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【ダークサイズ】戦場のティーパーティ

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【ダークサイズ】戦場のティーパーティ

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5 そしてパラミタの月へ

「……おや? ブルーズ、あれはなんだろう?」

 黒崎 天音(くろさき・あまね)は、月の港上陸に向かう捜索隊の円盤を護衛中、大きな塊が火花をまきちらしながら、近づいてくるのを見つけ、ブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)に問いかける。
 ブルーズも天音が目を向ける方向を見て、

「なんだあれは? 我にもわからん。本隊に問い合わせてみるか?」
「そうだな、そうしよう」

 天音はアルカンシェルに通信し、向こうに見えるのは敵なのか、味方なのか、と問う。
 アルカンシェルからの返信によると、

『捜索隊所属ではないが、ダークサイズとかいう者たちらしい。要塞はラピュマルという何ともふざけた名前のようだ。彼らの目的はよく分からないが、ともかくも敵の一部を受け持って交戦してる。捜索隊からもわずかだが援軍を送った。まあ、援軍といっても彼らの独断で、こちらも事後報告を受けたのだが』

 勇平や涼介が報告しておいたのだろう、アルカンシェル側にも多少の情報が行っているようだった。

「ダークサイズか。ずいぶんと懐かしい名前じゃないか、天音」
「へえ、あのダークサイズか。いつの間にか浮遊要塞を手に入れていたなんて……」

 はるか以前にダークサイズが空京放送局やカリペロニア要塞化で奮闘していた頃、ダークサイズにちょっかいを出していた二人。
 彼らは久しぶりにダークサイズの名前を思い出す。
 天音は月の港に向かう円盤周辺の状況を確認し、イスナーンのライフルを構えてラピュマルの方を向く。

「すごいね。ラピュ○は……ラピュ○は本当にあったんだ」
「おい天音。なぜわざわざ伏せ字で言う? それに何をするつもりだ。円盤の護衛は……」
「彼らはこちらに向かってるんだろう? ここで機晶姫を殲滅しないと、捜索隊まで襲われる。それに、目の前にラピュ○が現たのに行かないなんて、そんなロマンがないことは、僕にはできない」

 天音は主に後半の理由のために、ラピュマルの加勢に向かう。


☆★☆★☆


 事態は好転したものの、バリアを失っている間の苦戦で銃器の弾がほぼ底を突いたダークサイズ。
 サーベルや格闘戦術で、機晶姫を一機ずつ仕留めていく。
 当然機晶姫全滅には時間を要することとなり、戦っている間にパラミタの月が迫ってくる。

「月に着くまでにこいつら倒しきらなきゃあ、後々面倒なことになるぜ。間に合うか?」

 ヴェルデはいらだちながら、バリアの補給にラピュマルに戻る。

「アキラさん! ピヨさんがもう限界です」

 捜索隊からずっと戦い詰めのアキラ機は、疲れきってしょぼーんとした顔をしている。

「おっと、こりゃもう仕方ないな……」

 アキラは戦線を離れ、ラピュマルに退避。
 メアトリスは時間を見つつ、

「アリス、時間っ!」
「くっ、仕方ないけどなかなか不便だね……」

 リアトリス機はフラメンコを踊るような華麗な動きで機晶姫の攻撃を避け、腕に内蔵した【クレイモア】で1体仕留め、やはりバリア回復のためラピュマルに戻る。
 などなど、ダークサイズ側の攻撃力の低下が目立つ。
 機晶姫が1体、ラピュマルのバリアに張り付き、侵入を試みてバリアを破壊しようとする。
 ちょうどそこに天音機が到着し、【対神スナイパーライフル】で撃ち落とす。
 ブルーズが周りを見て、

「敵は20数体といったところか。どうする天音? もう少しここに残るか?」
「……間もなく月面降下が始まるはずだ。大して援護できなかったが、ここらが限界か。また後で彼らには挨拶するとしよう」

 天音機は捜索隊の動きを優先し、すぐにラピュマルを離れざるを得ない。
 戻ろうとする天音機を機晶姫が1体追うが、ライフルと【薔薇のレイピア】で迎撃。
 機晶姫をさらに削ることに貢献してくれた。

 捜索隊が月の港に着陸し、オクタゴンへ向かってしばらくしたころ、ダークサイズのラピュマルも月の港へ降下を始める。
 しかし、依然として機晶姫たちはラピュマルにまとわりついてくる。
 ダイソウは月の港を見下ろし、

「ダイダル卿、着陸できるか?」
『うーむ、わしにはちょいと手狭じゃのう。ギリギリまで接近するから、よいところで全員飛び降りてもらうしかないの』
「卿はどうする?」
『適当なところを見つけて止めるわい。後で追いつくから心配するな』

 まるで駐車場を探すような会話だが、とにかくダイソウは戦闘中のイコンと乗員に指示を出す。

「これより月の港へ降りる。イコンを持たぬ者は飛び降りねばならん。荷物を持ってラピュマルの端へ集合するのだ。飛び降りたならばティーパーティ準備組はオクタゴン中央ゲートへ急げ。戦闘要員は準備組を警護しつつ進め。イコンは機晶姫撃滅に集中せよ。殿を任せる」

 弾も尽きて装甲も傷つき、疲れの見えるイコン組だが、アドレナリン出っぱなしの彼らはものともしない。
 洋あたりは『しんがり』と聞いて、

「お任せあれええええ!」

 と、テンションは上がりっぱなしだし、悠も、

「ここで軍人の名誉『殿』か。フフ、まったく憎い言葉を使う……」

 とつぶやいて、帽子のつばを押さえて口元がゆるむ。

『せーのっ……とりゃあー!!』

 ラピュマル乗員たちは、次々にジャンプして、ついにパラミタの月に上陸する。
 全員が降りたのを見届けて、ダイソウは、

「ゆくぞ、飛天ペガサス!」

 と、エメリヤンを呼び寄せる。
 彼に飛び乗った後、ダイソウは上からアルテミスに手を伸ばす。

「ご苦労であった」
「……はい……っ」

 アルテミスはダイソウの手を取り、彼の後ろに乗ってダイソウの腰に手を回す。
 当然結和もエメリヤンに乗っていたので、

「……す、すみません。苦しいんですけどー……」

 と、二人に挟まれてむぎゅっとつぶされている。
 ここでエメリヤンの【ふわふわ気分】が本気を出す。
 華麗にラピュマルを飛び立ち、先攻したダークサイズを追う。
 同時にアルテミスのバリアが役目を終えて消え去った。