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こどもたちのハロウィン

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こどもたちのハロウィン
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リアクション

「へん! どうせきけんなんておとなたちのかってにいってるだけだ!」
 声の主は、5歳のらるくくん(ラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす))だった。
「きっといたずらにつかえるどうぐがいっぱいあるから、かくしたいだけにきまってるんだ!」
「そうだそうだ」
 ずんずん進むらるくくんの後に、ぶらぬくんと悪ガキ達が続いていく。
「とりあえずはむしとかつかえそうだよな? いっぱいとってイタズラにつかうか」
 らるくくんが、虫を探し出す。
「そうだな。おとなのじょせーはむしとかによわんだぜ! ごきぶりとかとれたらいちばんなんだけど、けむしとか、ガとかでもいいみたいだぜ」
「みみずとかも、いいかもなー」
 悪ガキ達も、いがぐりの他に虫をもさがして。奥へ奥へ進んでいく。

「だから、そっちにいったらだーめー!」
 ゆうこちゃんは、悪ガキ達を追おうとしていた。
「みつけた」
 そのゆうこちゃんの腕がぐいっと引っ張られた。
 妹分のゆうこちゃんを探しに来た魔女っこ姿のありすちゃん(崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす))6歳だ。
「あんな男子たちとかかわっちゃだめよ、はしたないんだもの」
「でも、あっちにはいっちゃだめっていわれてるから!」
「ここにいたら、ゆうこもいっしょだよ。こういうのは大人の人にいいつけるの。いっしょになってしかられるのもいやでしょ?」
「むー……っ」
 ゆうこちゃんはちょっと膨れる。
「あと、たすけてくれた人にはちゃんとおれいいわないとね」
 ありすちゃんは、ふわふわな兎さんを抱きしめているらぐえるちゃんの方に、ゆうこちゃんをむけた。
「ありがとう」
 ぺこんとゆうこちゃんは頭を下げる。
「ううん、みんなたのしいのがいちばんだよね。それじゃあっちでまってるね」
 らぐえるちゃんはにこっと笑って、兎さんを見せに先に皆のところに戻っていった。
「りゅうくんもありがと!」
 ゆうこちゃんは、りゅうじくんにもぺこっと頭を下げた。
「よし、ゆうこにはこれをやるぞー」
 りゅうじくんは、棘のない綺麗な小枝を拾うと、ゆうこちゃんに差し出した。
「おとなのおだいかんさまは、何とかやさんから、おうごんのおかしをもらってるはずだからな。せいばいすれば、そのおかしをもらえるはずだー」
「そうなのか」
 ゆうこちゃんはキラキラ目を輝かせた。
「そのまえに」
 ありすちゃんが、ゆうこちゃんの服をぱたぱた振った。
 服の中から、ごろごろいがぐりが落ちていく。
「いがぐりおとして、どろんこふいて」
 そして、タオルを渡す。
「うん」
 ぐしぐしとゆうこちゃんは、顔についた泥んこを拭いた。
「はい、これかぶって」
 ぽすっと、ありすちゃんは、かぼちゃの帽子をゆうこちゃんの頭に乗せた。
「おかし、もらいにいくわよ」
「うん!」
「あっでもね、中にはいたずらされたいとかいたずらしたいっていう大人の人もいるから、そういう人にはきをつけること!」
「うん、わるいおとな、せいばいしておかしもらう!」
 ゆうこちゃんは、かぼちゃの帽子を片手で押さえて、小枝をぶんぶん振りながら皆のところに歩き出す。
 それから……。

「おひさまにかわって、せいばいする! えぇーーい!」
 ぽかっと、ゆうこちゃんが梅琳の胴に小枝を叩き込んだ。
「おうごんのおかしをおいていくがいい」
 どーんと、りゅうじくんが、梅琳に突撃。
「うわあ〜〜〜〜」
 後ろに大ジャンプして、梅琳は大げさに倒れる。
「まいった。まいりましたー。このおかしをおおさめください……ふふっ」
 両ひざをついて、梅琳はケーキを差し出してきた。
「しかとうけとった!」
 ゆうこちゃんは、ぱっと笑顔を浮かべる。
「ありす、ゆうこ、りゅうくんとせいばいしておかしもらったー!」
 そして、ありすちゃんに嬉しそうに見せる。
「せいばいかんりょーだな」
 りゅうじくんもお菓子を貰って満足そうだ。
「……まったくもう」
 ありすちゃんは、そんな可愛らしい妹、弟分をため息をつきながらも、微笑ましげに見つめていた。

○    ○    ○


「……まだおかしとどかないですかぁ。おなかすいたですぅ」
「つかえないこばかり」
 ロングウェーブの女の子、4歳のえりざべーとちゃん(エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)とサングラスをかけた女の子、4歳のかんなちゃん(御神楽 環菜(みかぐら・かんな))は、背を向け合って、池の側に立っている。
「カンナ、いっしょにおかしをもらいにいきませんか?」
 そこに、お着替えを終えた男の子が近づいてきた。
「おかしのもらいかた、よくわからないから……カンナがいっしょにきてくれると、うれしいです」
 海賊の姿で、そう恥ずかしそうに言ったのは、4歳のようたくん(御神楽 陽太(みかぐら・ようた))だ。
「じぶんでかんがえなさい。はやくもってきて」
 つーんとした顔で、かんなちゃんは言った。
「もらいかたはもっとじぶんでもかんがえますけど、カンナがいたら、きっとたくさんおかしをあつめれるとおもいます」
 そして、ようたくんはかんなちゃんと手を繋いで、微笑みかける。
「ぜったいです。2りぶんよりたくさんあつめられます」
「……しかたないわね。つれてってあげるわ」
 しぶしぶというようにそう言うと、かんなちゃんはようたくんの手をぐいっと引っ張って大人の方に向かっていった。
「うーーーーっ、はやくしなさーーーーい!」
 えりざべーとちゃんは、悔しげに足をばたばたしながら大声を上げた。

「えりざべーとちゃんのこえがきこえましたぁ……」
 あすかちゃん(神代 明日香(かみしろ・あすか))3歳は、衣裳部屋で焦っていた。
 早くお着替えをして、お菓子を沢山もらってえりざべーとちゃんのところに行きたいけれど。
「ううっ、うう……っ」
 服に手を通そうとしてもうまくいかない。
 ぼたんを留めようとしても、上手く留まらない。
「こうするんだよ。はい、ばんざいしてねー」
 子供達のお世話をしていたライナが、魔女の服を着せてくれた。
「ふは……っ」
 ようやく頭を通して、腕も通して、ボタンは留めてもらって。
 あすかちゃんはお着替えを終える。
「あ……あ、りがと、ですぅ」
 頑張って、小さな小さな声でお礼を言うと、赤くなってあすかちゃんは衣裳部屋から飛び出した。
 あすかちゃんは、人見知りでとっても恥ずかしがり屋さんなのだ。
「いた……っ」
 窓から外を眺めている少女――リーア・エルレンを発見すると、あすかちゃんはくいくい洋服をひっぱる。
「あのね、あのね、おかしほしいの」
「ん? あすかちゃん、更に可愛くなっちゃって」
 リーアは笑みを浮かべて、あすかちゃんを撫でると、キャラメルをくれた。
「ありがと」
 リーアのことは良く知っているので笑顔でちゃんとお礼が言えた。
 だけど……。
(ぜんしゅるいあつめてくるとえりざべーとちゃんはよころんでくれるの)
 そのためには、知らない人にも話しかけてもらわなければならない。
 トントントン。
 キッチンから包丁の音が聞こえる。
「が、がんばらなきゃ……」
 ドキドキしながら、あすかちゃんはキッチンへと歩いていく。

「すずこおねーちゃん、かきまぜたよ。これでいい?」
 キッチンでは、先にお着替えを済ませたかなちゃん(歌菜)が、桜谷 鈴子(さくらたに・すずこ)のお手伝いをしていた。
「ええ、ありがと。きちんと出来ましたね」
「うん♪」
「次はこっちをこねてもらえるかな? 皆が大好きなハンバーグよ」
「うん、カナがんばるよ、がんばっておてつだいするから、ね?」
 にこっとかなちゃんは鈴子お姉さんに笑顔を向けた。
「ふふ、かなちゃんにはいっぱいご褒美あげないとね」
「わーい♪」
 お手伝いをして、いい子にしていたらきっとたくさんお菓子がもらえるはず。
 そう考えて、かなちゃんは大人のお手伝いを頑張っていた。
(いっぱいがんばって、ぜんしゅるいもらうんだ〜)
「あ……の……」
「ん?」
 小さな声に気付いて、かなちゃんは振り向いた。
 ドアの側にもじもじしている女の子――あすかちゃんの姿があった。
「どうしたの? ……あ、おかしもらいにきたんだね」
 かなちゃんがそう尋ねると、あすかちゃんは首をこくんと縦に振った。
「すずこおねーちゃん、おかしもらいにきたこがいるよー」
「……!」
 かなちゃんが鈴子お姉さんを呼んだ途端、あすかちゃんはテーブルの下に隠れてしまった。
「あら?」
 鈴子お姉さんが、テーブルの下を覗くより早く。
 テーブルから出たあすかちゃんは、鈴子お姉さんの後ろに回り込んで足に手を回してくっついた。
「お、おかし……」
「ふふ、はいはい」
 優しい声と、優しい手が降ってくる。
 あすかちゃんを優しく撫でた後、鈴子お姉さんは手作りクッキーを、あすかちゃん。それからかなちゃんにも渡した。
「あ、りがと……」
 あすかちゃんは、クッキーを大事にしまうと逃げるように走っていった。
「ありがとう、すずこおねーちゃん♪ えっと、これこねこねするね」
 かなちゃんもお礼を言うと、お手伝いを続けることにした。
 これが終わったら、もっと沢山お菓子、貰えるはずだ。

「おかしをくれないといたずらしちゃうんだからー。え〜い」
 三角帽子をかぶった、ツインテールの小さな魔女が、箒でぺしぺし梅琳を叩く。
「ごめんごめん。あんまり可愛いから、ちょっとじらしてみたくなっちゃった。お菓子あげるから、許してね!」
 梅琳は手作りプチケーキをその魔女の格好をした女の子――5歳のみわちゃん(小鳥遊 美羽(たかなし・みわ))に渡した。
 美羽ちゃんは、丈の短い黒いローブを纏っている。
 腰と帽子には大きなリボンついており、肩には使い魔代わりの黒猫のぬいぐるみが乗っていたり。
 ハロウィンのお化けにしては可愛らしすぎるほどの可愛い格好だった。
「悪い大人は来ていないはずだから、安心してお菓子を貰ってまわってねー」
「うん、あともう少しなの!」
 みわちゃんは貰ったケーキを大切に巾着袋の中にしまう。
「ほら、いきなさい。あの子とおなじようにすればいいのよ」
「う、うん」
 女の子が、男の子の腕を引いて現れた。
「あ……かんなちゃん! と、よーたくん。おかしもらいにきたの?」
「そうよ。わたしがいっしょなら、たくさんおかしあつめられるっていうから」
 かんなちゃんが素っ気なく答える。
「が、がんばります」
 ようたくんは、かんなちゃんと手を繋いだまま、梅琳の方に向かう。
「えっと……とりっく おあ とりーと?」
「はい、良く言えました。ふふ、お菓子どうぞ」
 梅琳はプチケーキを、陽太君に2つ持たせてくれた。
「カンナ、もらいました」
「うん、つぎいくわよ」
「は、はい……」
 かんなちゃんは、陽太君の手を引いて、次のターゲットの元へ向かいだす。
 ようたくんははにかみながら、嬉しそうにかんなちゃんと一緒に歩いていく。
「えりざべーとちゃんはいっしょじゃないんだね」
 2人と一緒に歩きながら、美羽ちゃんが尋ねる。
 さっきまで、かんなちゃんとえりざべーとちゃんは一緒にいて、子供達にお菓子もってこいと命令をしていたはずだ。
「いけのちかくにいるわよ」
 かんなちゃんが興味なさそうに答える。
「いっぱいあつめたら、エリザベートさんにみせてあげましょう!」
「そうね。みせるだけだけどね」
(おかしのりょう、きょうそうしてるんだよね……。ふたりとも、いばっててえらそうだけど……)
 悪い子じゃないことは知っているし、多分ほんとは良い子だから。
 だいじょうぶ、うん。と、みわちゃんは頷いていた。
「ああっ、おとなのひとみつけたっ。おかしをくれないと、いたずらしちゃうぞ〜」
「とりっく おあ とりーと?」
 みわちゃんと、かんなちゃんに背を押されたようたくんが、次のターゲットファビオに向かっていく。
「これで許してくれるかな」
 すぐにファビオはキャンディを、ようたくん、かんなちゃん、みわちゃんにくれた。