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地球に帰らせていただきますっ! ~3~

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地球に帰らせていただきますっ! ~3~
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リアクション

 
 
 
 ■ シャングリラへ ■
 
 
 
 織崎 愛から連絡を受け、如月 正悟(きさらぎ・しょうご)は日本へと渡った。
 正悟の家族は現在も意識不明のまま病院のICUに入っている。織崎はその費用や色々なことを融通し、代わりに正悟に過去色々させていた組織とのパイプ役だ。
 その織崎からの連絡となれば、あの組織からの裏の依頼なのだろうと予測はついた。
 パートナーを連れてゆくつもりはなかったから、何気なしにふらっと出てきたのだけれど、それにフォルテッシモ・グランド(ふぉるてっしも・ぐらんど)が着いてきてしまった。
 途中でまこうとしたけれどまききれず、正悟は仕方なくフォルテを連れて織崎と会った。
 
「正悟君、日本で会うのは久しぶりね。最近はいろいろ活躍している様子だし、おねーさんはびっくりよ」
 そう言って織崎は隣にいるフォルテッシモに目を留める。
「おとなりの子は彼女?」
 それに正悟が答える前にフォルテッシモが言った。
「織崎様、フォルテはマスターの彼女じゃありませんよ。フォルテはマスターの所有物です」
「あら……ふふっ」
 楽しそうに笑うと、織崎はさてと正悟に話を切り出した。
「今回の『お願い』の場所はシャングリラと呼ばれる孤児院よ。貴方のお友達が以前暮らしていた所みたいね」
「シャングリラ……確か田中、もとい牙竜たちのいた施設か……」
 正悟がシャングリラと関わるのは今回が初めてではない。あそこの神父らにはとある依頼をこの組織から受けた時に襲撃され、半殺しにされかけている。
「そう。あの時にちょっかいをかけて大がかりなテロなんて起こしてくれて、貴方や神父を出し抜いた組織……『議会』のことは当然覚えているわよね? その情報をシャングリラと交渉して手に入れてきて欲しいの」
 織崎は事も無げに言った。
「私だと返事がつれなくてね。代わりに行ってきてくれない?」
 一応問いかけの形を取ってはいるけれど、家族を体のいい人質に取られていては正悟に否は無い。
 織崎から組織が得ている『議会』の情報を仕入れると、シャングリラへと向かった。
 
 
 
「どうも、『お久し』ぶりです。普段は武神には世話になってます」
 丸腰の普通の恰好で正悟は孤児院を訪れた。
 以前は争い、酷い目にもあったけれど、知り合いのいる施設の職員で家族同然なら、今回のネタなら争う必要性はない。
 神父も腹の内では何を考えているのか知れないが、普通の訪問者を迎え入れるように正悟とフォルテッシモを教会の奥の小部屋に案内してくれた。
「今回訪問させていただいたのは、神父様たちと俺が争った時にもちょっかいをかけてきた連中……『議会』の情報を交換、共有したいと思ってのことです」
 小細工を弄することなく、正悟は率直に用件を切り出した。
 織崎からもらった情報も神父には隠さずオープンにし、誠意を示す。どのみち、織崎が明かしたからにはこの情報は相手に知らせても良いと組織が判断しているのだろうし。
 情報料も糸目を付けずと織崎は言っていたから、組織としてもそろそろ本気を出すつもりなのだろう。
 それは正悟としても願ったりのことだった。
「議会はぶっ潰します。だからその為の情報を下さい」
 議会を殲滅すること。それが、出さなくてもいい被害を以前に出してしまったことに対しての、正悟としてのケジメのつけ方だった。
 
 
 そうして正悟と神父が話している内容は、フォルテッシモには詳しくは分からなかった。
 何かが起きるのかも知れない。
 何かを起こそうとしているのかも知れない。
 けれど、どんなことがあってもフォルテッシモは正悟の命令に従うだけだ。
 
 ――私は音を響かせる。
 ――奏者たるマスターの想いを知らせる為に
 ――名前の通りに非常に大きく強く打ち鳴らすの
 その為にフォルテッシモはいる。
 ――だから、フォルテはマスターの言われるがままに動く道具なの
 正悟が迷っても、間違えても、どんなことがあってもずっと傍らにいる。
 不穏な話し合いをしている先に何があろうとも。
 そんな決意を胸に、お互い底に何かを秘めつつも和やかに交渉する正悟と神父をフォルテッシモは見守り続けるのだった。