せしよう』
「ピーッ!」
「任された。 って言ってるみたいネ」
 アリスの翻訳でとりあえず意思の疎通は出来たようだが、ピヨが艦長という事に驚きを隠せないのか鋭峰はそそくさと通信を終了させていた。 
「よし、じゃあ前進だ」
 ラグナロクやGVに随伴する形で戦艦PIYOは真っ直ぐと進み、各部に備え付けられた銃座からビームやミサイルが一斉に放たれ、魔王城への進路へ待機していたゴブブリンが次々と爆散していく。
「ピピーッ!」
「主砲いつでも発射できます。 って言ってるワ」
 火器管制を行っていたピヨがそう叫ぶと、ジャイアントピヨは頷いた。
「ピヨ〜」
「よぉし、撃てーーー! めんどくさいワ、コレ」
 主砲に味方を巻き込まぬよう、最前線へと突出したPIYO艦首の頭部の口が大きく光り、ビームが収束した次の瞬間。
『ふはははははっ! ビックバンブラスト発射ぁっ!』
 妙な高笑いが全域通信で流れ、魔王城と自軍の間に2つの大型ミサイルが着弾。
 次の瞬間には凄まじい光で辺りが包まれた。
「ピ、ピヨォー!?」
「艦首消滅。 不味いわネ、コレ」
 突出していた戦艦PIYOの艦首はミサイルの爆風に巻き込まれ、始めから無かったように消滅している上に艦全体が傾いて今にも爆発しそうだ。
「落ち着いて、全員退艦! 俺達はこのまま出るぞ!」
 混乱するピヨ達を宥め、アキラはジャイアントピヨの背中に飛び乗る。
 アリスはいつの間にかアキラの頭にしがみ付き、2人が乗ったことでジャイアントピヨも我に返ったのかブリッジの上部目がけて口からビームを放つと勢いよく飛び立った。