校長室
東西統一記念ロイヤルガード合コン
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■□■6■□■ 彼方とテティスと、大切な人 そのころ、彼方の前には。 リョーコこと、諸葛亮著 『兵法二十四編』(しょかつりょうちょ・ひょうほうにじゅうよんへん)が、 風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)を連れて迫っていた。 「彼方ちゃん、好きな女の子とお付き合いする時に困らないように、 ここで特訓するのよ♪」 「ええっ!?」 「というわけで、わらわと恋愛のイロハを手取り足取り実践よ♪」 「そ、そんなことできわけないだろ!?」 「優斗ちゃんも特訓に参加してもらうから、恥ずかしがることないわよ」 「え!? 俺も参加するんですか!?」 生暖かい視線で傍観者モードだった優斗は、いきなり当事者として指名されて慌てる。 「彼方ちゃんのためよ」 「わかりました。 一肌脱がせていただきます!」 「なんでそうなるんだよ、一緒に抵抗してくれよ!?」 彼方は慌てるが、さらにそこに新手がやってきた。 東ロイヤルガードのマントを羽織ったアイナ・クラリアス(あいな・くらりあす)であった。 「彼方! 私とカップルになりなさい!!」 「ええー!?」 突然の告白に、彼方はパニックになる。 実は、アイナはテティスと彼方の恋を応援するために、 パートナーの風祭 隼人(かざまつり・はやと)から5万Gカツアゲして、 疑似カップル作戦を実行しているのだった。 ★☆★ 「『今回の合コンで彼方とデートしたいから……5万G寄越せ!』 ってアイナさんにカツアゲされました。 テティスせんせい……アイナさんへ厳重注意をお願いします!」 協力しないとアイナに殴られるため、 隼人はテティスを煽りに行っていた。 (まあ、このこと自体は嘘じゃないし) 「か、彼方……」 テティスは顔面蒼白になり、彼方を探し始めた。 ★☆★ 「冗談じゃないー!」 「あっ、待ちなさい、彼方ちゃん! まずは、手のつなぎ方からよ!」 彼方は、リョーコ達から走って逃げた。 ★☆★ そんな、彼方の前に、 東ロイヤルガードのマントを羽織った人物が現れた。 沢渡 真言(さわたり・まこと)だった。 「少しお話しませんか?」 「ああ、いいぜ」 やっとまともな人物に出会えて安心した彼方は、うなずく。 「彼方さんは、どうしてロイヤルガードになったんですか?」 「俺か?」 真言の真剣な面持ちに、彼方は姿勢を正す。 「私がロイヤルガードになったのは、 個人的ではありますが、 大好きな人と、大好きな場所でのひとときの平和を守りたかったからです。 そしてそれを守るのが自分の手でありたいと思ったから」 「ああ、そうだな。 俺も、同じような感じだ。 大切な人、大切な場所を守りたいと思った」 彼方は力強くうなずいた。 「やっぱり、彼方さんもそうだったんですね。 安心しました」 真言は、そういうと、ロイヤルガードのイヤリングを外した。 「よろしければ、疑似カップルになりませんか? お互い、合コンで恋人を作りたいわけではないと思いますし。 カップルの証を見せろと言われた時のために、 お互いのイヤリングを交換するというのはどうでしょう」 「そうか、疑似カップルか……」 彼方が考え始めた時。 「彼方さーん!」 真言とおなじイルミンスールの東ロイヤルガードである ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)が、突っ込んできたのだった。 「彼方さん、このままじゃ、テティスさんとの仲を邪魔されちゃいますよっ。 引き裂かれないように、私と疑似カップルになりましょう!」 「え、ソアと!?」 その様子を、物陰から見る者がいた。 ソアに男性が近づかないように変装して見張っていた雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)であった。 「俺様は雪国ベアなどではない! 合コンの守護者、ゴーゴンだ!」 なお、この変装は、 「ところで、ごーこんってなんでしょうか? 髪の毛が蛇な女の人ですか?」 「ご主人、それはゴーゴンだぜ」 という、ソアとベアの会話に由来する。 「って、ご主人が彼方に近づいたと思ったら真剣な表情で手を取って…… 待てぇコラアァーッ!」 ベアは、蛇女の被り物をつけたままダッシュする。 ★☆★ 「さあ、彼方さん、光る箒に乗ってください!」 「いや、その、俺……」 ソアに半ば強引に光る箒に乗せられる彼方だが。 そこに、ベアとテティスと、三笠 のぞみ(みかさ・のぞみ)が現れた。 「あっ、テティスさん! 彼方さんは私がお持ち帰りしちゃいますよー! 引き止めるなら今の内ですよー!」 「ソアさんが? ……なら、安心かも」 隼人にたきつけられたものの、テティスは安心し始める。 「こら、彼方! おまえ、テティスがいるくせに、ご主人に何してんだ! このロリコン!」 「どうして俺が怒られるんだよ!?」 ベアに怒鳴られて、彼方が叫ぶ。 (えー!? 相手にしてくれないなんて? こ、困りましたね。こうなったら!) 「が、学生にあるまじき行為もしちゃうかもですよー!? 引き止めるなら今の内ですよー!?」 「って、意味わかって言ってんのか、ご主人―!?」 ソアにベアが悲鳴に近いツッコミを入れる。 テティスは、その様子を見て苦笑する。 ★☆★ 一方、のぞみと真言は。 「さっきの話、聞いてた」 のぞみは、幼なじみに、彼方との会話についてのことを言った。 「そうですか。 ……いつ、切り出そうかと思っていたんですが」 「うん、あたし、応援するよ。 だって……」 「はい。私のご主人様はのぞみです。 たとえ、ロイヤルガードになっても」 真言は、外していたイヤリングを耳に再びつけて、微笑した。 ★☆★ そこに、つぁんだを捕縛した小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が、 コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)と一緒にやってきた。 「【正義の西シャンバラ・ロイヤルガード】小鳥遊美羽、参上! 彼方とテティスはアーデルハイトの「リア充爆発しろ」の呪いを受けて、 引き裂かれようとしていたのです……。 ってことだけど。 2人とも、引き裂かれるほどイチャラブしてないじゃないの! 引き裂かれるカップルとして、いやいや合コンに参加するというなら、 その前にカップルらしくイチャイチャしてみせなさい! さもないと、極悪商人のつぁんだを、 テティスの愛読書・恋愛指南書で殴るわよ!」 「痛い! もう殴ってるじゃないか!」 「きゃー!? 恋愛指南書って!?」 殴られるつぁんだと、恋愛指南書を愛読書にしていることをバラされたテティスが悲鳴を上げる。 実はこれは、彼方とテティスを後押ししたいという、 美羽の作戦なのだが、もはやそれどころではなくなっていた。 「がんばって、彼方」 コハクも、美羽に想いを寄せているものの、そのことを打ち明けられない恋愛初心者として、 彼方に共感を抱いていた。 そのため、ソアから逃れていた彼方にそっと耳打ちして、背中を押す。 「うわあっ!?」 「きゃああ!?」 彼方はテティスの前に躍り出たが、そのまま転んでしまい、押し倒す形となってしまった。 「あ、あれ?」 自分の意図していない出来事にコハクは固まる。 「やればできるじゃない、彼方!」 「痛い、痛い!」 つぁんだを本の角でバシバシ殴りながら美羽は言う。 「そうね、私は彼方を信じていたわ!」 「ひどい、彼方ちゃん、わらわとは遊びだったの?」 そこに追いついたアイナとリョーコも口々に言うが、 彼方とテティスは飛びすさるようにして離れて、赤面して硬直しており、それどころではない。 「少しは進展したでしょうか?」 その様子を見てソアは言う。 「うう、ご主人―」 「きゃー、ベア、涙で蛇の被り物がグチャグチャになって恐いですー!?」