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リアクション
大阪への里帰り
しばらくぶりの実家を前に、オルフェ・キルシュ(おるふぇ・きるしゅ)は感慨にふける。
家にいる時には何とも思っていなかったけれど、こうしてみると小さいけれどなかなか立派な家だ。玄関前には花がたくさん飾られていて、いつの間にか扉には可愛い鈴がつけられている。
「喫茶店に入るのか?」
パートナーの七科 六花(ななしな・りつか)に言われ、間違われるのも無理ないなとオルフェは苦笑した。
「ここが家なんだ」
「ここがぁ?」
六花が目を剥く。
実家からは頻繁に手紙やら仕送りやらを送ってもらっているが、六花と両親を会わせるのはこれが初めてだ。頑張りすぎる傾向のある両親が暴走しないように気を払わねば……と思いながら、オルフェはただいまとドアを開けた。
――途端。
「お帰り……おっ、相棒を連れて来ただと?」
待ち構えていたとしか思えない勢いで父親のウェル・キルシュが現れ、勢いを殺さずに六花に抱きついた。
「な、何だっ?」
「……いきなり抱きつくのは止めれ、父上」
既に手遅れかと思いつつ、オルフェはウェルを六花から引きはがした。
「ごめんなさいね、馬鹿夫がはしゃぎ過ぎで」
オルフェの義母、フィン・キルシュは身も蓋もなくそう言うと、そんなことしてドン引きされたらどうするの、とウェルに注意する。
「オルフェが相棒を連れて帰って来るとは思わなかったからな。ここは是非歓迎を示さねばと……」
「はいはい、ただいま戻りましたよ。ほら、六花も身構えるな。これ俺の実父だから」
挨拶で父親の反論を封じ込めると、いきなり抱きつかれてぴりぴりしている六花をオルフェは宥めた。
「せっかく帰ってきたんだから、家事を手伝ってもらおうかしら」
早速フィンがそう言い出したからオルフェは呆れる。
「相変わらず家事が壊滅的なのか、義母上」
「いいからいいから。あちらの話も聞きたいから、手伝いがてら話してちょうだい」
変に気を遣うのも良くないだろうと、フィンはオルフェと六花をせかしてキッチンへと連れて行った。
「……やっぱり片づけられないんだな」
ごたごたと色々なものがひしめいているキッチンに通されたオルフェは、十万近くする炊飯器を見つけて驚いた。ウェルは大阪で探偵事務所を開いているのだが、どうやら思っていた以上に実家の経営状況は良好なようだ。
その父親はと言えば、上機嫌で食事の準備をしている。
「何を作るんだ?」
気になって聞いてみると、ウェルは六花の方へと顎をしゃくる。
「さっき抱きついたときに確認したが、あの体格はあんまいいモン食べてないだろ。オルフェもどうせ野菜ばっか食ってんだろうから、今日は旨い大阪名物を食べさせてやる」
「確認って何だ!」
怒鳴る六花をよそ目に、ウェルはいかにも楽しげに夕食の準備を進めてゆくのだった。
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