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アリサ・イン・ゲート -Rest Despair

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アリサ・イン・ゲート -Rest Despair
アリサ・イン・ゲート -Rest Despair アリサ・イン・ゲート -Rest Despair

リアクション

「壊れろ」
 唯斗が無音の踏み込みからの縮地にてアセトの目の前に現れる。脇を引き溜めた右の爆炎拳の力を放つ。
 だが、熱炎を残し、拳は受け止められる。アセトの生成した黒い掌が拳を包み込んでいた。
「伏せ!」
 セレンフィリティが唯斗の影から高速の蹴りを放つ。唯斗は身を屈ませ、蹴りの軌道にアセトを引き込む。
 アセトは掌の形状を解き、蹴りの回避に。だが、下段より抜刀の構えの唯斗が手刀を同時に繰り出す。アセトは後ろに反った体勢になりつつ腕を靄で強化硬質化し、これを防ぐ。受ける衝撃で距離を取る。
 距離的優位性に美羽がブライトマシンガンを掃射する。対し、シールドを生成してこれらを飲み込む。
 だがさらに美羽の銃弾に混じりセレアナの魔弾が迫る。自在軌道の弾丸を受ける瞬間。弾丸を掴み潰す。そして、シールドが飲み込んだ弾丸を再発射。散弾として放出する。
 美羽とセレアナはベアトリーチェの構えた女王騎士の盾の後ろに退避。被弾を免れる。

「あっちも苦戦しそうだけど、こっちは更にヤバイな」
 和輝が睨む先には最悪の相手がいる。
「さて、どう出てくるか」
 ダリルが前に出る。
「アセト、ルカも俺より後ろに下がれ。『雷霆』の近くにいろ」
 退避を促しながらも自らは前に出ようとする。
「先に忠告しておくが、RAR.を壊すってことは俺を壊すのと同義だ。死にたくないというなら今のうちに逃げておく事を薦めておく」
 燕馬が言う。
「糞つまらない冗談はRAR.と同期化したせいか? ならおまえもクズ箱と一緒にスクラップにしてやるよ」
「そうか。なら敢えて言おう。死ね」
 ビルの中からガラスを突き破り車が突っ込んでくる。ブロックの段差で車体が浮き、放物線を描いて落下する。燕馬たちが居た場所で爆発する。
「この都市には放置された車が何台あるだろうな」
 更に近づいてくる幾つもの車の走行音。全てダリルが都市電波機能を使ってハッキングした車だ。質量と速度を単純かつ明白な破壊のエネルギーに変えて彼らに襲いかかる。
 サツキが言う。
「本気で私たちを殺すつもりですか」
 ダリルが浮遊車を落下させ答える。
「そうだ」
 落下し続ける車の爆撃をすり抜けて、ビルの影に隠れる。
「どこに隠れても無意味だ。ここにはいたるところに目(カメラ)がある。<<ワタシ>>の目からは逃れられない。例えばだ」
 ビル内に隠れたシリウスの背後から、人型の影が襲う。
「……人間清掃用アンドロイドってか」
 接客業務用アンドロイドが物騒にもナタを持って貼り付けの笑顔を見せる。容赦なくナタを振り下ろしてくる。
 シリウスは先手をとり肘関節を破壊する。ナタと腕が室内のガラスを突き破って飛んで行った。と思えば、ナタが投げ返される。ガラスの向こうにいた別のアンドロイドが投擲したのを、目の前のアンドロイドを盾にして受ける。
「まともに近づけやしないな……」
 シリウスは愚痴り町の外に待機しているイコンを呼ぶ。
 同じく真司もイコンを呼んだ。その頭上で爆発音が連鎖する。
 降り注ぐガラスの雨をコートで弾くと、続いてビルが倒壊してくる。ビル内にいくつも設置されているコンピューター等の精密機器に過剰な電力を流し込み連鎖爆破させ、ビルの倒壊を誘発させたのだ。
 彼らは迫る巨大質量の影から逃げ、倒壊が起こす粉塵を身に浴びた。
 
 倒壊したビルを眺めてダリルが言う。
 瓦礫に彼らの何人かは生き埋めになったか、圧死しただろう。
「これでいくらかおとなしくなったな」
「ほざけ!」
 燕馬が粉塵を隠れ蓑に《エンドレスファイヤ》を【荒野の棺桶】の掃射に交えて撃つ。
 ダリルは熱画像計測に切り替え、居場所を割り出し、【調律機晶兵】に銃撃を命令する。
 サツキが銃弾に割り込む。《アブソリュートゼロ》に銃弾が凍りつく。
「なぜそこまで<<ワタシ>>を破壊したがる? <<ワタシを壊せば>>この世界は消えるぞ?」
 燕馬が言う。
「元から無いような世界だったんだろう。おまえの言う市民ってのはもう全部外にいっちまったんだろうが。アセトもこの世界が作った幻影じゃねえか」
 唯斗が言う。
「もとより消え行く霞がマダ残っているだけのこと。存在しない者まで救おうとは俺は思わない。ダリル。おまえはデータという虚影に囚われた盲人だ。肉と血を持つ者を虚影のために犠牲なんかはさせねぇ!」
「認識の相違だそれは。俺は<<ワタシ>>という存在を認識している。おまえたちもこの世界を言葉(コード)の羅列ではなく、感覚で理解しているはずだ」
「その感覚もまやかしなんだろう! まやかしが生きている俺達に語りかけるんじゃない!」
 叫ぶ燕馬の背後から、シリウスの乗るノイエ13と真司のゴスホークが現れる。
 イコンのスピーカーでシリウスが叫ぶ。
「御託はどうでもいい。とにかくアリサを返しやがれ! なんなら『雷霆』ごとRAR.を打ち抜くぞ!」

 アセトが前に出る。
「アペルプシア」
 アセトの内から黒い靄が噴出し、フィーニクスタイプのイコンを形成する。ただ形が似ているだけで全長はサイズL型よりも一回り大きく、羽も刺々しい。
 アペルプシアがノイエ13に腕を伸ばす。
 鞭のように伸びる腕をグランシャリオで斬り落とし、バルカンで牽制しつつ接近する。
 後方、切り落とした腕が変化し、レーザービットになる。
 射出されたレーザーの軌道をヴェリアルがBMIにて出力される《グラビティコントロール》の重力場で捻じ曲げる。
 アペルプシアは接近するノイエ13に対し、両腕部を刀身に変え初撃を受ける。切り返しにノイエ13が飛び退く。
 入れ替わりに、ゴスホークが攻める。プラズマライフル内蔵型ブレードで斬り合い、腕部を削る。
 ブレードが鍔競り合いで止まると、腕部がブレードを侵食する。機体への侵食を恐れ、ブレードを放棄しエナジーバーストでブレードを破壊する。破壊の衝撃と爆発にアペルプシアを巻き込んだ。
 だが、爆発に対し、アペルプシア翼を防壁にし、大きなダメージから逃れていた。

 皆がそれぞれ戦う中、迦耶と美羽とベアトリーチェが説得を掛ける。

 美羽が言う。
「アセト、こんなんでいいの!? 誰かを犠牲にしないといけないなんてないよ!」
 アセトが答える。
「今はそれしか方法がないの」
 迦耶言う。
「他に方法はなかったんですか?」
 RAR.が答える。
「アリサの精神同位体であるアリスを使えば、同じことが可能だろう。しかしソレは<<ワタシ>>が判断するに、アリスがアリサと同じ能力を有していないと出来ない。不確実だ。それでも試すというなら――」
 ベアトリーチェが言う。
「誰かを犠牲にする方法なんて聞いてません! 誰も犠牲にしない方法はないんですか!?」
「アリサを犠牲にする方法以外にない。アリサにはαネットを常時使い続け人々の意識の演算経路をつなぎ続けなければならない。それ以外にはない。それが<<ワタシ>>の出した答えだ」


「否! それは、間違っているぞRAR.!」