リアクション
「はやくもってきなさぁい……」 ○ ○ ○ 「みーみちゃんどこ? どこなの?」 木や物陰に隠れながら、3歳のあるちゃん(牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ))は、友達のみるみちゃん(ミルミ・ルリマーレン(みるみ・るりまーれん))を探していた。 (おそとこわい、こわい) お外には子供が沢山いて、皆楽しそうに遊んでいるけれど。 臆病で人見知り、泣き虫のあるちゃんは、皆の中に入れない。入りたくない。 とにかく怖くて怖くて。 ふと、不意に。明日世界は滅びるのではないかと、考えてしまって。一人で泣き出したりしながら。 お友達のみるみちゃんだけを、必死に探し回っていた。 「みーみちゃんのこえ!」 みるみちゃんの元気な声が、あるちゃんの耳に入った。 転びそうになりながらあるちゃんは駆けて、みるみちゃんの側に――行こうとしたけれど、みるみちゃんの側には、大人がいた。 (いっしょにいるのだれ? こわい……) 木の陰に隠れて、あるちゃんはその人を観察する。 大きな光の翼をもった大人だった。 「はね? みーみちゃんといっしょ」 はっと、あるちゃんは気付いた。 「ようかいひとくいおばけだ! みーみちゃんとおなじてんしさんをたべて、はねがはえたんだ、こわい」 がたがたあるちゃんは震えだす。 「みーみちゃんをたべるきだ! こわいこわいこわいっ」 震えながらも、みるみちゃんを助けようと、あるちゃんは考える。 「ヘンタイふぁびお! もっとおかしくれないと、いたずらしちゃうよ〜! えいっ」 あるちゃんが悩んでいる間に、みるみちゃんはその大人――ファビオに向かって突撃する。 「みーみちゃん! い、いしでやっつけて……こわい、はずれたらたべらちゃう。あててもおこらせてたべられちゃう。あの、はびお ってようかいこわい」 あるちゃんは、みるみちゃんがファビオに突撃し、捕まえられたのを見て、ついに大声で泣き出してしまう。 「うあぁぁん、ようかいはびおがみーみちゃんたべちゃうよぉぉっ」 「ん?」 「あれ? あるちゃん!」 みるみちゃんはファビオに抱き上げられた状態で、振り向き、あるちゃんを発見する。 「俺は変態でも妖怪でもないんだけどな」 苦笑しながら、ファビオはあるちゃんの方へやってきて、みるみちゃんを下ろした。 「うあぁぁん、みーみちゃん、みーみちゃん」 「だいじょーぶだよ。いたずらはしっぱいしちゃったけどね!」 「ひくっ、ひくっ」 あるちゃんはみるみちゃんの後ろに。光の羽の後ろに隠れてぎゅむっとしがみつく。 「みーみちゃんたすけて、おばけがいるよぅ」 「おばけじゃないんだよ、あのひとはへんたいなの!」 「いや、お化けに変身してるのは、子供達の方で……」 ファビオはあまり子供の世話になれていないようで、困りながらあるちゃんにお菓子をあげようと近づいた。 「いません! あゆちゃんはいません! ぱぱんとままんもるすです! おにーちゃんはがっこうです! あゆちゃんはいません!」 「あるちゃんをこわがらせるへんたいめー!」 みるみちゃんは、近づいてきたファビオに、拳をぽかぽか叩き付けた。 「お菓子あげるから、悪戯はおしまいにしようね」 ファビオはキャンディを取り出したが。 「うあぁぁぁん、みーみちゃんがだまされて、たべられちゃうぅ」 あるちゃんはまた、わあわあ泣き出してしまった。 「なかしたー、なかしたー、なかしたー」 指差して、みるみちゃんはファビオを睨む。 「ご、ごめん。お菓子ここにおいておくから。その子のことは、みるみちゃんに任せるよ」 ファビオは困り果てた表情で、キャディを石の上に置くと、子供達のところに戻っていった。 「あるちゃん、もうだいじょうぶだよ。へんたいはにげてったからね」 みるみちゃんは、キャンディを拾うとあるちゃんに1個あげて、微笑みかけた。 「んで、あるちゃん。おにーちゃんいたんだ」 みるみちゃんの問いに、あるちゃんは涙をぬぐいながら、こくんと頷いた。 「みるみもおにーちゃんほしいな〜」 みるみちゃんはあるちゃんの手をひっぱって、一緒に大きな石の上に座った。 まだ怖い気持ちは残っているけれど、みるみちゃんと手を繋いでいるから。あるちゃんは少しずつ落ち着いていく。 「あめなめおわったら、つぎのおとなにおかしもらいにいくよー。あるちゃんもいっしょにいこうね!」 「ようかい、こわい……」 「だいじょーぶ! みるみつぉいもん!」 「みーみちゃん、つぉい?」 「そうだよ、あるちゃんのこと、まもってあげるからねっ」 みるみちゃんがそういって、あるちゃんに笑みを向けると。 あるちゃんはまたぎゅっとみるみちゃんの手を掴んで頷いた。 それから、一緒にキャンディーを舐めはじめる。 あるちゃんは途中で噛んでしまったので、みるみちゃんより早く食べ終えて。 「みーみちゃんみゆくは? あまくておいしいの」 もっと欲しそうな目でみるみちゃんを見た。 「のみものは、パーティのときにはあるよ、きっと! それまでにおかし、たくさんあつめておこー!」 「うん」 そして、みるみちゃんと手を繋いだまま、あるちゃんは立ち上がる。 今日のみるみちゃんは、あるちゃんにとって、輝いてる勇ましい天使さんだった。 |
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