リアクション
8 ダークサイズのニルヴァーナへの道
機能を回復したオクタゴンに明かりが灯り始める。
『月の港へようこそ。ここはパラミタとニルヴァーナを繋ぐ架け橋です。皆様にとって良い旅になりますよう、旅の安全をお祈りいたします』
音声と共に、ティーパーティ会場の先にある巨大な映像装置に美しい女性の姿が映し出される。
「ひ、開いた……!」
優希が急いでカメラを向けると、そこには輝ける光の渦が見える。
『ニルヴァーナへの……回廊!』
どうやら捜索隊のブライドオブシリーズ設置は成功したらしい。
そして、先の怪物の雄叫びと共に、ブラッディ・ディバインも撤退したらしく、辺りは荘厳な静けさに包まれている。
「おお……我々が、歴史的現場に居合わせるとは」
さすがのダイソウも、目を見開いて言葉を失う。
優希が息をのんで、
「ニルヴァーナに最初に足を踏み入れるのは一体……?」
と、独り言ともナレーションともつかない言葉が、口から洩れる。
それに我を取り戻したダイソウ。
「ゆ、ゆくぞ! 我らダークサイズが、ニルヴァーナ一番乗りを果たすのだ!」
興奮冷めやらぬダイソウは、言い淀みながら号令をかける。
ぴくんと反応したエメリヤン。
素早くダイソウを背中に乗せ、いの一番に飛び出す。
「させるかあああああ!」
信じられないような全力疾走で、類がダイソウに追いすがる。
「やってやるっ! 俺が! 俺がニルヴァーナ一番乗りだあああっ!」
「類を止めろおー! 一番乗りはダークサイズだあああっ」
ダークサイズの面々も、二人を追う。
『待ったあああ!』
いつの間に乗り込んだのか、ゲブーとサンダー明彦のイコンがダークサイズに立ちふさがる。
「ちくしょー! 話が違うじゃねえか! 俺の宇宙デビューはどうなったー!」
「俺様だって全然おっぱいできてねえんだぜ! 類、行けっ! このお礼に後でおっぱい(向日葵)とおっぱい(ネネ)とおっぱい(モモ)におっぱいすんの手伝いやがれ!」
回廊までの距離が短いので、ダークサイズのイコン組は乗り込みが間に合わない。
類とダイソウのサシの競争が始まるが、直後類とエメリヤンのスピードが落ちる。
「な、なんだ……? 身体が、痺れ……」
類やエメリヤンが食べたお菓子の中に、天音のテロルチョコがまぎれていたらしい。
遅効性の痺れ毒入りのそれが、効力を発揮したのだ。
エメリヤンから降りたダイソウの独走態勢かと思われたその時、
「させん! チームサンフラワーの力を思い知れ!」
今度は永谷が追いつき、ダイソウとの対決に臨む。
二人が疾走し、ニルヴァーナへの回廊へ迫る。
「ダークサイズとチームサンフラワー! どっちが勝つの!?」
優希も息をのむ中、
「はっ……!」
ダイソウと永谷は何かに気づいて、突然足を止める。
『し、しまった……やられた!』
「何で止まるんだ! まだ誰も回廊に入ってないぞ!」
ダークサイズもチームサンフラワーも、止まる二人に前進を求めるが、二人は拳を握って回廊を睨む。
二人が見る先では、
「ファーストクイーン様……私、もうすぐ帰れるんだね……」
たいむちゃんが感動しながら映像の女性を見上げ、それを捜索隊が万感胸に迫る思いで見守っている。
ダイソウと永谷は悔しそうに顔をそむけ、
「なんという……シリアスなシーン……」
そして……ダークサイズは空気を読んだ。
☆★☆★☆
「何で行かなかったんだよ! できただろ、一番乗り!」
「空気的に完全にNGだった。あれはホントに無理だった」
ダイソウと永谷がみんなに理由を説明しつつ、たいむちゃんと捜索隊に遅れること数十分。
ダークサイズはニルヴァーナへの回廊に足を踏み入れる。
身体全体には、包まれるような浮遊感。
時間の感覚を失い、5分とも1時間とも思える不思議な感覚の海を漂い、やがて足が地面につく。
「ここが……ニルヴァーナ……?」
捜索隊の感想と同じく、荒涼と広がる大地を呆然と眺めるダークサイズ。
パラミタ大陸征服のため、はたしてニルヴァーナを征服することはできるのだろうか……
大熊誠一郎です。最後までありがとうございました。
大変お待たせいたしました。
メインストーリーにちょこっと絡むお話、初めてのイコン戦ということで、ダークサイズなりの絡み方は今後も研究したいところです。
イコンはまた時々入れてみたいと思います。
ガイドの段階で少し説明不足なところもあり、いただいたアクションがちょくちょく変えさせていただいたところがあると思います。
大変失礼いたしました。
次回以降気をつけます。
さて、次回のダークサイズですが、しばらくニルヴァーナで活動してみようかと思っています。
ニルヴァーナについての状況が明らかになり次第、順次ダークサイズがおっかけていく、みたいな。
そこからメインストーリーに絡めるかどうかは……ま、ダークサイズですからねぇ……
というわけで、また次回お会いしましょう。