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リアクション
★ ★ ★
「その御衣装、なかなかのものであるな」
安徳天皇にべったりの織田信長の前に立ちはだかって、立川火星【びぃなす】が言った。
「ええっと、まだテロップ入れるんですかあ?」
「本人の希望だから、ちゃんと入れなさい」
「しくしくしく……」
シャレード・ムーンに言われつつ、日堂真宵が面倒くさがりながら画面に立川火星の読み方を入力していった。
「うん、ちょっと渋いかもですわ」
イコナ・ユア・クックブックも、ちょこまかと近づいてきて織田信長を上から下までチェックしだす。
「そこの者たち、陛下とこの天下人織田信長の御前である。頭が高いわ!」
ちょっとなれなれしい立川火星【びぃなす】を、織田信長が一喝して下がらせた。
「何、この人ちょっと怖いかも……」
怖い人は苦手だと、イコナ・ユア・クックブックがそそくさとその場を離れていった。
ちょこんと椅子の上に座った安徳天皇だったが、すぐ近くで織田信長が怖い顔で睨むので誰も近寄ってこようとはしない。その知的な雰囲気に、御神楽舞花や東朱鷺も惹かれはするが、声をかけるまでには至っていない。
そのため、かなーり手持ち無沙汰な様子であった。
だが、そこへ、果敢にもチャレンジする者がいた。神崎優だ。
「よろしいでしょうか」
極力、丁寧に話しかける。
「む……。よろしい、拝謁を許可しよう」
じろりと品定めしてから、織田信長が許可した。とはいえ、もともと許可がいるものではないのだが。誰の目にも映ってはいないが、フラワシの第六天魔王がしっかりと近づく者たちをチェックしている。
「最近はいかがお過ごしですか?」
神崎優が安徳天皇に訊ねた。織田信長が睨むので、なるべく丁寧な言い方に注意する。
「最近か? 小谷 友美(こたに・ともみ)にいろいろと教えてもらいながら、いろいろと検分を広げている毎日じゃ」
「それは面白いなあ。俺は刀の稽古をしたり、猫をなでたりしているんですよ」
「猫か、それはかわゆいのう」
ちょっと、安徳天皇が和む。
「俺と同じ蒼い瞳で、そういえば、あなたも蒼い瞳なんだな」
「うむ、パラミタに甦ったときは、この色であった」
安徳天皇が話に乗ってきたので、そのまま瞳についての話を続けるが、織田信長の目があるので、どうにもちょっとぎこちない形式的な会話が続いていったのだった。
★ ★ ★
「ほらー、頑張らないと、リーリちゃんと交代だよぉ」
観客席にいるムハリーリヤ・スミェールチにあおられて、御空天泣が思い切って桜月舞香に話しかけてみる。
「あの、ここよろしいですか? よければ、イコンの内部メカのエネルギー効率についてでも……」
「天ちゃんったら、女の子となら意外としゃべれるんだね」
ムハリーリヤ・スミェールチの隣にいるラヴィーナ・スミェールチが、変なことに感心する。
「なあにそれ、女の子にそういう話題は似合わないわよ。ごめんなさい」
ところが、肝心の桜月舞香の方は、男にはまったく興味がないのでにべもなかった。
「しかたない、次の人を……」
諦めて、御空天泣が他の女性を探す。
「ヒャッハー、なんだか危ない女がいるぜえぃ」
人目もはばからず、南鮪がミネッティ・パーウェイスを見つけて奇声をあげる。
「ああ、セクシーだな」
そばにいたリョージュ・ムテンも同意した。
さっきまではファトラ・シャクティモーネに見とれていた南鮪とリョージュ・ムテンであるが、他にお目当てがあるのか全然相手にもされなかった。そのため、今のところは美人を観察して楽しむに留まっている。
「よし。そこのお嬢さん……」
御空天泣が、今度はミネッティ・パーウェイスに声をかけてみた。お色気キャラには、普段ムハリーリヤ・スミェールチで慣れている。
「ピッ。財力235791G……。ふっ、まだまだ少ないわね。また今度ね」
あっさりと財力を見抜かれて、御空天泣がミネッティ・パーウェイスにおいていかれた。
★ ★ ★
「とりあえず、自分は会場内をジョギングしているんで、健康的な女子は声をかけてくれよな!」
そう言うと、アキレウス・プティーアが会場内を壁際に沿ってジョギングを始めた。
「う、うわ……」
なんなんだと、壁際にたたずんでいたエメリヤン・ロッソーがあわててそれを避ける。
「まだ、壁の花がいますね。追い払おうよ」
会場を見回して、雷霆リナリエッタが言った。
「ということで、やっておしまい」
「うへえ〜い」
シャレード・ムーンに命じられて、てくてくと日堂真宵が出撃していく。
「ちょっとお、なんでこんな所で突っ立ってるのよぉ」
「えっ、……た、たって……じゃ、ななな、なくて……」
いきなりマイクを持った日堂真宵に声をかけられて、エメリヤン・ロッソーがパニックになる。
「ほら、あそこにブラブラしてお菓子食って遊んでるお子様がいるでしょ。ああいうのは話しやすいのよ。この飴玉持って、話しかけてきなさい。これは命令よ!」
「ふえ……ええええ……」
日堂真宵に凄まれて、しかたなくエメリヤン・ロッソーが、指し示されたノーン・クリスタリアの方へと近づいていく。
「ああっ、エメリヤンが動いたー」
それを見ていた観客席の高峰結和が、わくわくと目を輝かせる。
「あ、あ、あ、あの……」
「ふぁい!?」
もぐもぐとお菓子を頬ばりながら、ノーン・クリスタリアが振り返った。
「誰? わたしはノーンだよ。歌うのと食べるのが好きかな」
「歌? 歌……って……」
「いいよ♪」
リクエストされて、ノーン・クリスタリアが歌を歌いだした。
「おう、歌か。俺も混ぜてくれ。子猫ちゃんたちに俺の愛を捧げるぜ!」
ノーン・クリスタリアの歌声に誘われたのか、リョージュ・ムテンがギターを取り出して混ざってきた。
「おや、イコナちゃんも来てたんですか……。どうですか、楽しんでますか?」
ノーン・クリスタリアの歌の後に一曲バラードを歌い終わった後で、リョージュ・ムテンがイコナ・ユア・クックブックを見つけて声をかけた。エメリヤン・ロッソーや御神楽舞花たちと共に、二人の歌を聴いていたらしい。
「もしよければ、一緒に歌います?」
「忍さんはいいんですの?」
イコナ・ユア・クックブックが、リョージュ・ムテンに白石忍は放っておいていいのかと訊ねた。
「忍? パートナーだからそりゃ大切だが、恋愛は自由だろ? それに、今は歌いたいぜ」
「うんうん。歌は、悪くないですわねえ」
ティー・ティーは、源鉄心と共にパビモンたちと遊んでいるので、所在なさげだったイコナ・ユア・クックブックが、二つ返事で答えた。
「月見うどんの作り方を歌うのですわ」
イコナ・ユア・クックブックが、自分のレシピを歌にした物をリクエストする。
「うどんも好きですー」
すかさずノーン・クリスタリアが食べ物に反応した。
「料理本の魔道書か。実際の料理もうまいんだろうか?」
イコナ・ユア・クックブックの歌を聴いて、戦部小次郎がちょっと期待する。
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