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【祓魔師】アナザーワールド 2

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【祓魔師】アナザーワールド 2

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第15章 AfteWorld_2年後

 任務の途中で一時期帰宅と称し、陣たちは妖精が住む森へやってきていた。
「アウラさん、今晩はーっ」
 パラミタにきて出来た最初の友達、アウラネルクと会う約束していたのだ。
「陣、久しいな」
「ちょーっと祓魔師のお仕事で忙しくって、なかなかこれなかったんっすよ」
「それでね、ボクたち未来に飛ばされちゃったんだよ!陣くん、そこで何になってたと思う?」
「こ、こら、リーズ。また余計なことをっ」
「実はのぉアウラよ、実際には…ゴニョゴニョゴニョ」
 1人の口は塞ぎきったものの、もう1人の口は塞ぎきれず…。
「ふむ…ほう。ここでも芸人とな?」
「ちっがぁあう、絶対ちがーう!」
 思い出にまたもや黒い歴史を残され、どの口が言ったんや!とジュディの肩を掴み、がっくんがっくん揺らす。
「あら皆、もう揃ってるのね♪」
「さてと…俺はもう、そこのハンモックで寝るか」
「ちょいまち、羽純」
 さっさと離れようとする羽純の服をカティヤが掴む。
「晩御飯、まだでしょ?」
「いやもう腹が一杯だ。マンドラゴラと同じ食事をいただいたところだし」
「へー、そうなの。って、信じるとでも?」
 わさわさ揺れながら輸血パックをすすっているマンドラゴラを直視し、ずいっと羽純にディナーをつきだす。
「見ただけで満腹になるなんて、すごい料理だな」
「たーんと召し上がれ♪」
「―…歌菜」
 ちらりと彼女へ目を向けて助けを求めるが、巻き込まれたくないと全力で背を向けられた。
「おーいしいわよ〜」
「むぐ、アーーーッ!!!」
 叫び声がイルミンの森中に響き渡り、ギャァギャァとカラスも逃げるように飛び去った。
「何よ、失礼しちゃうわね。マンドゴラちゃん、食べる?」
 得体の知れない黒い物体の接近に、マンドラゴラたちはふるふると震え、森の奥へ逃げてしまう。
「よせ、怯えているじゃないか」
 誰彼構わずブラッククッキングを食わせようとする様子に、磁楠が呆れ顔をした。
「食べてみもしないくせに、何が分かるのよ〜」
「そいや、カティヤさんたちは、オレらより長く生きられるんだっけか?」
「んー…個人差はあるけど、そうかしらねぇ」
「偶に思うんや。いつまで、こうやっていられるんやろうって」
 超えられない種族の差を口にする陣のセリフに、無差別に料理を振舞おうとしていたカティヤさえ口を閉ざした。
「きっと…間違いなくオレらは、アウラさんより先に寿命で逝っちまうでしょう。それが凄く申し訳なく思う。でもオレらがじーさんばーさんになっても、茶飲み話に通いますんで。その時が来るまで、よろしく頼んますわ」
「陣…そなた……」
「ねぇ、アウラさん。今さ、じじくさいって思った?ねぇ、思わなかった?」
 しんみりとした空気を、リーズが一瞬にして粉砕してしまう。
 その言葉に仲間たちはたまらず、込み上げてくる笑いに耐える。
「ぷっ、…ごほん。リーズ、真面目な話しの時はやめてやれ」
「だってなんか最近さ、アウラさんと真面目に話してる時、笑いの要素のが勝っている気しない?」
 モーントナハトタウンのクリスマス市の時も、着せ替えさせられたままシリアスな言葉を口にし、全てが台無しだった。
「おお〜い、ちょっとそこのお嬢ちゃん。今、オレって普段着やろ?何で酷いことしてくれてんのかなー?」
 盛り上がりに水を差す彼女のもみ上げを、力いっぱいぎゅーっと引っ張ってやる。
「いたたっ!陣くんにシリアスはもったいないもんっ」
「そーですよね。だって陣さんですもん」
「ちょ、オレの認識それ!?」
「押したらコントを言い始めるということかのぅ?」
「い、いや、スイッチなんかどこもないっすよ!…ぶへっ!?」
 ぶんぶんとかぶりを振り否定するが、ぶにっと鼻を押されてしまう。
「ほら、陣くん何か言わないとー」
「だからオレの鼻はスイッチじゃないっつーのっ。もし、オレの鼻がスイッチだったら磁楠の鼻もやろ」
「は?私は関係ないだろ、小僧」
 嫌な予感がし、妖精からさっと離れる。
「ほう、そなたの鼻を押せばよいのか?」
「どーぞどーぞ、押してやってや」
 いつもやられっぱなしの役割だから、たまには他のやつがやられてしまえばいい。
 磁楠を羽交い絞めにし、ご自由にどうぞの状態にしてやる。
「や、やめ…。ぷぎゅっ」
「面白いのぅ」
「歌菜、妖精ってこういうやつだったのか?」
「えっと…うーん」
 アウラネルクの姿を見たとたん、水竜が酷く嫌そうにしていたのはこれが理由だったかと、今更ながらに思った。
「(アウラさん。縁があれば、またどこかで…会えるっすよね)」
 あと何年、こうしてアホなことをやっていられるか。
 陣は楽しげに笑う妖精の姿を見ながら、日々の平穏の大切さを感じたのだった。