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リアクション
ダークサイズイコンを自分のものと信じて疑わない朝霧 垂(あさぎり・しづり)からすれば、イコンの部品を集めて再整備することは自明の理である。
「パパンパパパン(まってろよ、俺のイコン……今、元の姿に戻してやるからな)」
口に出しながらもその意図が読めない小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)、ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)、コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)の三人も協力するようにイコンを集める。
垂はDS幹部特権で得た情報を元に、ゴッドスピードの高速状態でイコン部品を回収して周り、
「あ、パンダさん。そっちにも部品が」
「パン!(おう!)」
美羽は、トレジャーセンスで細かい部品を目ざとく見つけた。
傍で見ていたコハクは困ったような表情で美羽に耳打ちした。
「美羽、たぶん……あれパンダじゃないよ?」
「え? でも鳴き声がパンダだよ?」
「いや、そもそもパンダはあんな風に鳴かない……」
「パパパン!(てめえら、くっちゃべってないで手を動かせよ!)
怒鳴られて、二人は慌てて手を動かす。
次々と回収された部品が一ヶ所で山になっていく。
それをベアトリーチェが、ダークサイズイコンの修復に充てる。
そのうえでベアトリーチェはさらにダークサイズイコンのパワーアップも図っていた。
「パパンパン?(おい、それはなんだ?)」
垂がベアトリーチェがいじっているものに興味を示した。
「ん? これですか? これはパワーアップユニットですよ。ダイソウトウさんのダイソウトウ力、アルテミスさんの選帝神の力、これらの力をイコンのジェネレーターに流し込み、今まで以上の出力を発揮することができるんです。……まあ、そのためにはその出力に見合うだけの耐久力が必要ですから、全体的な微調整が必要なんですけど……」
それを聞いて、垂は、
「パン!」
ベアトリーチェを叩いた。
「いたっ!? な、なにするんですか!」
「パン!(ふざけるな! なんで俺のイコンがダイソウトウたちメインの改造なんだよ! やるならまず俺メインの改造だろ! いや、俺のイコンというより、もう俺?が?イコンだ! 俺をイコンの操縦と直結させろ!」
「いたたた! なんか、一鳴きとは思えないくらいに色々な意味がこもった言葉を聞かされたような……いたたた!」
ベアトリーチェは頭を押さえて、パンダと鳴く生物の暴行に必死に耐えていた。
「ベアトリーチェをイジメちゃダメだよパンダさん!」
美羽は慌ててベアトリーチェから垂を引き離す。
「大丈夫?」
コハクはベアトリーチェに駆け寄り、グレーターヒールをかける。
「うう……ありがとうございます」
美羽は無事だったベアトリーチェを見て安堵のため息をつきながら、垂を説得する。
「パンダさん。まずはイコンを直すことを考えないと。ね? こんなことしてる間にもアナザ・ダイソウトウがなにしてるか分からないんだし」
「パンパン……(そうだったな……。まずはこいつの修理をしないことには始まらないよな……)」
垂は力を抜くと、説得できたと見て美羽も手を離した。
拘束を解かれた垂は再び黙々と部品を回収していく。
「それで……あと修理にどれくらいかかるの?」
コハクが訊ねると、ベアトリーチェはニッコリと微笑んだ。
「もう、起動しようと思えばできるんですよ。ユニットが完成する前に一度起動させようと思ってたんで、ちょっとやってみますね」
そう言ってベアトリーチェはダークサイズイコンを起動させ――硬直した。
起動画面にはロックがかかっていたのだ。
そして、パスワードにはダークサイズ幹部全員のが必要であるとされていた。
「……どうしましょう?」
「どうしましょうって言われても……とりあえず、まだ言わない方がいいんじゃないかな。これ言ったら、また暴れそうだし……」
二人は必死に部品を回収してくれている垂と美羽を見つめながら、はるか遠くを見つめた。
パスワード解除待ちのイコン
ダークサイド・アルテミス
アナザ・ダイソウトウ
ダイソウトウ力を手にしたひなげし
そしてどうにか回復したダイソウトウ
あらゆる人間の思惑が交錯し、今最終決戦の幕が上がる……。