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夏最後の一日

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夏最後の一日

リアクション

 通り。

「……(出会った時から仲良くなったが、関係が進まない……メルヴィアは孤児ですし、お父さんとして頼ってくれるといいんだけどなぁ)」
 ルース・マキャフリー(るーす・まきゃふりー)は今日を過ごそうと誘ったメルヴィア・聆珈(めるう゛ぃあ・れいか)が待ち合わせ場所のここに来るまであれこれと考えていた。
「……(とりあえず、今日は可愛い物好きなメルヴィアらしく浴衣とか、リボンのあるファンシーショップに向かうとしましょうか)」
 ルースは今日の計画について考えていた時、
「……待たせた」
 ようやくメルヴィアが現れた。
「大丈夫ですよ。早速ですが、あの店に入りましょう」
 ルースは快くメルヴィアを迎え、近くのファンシーショップへと案内した。

 店内。

「いかがですメルヴィア。ここに気に入るものがあればいいのですが」
「人気というだけあってなかなか品揃えいいな」
 訊ねるルースに可愛い物好きのメルヴィアは可愛い物で溢れる店内を楽しそうに見渡しながら言った。
 そんなメルヴィアの横顔を見やり
「気に入ったものがあれば言ってください。プレゼントしますよ?」
 ルースが言葉をかけた。
「いや、貰う理由が無いのにそれは悪い」
 メルヴィアは首を振り即断った。言葉はともかくルースに悪いと思ったのだろう。
「そうですか……別に理由はいらないですが」
 ルースは自分に悪いと気遣った事を察して口の端をクスリと歪めた。
 ともかく二人は店内を見て回る事にした。

「少しでもメルヴィアが楽しんでくれればいいのですが」
 ルースは一人であれこれ見たいだろうとメルヴィアを気遣い、別棚を見て歩いていた。
 それもただ見ているだけでなく
「……(何かメルヴィアが好みそうな物はないでしょうか)」
 ルースはメルヴィアが好みそうな物はないかと何気に見て回り
「…………(メルヴィアの様子を見ていれば分かるかもしれませんね)」
 メルヴィアの様子から欲する物を察し贈ろうと考えていた。
 そのためメルヴィアを捜し回った。

 一方。
「……色々あるな」
 メルヴィアはあれこれと棚を見て回り、
 時には
「このリボン、可愛いな」
 手に取って見たりもした。特に今手に取ったリボンは余程気に入ったのは見ている時間が長かった。
 買うかと思いきや
「……品が良いだけに値段もそれなりにするな」
 値段の方に問題を感じ、諦めて棚に戻した。
 そして興味を
「…………(可愛い浴衣もあるな。少し試着してみるか)」
 浴衣に向け、可愛らしい浴衣を物色した後試着室に向かった。

 そのリボンから浴衣の一連の出来事を
「……あのリボンが気に入ったみたいですね。それなら……」
 メルヴィアを捜していたルースが目撃し、メルヴィアが長時間見ていたリボンをこっそり手に持ち、試着室へ。

 試着室前。

「……なかなかいいが、夏は今日で終わりだからな」
 気に入ってはいるが、夏が今日で終わりという事で購入を渋っているようであった。
 そこに
「……似合っていますよ。確かに夏は今日で終わりですが、今日は着られますよ」
 ルースが現れて褒めるなり、店員を呼び勘定をしようとする。
「……いや、浴衣を買って貰うのはさすがに」
 メルヴィアは買って貰うのはまずいと止めようとするが
「お礼ですよ。今日、オレに付き合ってくれた事への」
 ルースは笑顔で気にするなと言った。
「……そうか」
 メルヴィアはルースに何を言っても駄目だと悟り止める事をやめた。
「えぇ。後、これも……」
 ルースは浴衣と例のリボンも勘定してから
「……これはあのリボン」
 リボンを渡しメルヴィアを驚かせた。まさか見ていた場面を見られたとは思っていない。
「えぇ。さぁ、行きましょう」
「あぁ」
 ルースとメルヴィアは仲良く店を出た。
 それから二人は一緒にあちこちの店を見て歩き回り、夏の最後の日を過ごした。
 そして、別れの時がやって来た。

 別れ際。
「今日は楽しかったです。ありがとうございました、メルヴィア……素敵な浴衣姿も見られた事ですし」
 ルースは今日を楽しく過ごせた事に礼を言うと共に悪戯っぽく浴衣姿を褒めた。
「そんな事は無い……こちらこそ感謝する」
 褒められた事にメルヴィアは恥ずかしさなのか否定するも今日の礼を言った。
 これでお別れと思いきやそうではなかった。
「……メルヴィア」
 ルースが一番の目的である話を切り出そうとするが
「……例の話か。それなら私は言ったはずだ」
「俺も元孤児で……」
「……確かに私は孤児だ。しかし、同情や憐れみを掛けて貰いたいとは思ってはいない」
 メルヴィアはきつい表情で辛辣な事を言い放った。子供の頃から自分の腕で食いつないできた故のプライドがあるのだ。そのため娘の件に対しては色よい返事はしない。以前も父性を出すなと怒ったぐらい。
「いいや、同情や憐れみは掛けていませんよ。俺が言いたかったのは俺もメルヴィアも元孤児だから自分達と同じ境遇の子供の気持ちを理解する事が出来ると言いたかったのです。俺はそんな子供を少しでも減らしたくて孤児院の運営を始めました。彼らの気持ちを知る者達が寄り添ってあげる事が大事だと思っているのです。傷が分からぬ者よりも傷の分かる者がそばに居る方がきっと……だからこそメルヴィアに寄り添いたいと」
 ルースは頭を振り、自分の気持ちをメルヴィアの勘に障らないように言葉を選びながら語った。
「……」
 メルヴィアはじっと耳を傾けている。
「それに世の中には自分の力で生きていけない子もいます。ですからメルヴィアに手伝って欲しかったのです。孤児院の運営を」
 ルースは再び誘った。
「……娘の件は頷けないが、孤児院を手伝って欲しいというのは引き受けたい。私も自分と同じような子供が増えて欲しいとは思わないからな」
 やはりプライドから娘の件については頭を縦には振らないが、ルースの孤児院への思いは理解出来るため手伝いに関しては手を貸す事に快諾した。
「今はそれでもいいです。孤児院への協力ありがとうございます」
 ルースはにこやかにメルヴィアの申し出を喜んだ。成果は一歩ではなく半歩であるが。