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レターズ・オブ・バレンタイン

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レターズ・オブ・バレンタイン
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リアクション

1)

ニルヴァーナの創世学園都市。
学園稲荷にて。
大岡 永谷(おおおか・とと)は、
小暮 秀幸(こぐれ・ひでゆき)を誘って、お参りにやってきていた。

「清浄な雰囲気の、よい場所ですね」
秀幸が、境内を見回して言った。
「ああ、喜んでもらえてよかった」
永谷が微笑する。

(お稲荷様の使者である狐が、手紙を渡す勇気をわけてくれないかな)
永谷は、懐の手紙をぎゅっと握りしめた。
秀幸に、すでに告白している永谷であるが、
鈍感な秀幸は、今日、永谷がこうして勇気を振り絞っているのを、
はたして気づいているだろうか。

気を取り直し、永谷は、秀幸に提案した。
「お稲荷様の好物のお稲荷さんをお供えしよう」
「なるほど、こうしたことをする機会は、自分はあまりありませんでした。
お作法を教えていただけますか?」
「ああ、もちろんだ」
永谷は神社の娘であり、昨年の忘年会では、巫女の衣装を着て、
秀幸の前に現れたこともある。
作法を教えつつ、永谷は秀幸とともに、
お稲荷さんをお供えした。

2人は、神妙な顔つきで手を合わせる。
(どうか、どうか、俺の想いを伝えられますように……!)
永谷は、一心に願いを込めた。

ふと、冷たい風が、境内を吹いていった。

永谷は、意を決したような表情で、秀幸を見つめる。
「なあ、小暮」
「なんですか?」
「……その」
(ええい、勇気出せ、俺!)
しばらくの沈黙ののち、
永谷は、チョコレートの包みと手紙を、秀幸に差し出した。

「これを……自分に?」
「他に誰がいるんだよ」
秀幸は、しばらく、信じられないような表情で、永谷を見つめていたが。
「うれしいです!
永谷さん、大切に食べさせていただきますね!」
はにかむ秀幸に、
永谷も、顔を紅潮させながら、うなずく。
「まあ、あんまり期待しないでくれ。
俺、そんなに料理得意じゃないしさ」
「そんなことありませんよ!
永谷さんの気持ちがこもったチョコレート、とてもうれしいです!」
秀幸が、感動して何度も喜ぶので、
永谷はどんどん照れくさくなってきた。

「……あ、あと、手紙も……読んでくれよな」
それだけ言うのがせいいっぱいで。
永谷は、今日はもうこれ以上、秀幸と目を合わせられなかった。