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こどもたちのおしょうがつ

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第2章 かくれんぼ

「いーち、にーい、さーん、しーい」
 ログハウスの前で、鬼グループの子供達が、顔を両手で覆いながら数を数え始めた。
 残りの子供達は、わっと走り去っていき、隠れられる場所を探す。
「ごーお、ろーく、しーち、はーち」
「きゅーう、じゅっ。もーいーかーい」
 鬼グループの子達が大きな声でいうと「もーいーよ」という声が返ってくる。
「それじゃ、さがしにいこーぜ」
 鬼グループの子達は、一斉に走り出して、隠れている子達を探し始める。

「なんでしょうこれは……?」
 外見5歳のふじのちゃん(伊吹 藤乃(いぶき・ふじの))がやってきたのは、マシュマロハウスだった。ふじのちゃんは、小さな赤黒いシスター服を纏い、分厚い本を抱えている。
 本は、破壊神ジャガンナートを崇拝する者達の聖典だ。
 そんなふじのちゃんが最初に発見したのは隠れている子供じゃなくて、一枚の紙だった。
『あまいにおい。おいしそう』
 その紙には、子供の字でそれだけ書かれていた。
「はい、おいしそうです。でもたべるまえにすることがあります」
 とりあえずふじのちゃんは紙をぽっけにしまった。
「せっきょうをしますよ!」
 続いて、ふじのちゃんは本を開いて説教をしようとするが、子供化した影響で本の中身を読むことが出来なかった。
「えと、いまはできませんけれど、もうすぐせっきょうのじかんです! みなさんをさがしてせっきょうですよ!」
 何が何でも説教がしたく、ふじのちゃんは首を傾げている子供達の中に入り込み、室内にかくれんぼに参加している子が隠れていないかどうか、調べていく。
「だれもきませんでしたか?」
「こなかったよ」
 お菓子を食べていたミルミちゃんがそう答えた。
「おせっきょうなんてやだよ。いっしょにおかしたべよーよ」
 ミルミちゃんは室内のお菓子をちぎって、ふじのちゃんに差し出してきた。
「おかしは、せっきょうのあとです。でも、せっきょうのまえに、みなさんをさがしださなければなりません」
「だから、おせっきょうはやだってば」
「いいえ、せっきょうはひつようなんです。わたしはせっきょうをやりますよ」
 ふじのちゃんはお菓子には見向きもせず、部屋の中を探していくが、その部屋にかくれんぼに参加していた子供の姿はなかった。
「ここにはいないようですね。のちほどここでせっきょうをおこないますので、あなたもさんかしてくださいね!」
「おせっきょうはぜったいやー」
「しりもしないくせに、きょひはいけません。あなたにはぜったいさんかしてもらいますよ!」
 話がかみ合ってなかったが、ふじのちゃんはそれだけ言い残すとかくれんぼに参加している子供達を探しに、そのマシュマロハウスを後にした。

「おいでおいで」
 外見5歳、野球帽を被った半ズボン姿の男の子、きょんくん(鈴倉 虚雲(すずくら・きょん))は、ログハウスの裏に来ていた。
 最初は隠れる場所を探していたのだけれど、ペットのネコと合流してからは、冷えないためにと、ネコとじゃれあっていた。
「こたつでまるくなる? あとでいえのなかに、つれてってあげるよ!」
 体をなでなでしてあげると、ネコは「にゃー」と可愛らしい声を上げた。
「にゃーん」
「みーみー」
 その声につられたのか、森の中からも猫が2匹顔を出す。
 いずれの猫ちゃんも人間なれしているようだった。
「みんな、おいで! いっしょにあそぼうよっ」
 驚かさないように、ゆっくり近づいて、きょんくんは猫ちゃんたちの体や喉を撫でてあげる。
「にゃん」
「みぃー」
「ほらほら〜」
 拾った小枝をゆらゆら揺らすと、猫ちゃん達が前足を出して、戯れてくる。
「おっ、きょんくんみーっけ。てゆーか、かくれるじかんたんなかったかー?」
 鬼グループで、かくれんぼの言いだしっぺである、4,5歳児の姿をしたベリーショート、ツンツンヘアのたけるくん(五条 武(ごじょう・たける))が現れた。
「ん……あっ! わすれてたっ」
 猫ちゃんの可愛らしさに夢中になってしまい、きょんくんはかくれんぼに参加していたことを忘れてしまっていた。
「おまえ、ギターけってー!」
「ううううっ」
「ギターだから、おれのもちものとして、いっしょにいくぞー。うらぐちからなかにはいってさがすんだ!」
「わかったよぉ」
 きょんくんは猫を1匹連れて、たけるくんの後に続く。
 たけるくんは勝手口からログハウスの中に入っていった。