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忘新年会ライフ

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―第三章:裏方と警備員達―

 ちびあさにゃんに【ナーシング】で治療を受けたセルシウスは、額に大きな絆創膏を貼り、現場に復帰していた。
「蜂蜜酒が完売するのと、私の体が滅び去るののどちらが早いのだろうか……」
 今またフロアに蜂蜜酒の販売のために赴こうとする彼の足取りはやや重い。
「情けないな、エリュシオンのセルシウスともあろう者が」
「むっ? 誰だ!?」
 セルシウスの前に立つのは、毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)である。
 不敵なドSの微笑みを見せた毒島は、セルシウスに言う。
「しかし、蜂蜜や蜂蜜酒の健康への有用性を広めようとした事には、医者兼薬剤師である私も心から感心する」
「む……」
「そう警戒するな。私達は、その蜂蜜酒の販売を手伝うために来たのだよ……ヒック」
「ヒック? いや、それより、私達とは誰の事だ?」
 毒島の背後から二人の人影が現れる。
「おぉ、セルシウスが蜂蜜酒が売れなくて泣いてるって聞いたからなぁ、俺様が実演販売してやるぜーっ!」
「ひゃっはー、いらっしゃいませなのだ♪ 蜂蜜酒をいっぱい売ると、セルシウスさんから特別ボーナスが出るって話なので、頑張って売込みするのだ〜!」
 二人の人影は、ゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)屋良 黎明華(やら・れめか)。奇しくも三名とも波羅蜜多実業高等学校の生徒たちである。
「と、いうわけだ。蜂蜜酒の販売、私達に任せてみるがいい」
 セルシウスの中に、グッと込み上げる熱いものがあった。思えば、異国の地で『友』と呼べる者達が少ないセルシウスである。人の親切が心にしみるのも無理はない。
「貴公ら……感謝する!!」
 こうして、セルシウスは協力を申し出た三人と共に、蜂蜜酒を売る事になる。波乱の幕開けとも知らずに……。


「前に来た時とは結構違ってきてるんだな」
 店奥の端のひっそりとした席についたラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)が店内を見回す。彼は大学の研究を修行を終えた帰りである。
「おぬし、以前も来たことが?」
 ラルクの前に座った秘伝 『闘神の書』(ひでん・とうじんのしょ)が尋ねる。
「ああ。前来た時は何か荒くれ者が居たんだが、今は客層が普通のサラリーマンだったりするのな。……ってな訳で俺達は食べ飲み放題プランで頼むぜ!」
 オーダーを取りに来た雅羅はラルクと闘神の書を見やると、
「よく食べそうね、あなた達は」
「ああ。食べ飲み放題なんてまさに天国じゃねぇか!」
 豪快に笑うラルク。
「はい。それじゃ、そこのメニューが食べ飲み放題のオーダーだから、その中から注文してね」
「わかった。じゃ、まずはビールだ! ……ん?」
 オーダーを書く雅羅の顔を見たラルクが首を傾げる。
「雅羅。おまえ、今日は何か随分血色がいいな? 飲んでるのか?」
「私、未成年よ」
「そっか……俺の気のせいか……」
 雅羅が戻っていく途中、客席誘導をしていたちびあさにゃんに、何かを書いた紙を見せられる。
「ちょっと、ごめんなさいね」
「ん?」
 ラルクの前に再び雅羅が立っている。
「そこのテーブル、4人掛けでしょう? 店内が混み合ってるから、他の席が空くまで今新しく来たお客さんと相席して貰えないかしら?」
「闘神、どうする?」
「我は別に構わぬが……ラルクと我の酒豪二人を相手に出来る人物がいるのか?」
 闘神の書が傷跡のある頬を歪めて笑う。
「言うじゃねぇか! オレも酒は結構強い方だぜ?」
「わたくしはどちらかと言えば苦手ですけど……」
ラルク達の席に相席となったのは、シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)リーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)であった。