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第3章 料理とは新鮮さにもこだわるもの!story2
「ミルクってどれくらいいるの?」
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は台車でもあった方がいいのかな、というふうに・・・ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)に聞く。
「今回はたくさん食べそうな人っていなさそうですし。3リットルあればたりると思いますよ」
「ちょっと重そうだけど。この距離なら手で持っていけるかも」
「では、お願いしますね」
「うんっ」
絞りたてのシャンバラ山羊のミルクがたっぷり入った瓶を、割らないようにそっとクーラーボックスに入れる。
ボックスを両腕で抱え、イルミンスールの近くにある街で仕入れたミルクを、コンテスト会場へ運んでいく。
「ふぅ〜・・・。テーブルの傍に置いておけばいい?」
「えぇ。ありがとうございます、美羽さん」
運んでもらったミルクでバニラアイスを作り始める。
「2人っていつもそういう服が好みなんですぅ?」
丈の長い浴衣姿のベアトリーチェと、丈の短い浴衣を着ている美羽を見比べるようにエリザベートが言う。
「えっと・・・あまり短いのはちょっと・・・っ」
はてなと疑問符を浮かべるように聞く少女に、恥ずかしそうに顔を俯かせる。
「美羽さんは?」
「動きやすいし、ミニってかわいいじゃない?」
「そうなんですぅ?あ、こっちデザート系は洋風なんですねぇ〜」
「ヒントは冷たいものですよ」
何を作っているのか聞きたそうな少女に、ベアトリーチェはすぐに教えてしまってはつまらないと思い、ヒントだけあげた。
「う〜ん・・・それって飲み物ですかぁ〜?」
「いいえ、ハズレです♪」
「むぅ・・・。分かるのはこの香りくらいですねぇ。私の好きなものを使っても、審査に有利になるわけではないですよぉ〜」
「えぇ。こういう勝負な平等でないといけませんからね」
にこっと微笑みを向け、2つのトレイを冷凍庫へしまう。
「―・・・ふぅ。後はアイスが出来るのを待つだけですね」
離れていくエリザベートから美羽へ視線を移し、ぐーっと背伸びをする。
「少し暑くなってきたし。冷たいデザートも狙い目よ」
「当日が楽しみです」
喜んでもらえるといいな、と思いつつ・・・使った道具をキレイに洗い片付ける。
「兄ぃ、小豆洗ったよ」
ヴァルキリーの集落 アリアクルスイド(う゛ぁるきりーのしゅうらく・ありあくるすいど)は流し台の上で水きりをして、本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)に小豆を渡す。
「ありがとう、アリア」
それを渋抜きし、おたまでアクを丁寧に取る。
「もう火を止めてもよさそうだな」
コンロの火を消し、菜箸でひと粒摘んで潰ぶしてみると、ほくっと柔らかく潰れた。
ザッと水を切りをして、こし餡と粒餡用に分ける。
「お砂糖、軽量しておいたからね」
「このカップに入っているやつだな?それじゃ、先に粒餡を作るとしよう」
小豆と水を入れた鍋に、アリアに計量してもらったザラメ砂糖を加えて水で煮る。
「結構、粒を残すんだね?」
「あまり潰すと食感を殺してしまうしな。どこまで粒を残しておくかがポイントだ」
潰しすぎないように木ベラで練り上げる。
分けておいたもう半分はこして、ザラメと一緒に水で煮ながら練る。
「餡が2種類ありますねぇ〜」
「ん?あぁ、今日は仕込みだけなんだ」
デジカメを向ける校長をちらりと見る。
「この前作っていただいたクロカンブッシュ、とっても美味しかったですぅ〜。今回も1種類の味じゃないみたいですし。期待してますよぉ〜♪」
「まぁ、いつも通り作るくらいだ」
期待の眼差しを向ける校長にそう言うと、作業に戻り餡の粗熱を取って冷ます。
「さて・・・。今日の仕込みはこれで終わりだな」
「えっ?兄ぃ、チリビーンズまだ作ってないよ」
「―・・・あっ。中身を3種類、用意するんだったか?」
「うん、そうだよ!」
「よし。今から用意しても、十分間に合うな」
「ここはボクに任せて。兄ぃには負けるけど、ボクだって料理は得意なんだからさ」
「1人で大丈夫か?」
「もうっ。ぼくだけで出来るってば。大丈夫だから、兄ぃは休んでいて」
椅子にふかふかの座布団を敷き、無理やり涼介を座らせて休ませる。
「じゃあ、お言葉に甘えて休ませてもらうか」
「そこでゆっくりくつろいでいてね。よーし、頑張って作るよ」
アリアは浴衣の袖をまくると、食材につかないように紐で結び、チリビーンズ作りにとりかかる。
まな板にゴロンと置いたニンニクを、包丁で微塵切りにする。
ザッザクザクザク。
「えっと、オイルは・・・あった!」
カバンから取り出したオイルのボトルの蓋を、きゅぽっと開けてニンニクを炒める。
牛挽肉の表面が少し焼けてきた頃合を見て、塩と胡椒で味を調える。
「あ、玉葱も切らなきゃ!」
微塵切りにして加え、木ベラで炒め合わせる。
ジュゥー・・・ジュゥウー。
「う〜ん・・・いい匂い♪」
食欲をそそる香ばしい香りが漂う。
水で戻したインゲン豆と、チリパウダーなどの香辛料をサラサラとかけ、スプーンですくった塩を加えてよーくなじませる。
トポポポ・・・。
円を書くように水と白ワインを注ぎ入れ、ホールトマトを加えてコトコトと煮込む。
「これくらいの辛さなら大丈夫かな?それとソーセージを準備して・・・っと」
小皿にちょこっと乗せて味見をした後、ソーセージも用意する。
「兄ぃ、完成したよ。コンテストで食べてもらうのが楽しみだね」
「そうだな。具を屋台の後ろのテーブルに置いておこうか」
当日すぐ焼き始められるように、あんこ巻きを作る準備をしておいた。
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