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リアクション
先行組
AM12:00(タイムリミットまであと12時間)
「こっちの道は、まだ手薄だったハズ……といっても、大分前のことだけど」
ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)が、自信なさげにひとつの道を指差す。
「ありがとう。ミルディアがいなかったら、こんなに早く基地に近づけなかったわ」
「うん。とっても助かっちゃった。ありがとう!」
歌菜と歩に感謝の気持ちを向けられ、ほんの少し頬が蒸気する。
「ううん。まだ皆が無事だった時に、助けを呼ぼうとして調べてたんだ。結局、実行できなかったけど…… でもそれが今、役に立って良かった」
「……提案がある」
ルシェイメアの死を見送ってから、ずっと押し黙っていたアキラが口を開いた。
「ヤマは死んだが、まだ死人の脅威は去っていない。だから、信頼できる人物に宝珠を託して運んでもらって、他の人はその道を切り開いたらどうだろう」
「悪くない案だな」
アキラの提案にクローラが頷く。
「そうだな。ここはやはり、理子に……」
「その宝珠を持つ役なんだが、俺はどうだろう」
「は!?」
同意しかけた旭だが、続くアキラの言葉に眉をしかめる。
「だってそうじゃないか。ヤマでないのは確実。死人でもない。皆が敵を引きつけれくれるなら……」
「待て。だからといって、アキラが信頼できるかどうかは別だ」
「ああ。だから理子に……」
「もしもの時は、高速移動が可能な俺に宝珠を託して欲しい」
「何ぃ!?」
アキラと同様の主張をし始めたクローラに、旭の眉は更に歪む。
「駄目かな」
「理子、俺を信じてほしい」
「そ、そうね……」
「駄目よぉ〜。宝珠はきちんと理子っちが持ってないと」
一瞬、頷きかけた理子を推しとどめたのはアスカだった。
「ええと、けど、俺は潜入案もあるし……」
「それは良いな。だったら、先行して潜入するってのはどうだ?」
「ええ〜」
鴉に水を向けられ困惑するアキラ。
「いいね〜。私も先行しての偵察を考えてたんだ。一緒に道を開拓しよっかあ」
へらりと笑うとアキラの肩を組んだのは雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)。
「偵察なら、あたし達の役割ね、セレアナ」
「ええ。少数でも戦力はあった方がいいし」
「少数精鋭ってことね」
セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)とセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)も名乗り出る。
「よぉし、偵察隊成立! じゃ〜ん!」
「あ、ああ……あれ?」
いつの間にか偵察隊に組み入れられ、目を白黒させているアキラ。
「ま、まあそれで皆の役に立つなら……」
納得しているアキラを余所に、クローラたちの話はまだ終わっていなかった。
「頼む、日本のためだ。俺は死人じゃない」
「たとえ死人でなくても、死人に脅迫されたり、宝珠を私物化しようという者がいないとも限らない」
「ま、まあまあそんなキッツい事いうなよ。つまりアレだ、皆して理子と宝珠を一緒に守ってたほうが確実ってことじゃんね」
「まあそういう事だ」
旭の言葉を慌てたように補足したのは山野 にゃん子(やまの・にゃんこ)。
今日も猫顔で癒しを振りまいている。
にゃん子の言葉に、不承不承といった様子で頷く旭。
そーそーネコちゃんいいこと言うわーとアスカがにゃん子の頭を撫でている。
「……しかしっ」
クローラはぐっ、と拳に力を込める。
(こうなったら、奪ってでも……)
「クロ」
「……俺は猫じゃない」
セリオスに声をかけられ、思わず反論する。
しかし、おかげで僅かに冷静さが戻ってくる。
見れば、理子の周囲には人が集まっていた。
元からの護衛の陽一やフリーレ、美由子、旭をはじめ、アスカに鴉に……
全員が、威圧するような視線をクローラに向けている。
「く……」
「クローラさん」
あえて静かな様子で、陽一が話しかけた。
「俺達も、大切な戦力を減らしたくないんだ。分かってくれ」
「……ああ」
陽一の言葉に、クローラが体の力を抜く。
セリオスはそっとその肩を叩いた。
「しかし、案自体は悪くないんじゃないか」
夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)がそう言うと、傍らでホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)がそーですそーですと相槌を打つ。
最終的にアキラとクローラ、そして天野木枯からも出された案が取り入れられ、死人とイコンを引きつける戦闘・陽動組と、理子と宝珠、そしてハイナを守り基地に向かう突入組とに分かれる事になった。
「ちょっと、私達偵察組を忘れてるんじゃないぃ?」
「えー、ぶーぶー」
「いいから、行くわよ」
軽口を叩くリナリエッタとセレンフィリティを諭し、セレアナは早くも身支度を整え進みだす。
「あ、待って……」
「ワタシも行くネ」
それを、アキラとアリスが慌てて追いかけた。
「お願い、皆の為に……そして気を付けて」
歌菜の言葉に、リナリエッタ達は無言で頷いた。
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