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リアクション
chapter.15 おっしゃれおしゃーれ♪……5
「もう我慢ならん! この私が直々に相手をしてやる!」
とうとう痺れを切らしメルヴィアが直接対決する。
すると、彼女とともに騎兵科の教え子である藤原 忍(ふじわら・しのぶ)も銃を構えて前に出た。
「おまえひとりに良い格好させねぇよ。同じ騎兵科のよしみだ。俺も手ぇ貸してやるぜ!」
「同じ騎兵科だと……?」とメルヴィアは忍の胸ぐらを掴む「おまえは私の部下だろうが、このクソ三等兵……!!」
「わ、馬鹿! 苦しいだろ、首を絞めるなっ!」
「誰が馬鹿だ、藤原ぁ!」
「二人とも頑張るにゃよ〜」
そんな二人を、ぷにぷにの肉球を向けて龍造寺 こま(りゅうぞうじ・こま)が応援する。
「大尉、落ち着いて。ほかの学校の奴らも見てるから。恥ずかしいから。ほら、落ち着いて」
同じく教導団所属のシャウラ・エピゼシー(しゃうら・えぴぜしー)が仲裁に入る。
「というか、藤原」
「あんだよ?」
「おまえ、上官に無礼すぎるぞ! この前もメルヴィア大尉を遠慮なくぶん殴りやがって、ありえないだろ!」
「あれは必要に迫られたからだって」
「必要に迫られてもダだっつーの! {?bold}あの奇麗な顔とおっぱいに傷でも付いたらどう責任とるんだ!」
「それは思ってても口に出しちゃダメな奴です」
親友のユーシス・サダルスウド(ゆーしす・さだるすうど)は熱の入るシャウラを止めた。
「……まぁともかく、藤原と一緒じゃ心配なので俺も護衛に付きますから」
「戦争嫌いの貴方がやる気を出すなんて珍しいですね」
「命令書一枚で送り込まれた月だが、俺は別に争いに来たわけじゃない。ただひとりの女性を護りに来ただけだ」
「それは軍人としての貴方ですか? それとも人として?」
「……さぁ、な」
しかし、護衛に付いたシャウラを、メルヴィアは怪訝な目で見ている。
「…………」
「その目の原因は察しがつきますけど、誤解しないでくださいよ。別におっぱいだけ見てるわけじゃないですから」
「そうです。彼はワイヤートラップで服を刻まれたり肌に食い込ませられたりするのを防ぐためここにいるのです」
「それは言っちゃダメな奴だってば、ユーシス!」
「……上官を性の対象にするとは不敬な奴だ」
「ご、誤解とは言い切れない部分もあるけど、ほんと根は真面目なんですよ、俺!」
ともあれ、三人は戦闘を開始する。
忍の弾幕援護とユーシスの放つ炎の嵐で牽制しつつ、メルヴィアとシャウラは道満に接近する。
「なに、今度の相手は軍人コント集団?」
「コント集団は余計だ!」
道満の鉄拳をシャウラは大盾で防御。防御重視の彼はナックルバズーカ・エレガンスもなんなく凌ぎきった。
そしてすかさず、メルヴィアは腕輪から斬糸を引き出すと、道満の身体をなんの躊躇もなく八つ裂きに切り裂く。
「!?」
けれど道満にダメージは通らない。
「なぜ、効かない!?」
「だから、それはあんたがダサいからよっ! というか、もういい加減この戦いのルールは覚えてちょうだいっ!」
「馬鹿なっ! これでも空京を歩けばスカウトに声をかけられることもあるんだぞ!」
「どうせキャバクラでしょ! デカパイを強調した服着てるからよ! もうなんていうか下品だわ!」
「わ、わたしが……、げ、下品……?」
「こ、こら! 大尉は下品じゃないぞ、こういうのはセクシーって言うんだぞ!」
シャウラは抗議した。
「というかスカウトってなんだそりゃ! 俺だって大尉に気軽に声なんてかけられないのに、マジ羨ま許せねぇ!」
「声に出てます、声に」
ユーシスは言った。
とか言っている間に、お洒落カーストがメルヴィアの精神を幼児退行させていく……!
脳裏に蘇るのは子どもの頃の思い出。孤児である彼女は彼女が引き取られたサーカスでの貧しい思い出だった。
かわいい服など勿論着れず、いつも穴の空いた小豆色のイモジャージを着ていた。
すると周りの子どもたちが冷やかすのだ。
やーいやーい、ボロジャージ、穴空きジャージのメルヴィアだー、と。
「ぼ、ボロじゃないもん。大人になったらかわいい苺柄の服とかいっぱい着るんだから。うええええん」
「た、大尉が泣いちゃった!」
「おい、オカマのおっさん! 女、泣かせてんじゃねーよ! 先生に言いつけるからなー!」
「ふ、藤原!? おまえも幼児退行してんのかって、昔から粗暴な子だったのかよ!」
「むかつくから服に落書きしてやろうぜ!」
「落書きするにゃ〜」
実はたまも退行してるのだが、もともと子どもっぽいので大して変わらないと言う。
「あんたたちも落書き!? ちょっとどういう躾されてんのよ、このクソガキども!」
げしげしと近付く二人を蹴飛ばす道満。
「……ぐすんぐすん」
「お、お願いだから泣かないで、大尉。苺柄の服買ってあげるから。今度デパートに連れてってあげるから」
「ほんとう?」
シャウラはなんとも言えない苦笑を浮かべつつ、よしよしと泣きじゃくる彼女の頭を撫でた。