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アーデルハイト
イルミンスール魔法学校。
いくつもある魔法実験室のひとつで、アーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)が大ナベに入れるキノコを選定していると、七尾 蒼也(ななお・そうや)が訪ねてくる。
「アーデルハイト様、お願いしたい事があるのですが、お時間よろしいでしょうか?」
ロリ魔女は、蒼也が持つ色紙とペンを一瞥する。
「ふっ、アムリアナ陛下へのお言葉なら喜んで出そう」
「そこを何とか……え?」
予想以上にあっさりと引き受けられて、蒼也は戸惑う。その戸惑い顔に、アーデルハイトは「おや?」といった表情になった。
「ん? 女王陛下のお見舞いメッセージの話ではないのか?」
「いいえ、まさにその件で伺ったんです」
「むぅ、もそっと渋った方が重々しい貫禄が出せたかのう」
アーデルハイトはそう言いながら、色紙にメッセージを書き込みはじめる。
蒼也はメッセージに添える写真を撮る為、デジカメを準備する
「アーデルハイト様は立場上、メッセージを出しづらいのでは、と思っていたんです」
「私はアムリアナ様とは、ちょびっとばかりの知り合いじゃぞ。昔、世話になった知人が伏せっているから、励ますメッセージを送るだけじゃ。
それに文句を言うようなみみっちぃ奴らに、今後のシャンバラを動かすなんぞ不可能じゃな。……どれ、チーズ」
アーデルハイトはキメ顔で、カメラに写る。蒼也の提案で、メッセージにこの写真も添えるのだ。
デジカメをのぞきこんで映り具合をチェックするアーデルハイトに、蒼也は聞いた。
「砕音先生には考えがあるみたいだが、アーデルハイト様も何かお知恵はありませんか?操り人形にならなくても、何か生き延びる方法はあるんじゃ……女王の力を失っても、ジークリンデ個人として」
「うぅむ、現在のくわしい情況が分からん事には、なんとも言えぬがのぅ。
……そうじゃ。もしもの為に、これを持っていくがよいぞ!」
アーデルハイトは壁ぎわを覆っていたカーテンを勢いよく引いた。
「こ、これは……!」
部屋の壁には、何人ものアーデルハイトが立っていた。
彼女のスペアボディだ。
「あ、ありがとうございます」
蒼也は、脳内に浮かんでしまったアーデルハイトボディの女王をかき消しながら、礼を言った。
無事にアーデルハイトからメッセージ色紙と写真、さらにはスペアボディまで託された蒼也は、自分自身も女王へのメッセージをしたためる。
彼のパートナーの守護天使ラーラメイフィスが、とても心配して節制をし、また今回の活動にも献身的に協力してくれたこと。
またアイシャの為にも、ジークリンデには導き手として生きてほしいこと。
それら想いを込めた手紙をまとめ、蒼也は使節団に合流する為、空京へと向かった。
小柄とは言えアーデルハイトのスペアボディはなかなかの重さだったが、彼女の女王への想いを伝える為に、蒼也はなるべく丁寧にボディを運んだ。
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