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【祓魔師】アナザーワールド 2

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【祓魔師】アナザーワールド 2

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第11章 AfteWorld_何年ぶり?仕事で取り残されすぎたハロウィン

「ここでハロウィンを過ごすって、いつぶりかな…」
「遠い目してますよ、北都」
 お菓子のブランコ乗って揺れているパートナーの肩を、リオンがつっつく。
「うーん、しばらく息つく暇がなかったからだね」
「今日はいっぱい遊びましょう!えっと…」
 リオンは回りをきょろきょろ見つつ、手元をぐーぱーさせる。
 何をしたいのか分かり、北都は犬耳をぴょこっと生やしてやった。
「い、いいんですか?」
「まぁね。たくさん頑張ってくれたご褒美かな?」
「ありがとうございます♪わぁ〜、ふかふかですねぇ、あたたかいです!」
 可愛らしい犬耳をもふもふと触る。
「なぁ、リオンだけやる気か?」
 ワインのゼリーを口にしながら、ひょっこりと顔を出したソーマが、北都の肩に片腕を乗せて顔を近づけた。
「う…。しょうがないな…。痛くしないでよね」
「わかってるって」
 いつものさじ加減でやればいいんだろ、と彼の首筋に噛み付いた。
「ソーマさんも楽しそうですね。僕も楽しいですよ♪」
「ねぇリオン。絶対、お菓子食べながら触らないでよ」
 クリームたっぷりのシュークリームを口にし始めた彼を、じっと見上げた。
「お、そしたら俺が…」
「何?」
「ちょ…、なんで本持ってきてるわけ?」
 おもむろにハイリヒ・バイベルをチラつかせる北都の手元を見る。
「んー、ソーマが余計ないたずらしてこないようにかな」
「え〜。今日はいたずらしていい日なんですよ!」
「リオンってさ、本当に純真だよね」
「どういう意味ですか…?」
「何でもないよ。リオンはずっとそのままでいてね」
「はい♪」
 何のことかさっぱり分からないものの、北都がそう言うならとにっこりと笑顔になり、今度はジェラートに手をつけ始めた。
 


 子供も大人も大好きな甘いイベント。
 1年に1度のお菓子祭りと言っても違和感のないもの。
 特に、クマラにとっては、365日でビックイベントだった。
「おかしくれないとー、いたずらしちゃうぞ〜♪」
 座敷わらしのような着物姿ではしゃぎ回り、エースの服を掴んでお菓子をねだる。
「はいはい…キャンディーでいいか?」
「やったー!うまうま〜」
 キャンディー棒の飴を、さっそく嬉しそうにぺろぺろ舐める。
「まったく。これが最近まで命がけの任務をしていたやつに思えないな…」
「そう言ってもね、常に命なんてかけるなんてごめんだよ」
 運命に関わることならべつだが、そんなものそうない。
 しばらくは休みたいという口ぶりで言う。
「メシエ…だから列車の時…」
 彼が堂々と昼寝していたことを思い出し、エースが疲れたように嘆息する。
「アーリアも楽しんでいるかい?」
「えーとね、いろいろ食べたいけど。ちょっとずつでいいな。マスター、これ食べておいてね♪」
 彼に食べ残したわたあめを押し付け、さっさと別の出店に行ってしまった。
「ちょ、ちょっと。他の食べてからにしようね!って、聞いてないや…」
 食べ切れなかったらクマラにでもやるか、と肩で息をついた。
「ほぉ〜。花の魔性もお祭り大好きなんだな?」
「―…あのな、彼女の名前はアーリアだって」
「こ、こええな、そんな怒るなよっ」
 むっとするエースに気圧され、カルキノスがたじろぐ。
「第二の白夜叉になるかもな」
「白……何か言ったかい?」
「ほう。俺も今聞こえたが、気のせいか?」
「や、やめろって。そんなキレんじゃねーって!!ァアアーーッ」
 その後、カルキノスの姿を見たものは、しばらくいなかった。
 後に、ケーキの中にドラゴニュートが目撃されたという…。



「そんなこんなで、カルキの未来は進むのだった♪なんてね〜」
 見てみぬフリをしていたルカルカは、巨大ケーキを見捨てて離れていった。
「恋人ウォッチャー・ルカは、そっと見守らなければならい2人がいるの!んふふ〜」
 そう言いながら足取り軽くパートナーの姿を探す。
 予め待ち合わせポイントをウォッチングしていたため、すぐに見つけることができた。
 お菓子の家の椅子に腰をかけた淵が、誰かを待っているかのように、そわそわと落ち着きのない態度をしていた。
「淵さん、待ちましたか?」
「い、いや、今来た所だっ」
 待ち人を目にした淵が、さっと立ち上がった。
「お話があるということでしたわね」
「あぁ…。(静まれ、俺の鼓動!)」
 強敵を前にするかのように、脈打つ心臓の音を鎮めようと深く息をつく。
「オメガ、英霊の俺なら永遠を共に歩める。寂しい思いも不安な思いもさせぬよ。オメガを幸せにすると誓おう」
「幸せ?淵さんは…?」
「いや、一緒に俺もだ。俺と幸せになろう。…(言うんだっ。今、言わぬと2度目は来ぬかもしれん!)」
 彼女の手を取り、最後の言葉を紡ぐため、また一息ついた。
「―…結婚を前提として、俺とつきあっては貰えぬか?」
「えっと…」
 考えるそぶりを見せるオメガの様子に、もしかしたらだめかもしれない。
 落胆しかけた時…。
「結婚とは、淵さんが言っていた気になる人同士が…するものですの?」
「あ、あぁそうだ」
「―……はい。分かりました」
 少し間をおき頷く彼女の姿に、一瞬何の返事だか分からなかった。
 が、すぐにそれが答えなのだと分かった。
 困るように時折、視線を外す仕草を見て、やっと手に出来たと確信できた。
「末永くよろしくな…」
 恋人の額に軽くキスをし、永遠の誓いをたてた。