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地球に帰らせていただきますっ! ~4~

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地球に帰らせていただきますっ! ~4~

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 ■ 地球の妹 ■
 
 
 
 たまには帰ってくるのも良いかと思い、高崎 悠司(たかさき・ゆうじ)はふらりと地球に降り立ったのだが、こちらはこちらで色々と面倒そうだ。
「まー、シャンバラがどうなるかでわりとすぐ経済傾くからなぁ。死ぬ奴はすぐ死ぬか」
 あっさりとそう呟いてから、悠司はふと心配になった。
「これじゃ、昔の家がそのまま残ってるかも結構怪しいか?」
 悠司が地球にいた頃は、父親は仕事でほぼ家におらず、母親は宗教にはまってこちらも同じく家にほほいなかった。
 唯一家にいたのは一つ年下の妹の高崎 悠香だけだが、それもどうしているやら。
 まあ、無いなら無いでそれを確かめるのも良いかと、悠司は実家のあった場所に行ってみた。
「お、残ってるっぽい」
 記憶の通りの実家があるのに感心しながら悠司はチャイムを押した。
「はーい」
 けだるげな声がして、おっくうそうな足音が近づいてくる。
 そしてがちゃりとドアを開けたのは、水商売風の派手な女性だった。
 悠香はまだ高校生のはず。ならばこの派手なお姉ちゃんは一体誰だろう。
「……あーっと、ここ高崎さんのおうちじゃ?」
 家は残っていても中身は引っ越してしまったのかと悠司が言うと、しどけない姿で眠そうにこすっていた女性は悠司の顔を見直した。
「って、あれ? 悠司?」
「マジで悠香かよ……。ってか、呼び捨てすんな」
 まさかと思ったけれど、と悠司の口からため息が漏れる。
「妹の顔忘れるとか失礼ねー。それともあんまり可愛くなったからびっくりした?」
 にっ、と笑ってみせるその顔は、よくよく見れば確かに妹の面影がある。しかしどう見ても高校生には見えない。
「自分で言うか、そーゆーコト」
「冗談だって、引くなよもー。ほら、玄関開けっ放しだと寒いから、入って入って。あ、ちゃんと鍵は閉めといてねー」
 悠香は手をひらひら振って玄関を示すと、廊下を戻り始めた。
「誰かと思ったら悠司だったとはねー。バイト明けで寝てたとこだから、新聞の勧誘だったらぶん殴ってやろうかと思ってた」
「バイト明け……」
 時間は昼近く。
 この時間帯にバイト明け、そしてこの派手な外見からいくと怪しげなバイトをしていそうだ。けれど、自分が口を出すことでもないかと、悠司はそれには触れず、妹の後について歩きながら両親のことを訊いてみる。
「あいつらは? 正月も気にせずお国のためと世界のために頑張ってんの?」
 悠司たちが子供の頃、親は良くそう言って2人を宥めていた。何がお国のためで何が世界のためなんだか分からなかったけれど、親がそう言うのだからと、納得していたあの頃……。
 食べる物に不自由しない時点で、それなりに幸せだったのだと思うし、自分より不幸な奴は五万と居るだろう。けれど、自分たちからすれば興味ないことをやってるという事実は変わらない。
「正月? あの人たちが正月なんかにかまけてる余裕あるわけないじゃん」
 悠香は鼻で笑った。
「けど、兄貴のほうがあの人たちよりよっぽど世界のために働けてる。風の噂で聞いたよ。世界が滅ぶとかだったらしいじゃん。そんなのに関われるとか夢みたい。あたしみたいな不良がそんなこと出来たら、あの人たちはどんな顔するだろう」
 そう言った後、悠香は少し寂しげに呟いた。
「……でも、あたしは選ばれなかった」
 悠司は15の時にパラミタに行けた。けれど妹はまだここにいる。面倒臭い話だと思う。
「しかし、意外だねぇ。そんなバイトしてんなら、家出てってるかと思ったぜ」
「行きたいけど、誰も来てくんないのよ」
「いっそ、改造手術受けて強化人間になっちまったらどーだ?」
 試しに言ってみると、悠香は振り返ってぷんと頬を膨らませた。
「やーよ、何かそれって負けた気するじゃない」
 外見は派手に変わってしまったけれど、そういう負けん気の強さは悠司がこの家にいた頃の妹そのままだ。
「契約できるならどんなオッサンでも文句言わないんだけどなー」
「んなこと言って、いざ契約したらもっと恰好イイ奴が良かったとかぼやくんだろうに」
 もし自分が選ばれずにこの家に残り、妹がパラミタに行ってたらどうだったろう。軽口を叩きながら、ふと悠司はそんな益体もないことを考えるのだった。