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リアクション
酒杜 陽一(さかもり・よういち)は、高根沢 理子(たかねざわ・りこ)を呼び出した。模擬結婚式をしたい、と陽一が告げたところ、理子は喜んで承諾した。
「理子さん。俺、この模擬結婚式をする前に、言いたいことがあるんだ」
陽一は真剣な表情でそう言って、大きく息を吸った。
「俺は理子さんのことが好きだ。その想いに答えて欲しいという気持ちはある。けれど、理子さんの人生は理子さんだけのものじゃないと分かってる。理子さんの一存で決められることじゃないというのも、分かってる。でも、理子さんが俺の事をどう思っているか、改めて知りたいんだ。
理子さん、愛してる。結婚してほしい」
少しの間、二人の間に沈黙が流れた。
「……陽一の、真剣な気持ちは伝わってきたわ。だから、あたしも真剣に、答えたいと思う」
そう前置きをして、理子は口を開いた。
「あたしには代王という立場がある。現在のパラミタと日本の状況で結婚するとなると、大変なことになってしまう。でも、--あたしも、陽一のことが好きよ」
驚く陽一を見て、理子は、照れたように微笑んだ。
「だから、全てが落ち着いたら--」
「理子さん、困らせる事をしてごめん」
「謝る必要なんてないじゃない! ほら、だから模擬結婚式、するんでしょ?」
陽一は理子に促されるまま、式場へと向かったのだった。
羽織袴の陽一と白無垢姿の理子は、巫女に先導されて式場に入った。以前にも同じように、模擬結婚式をしたことがある。その時は、まだ、理子との未来についてぼんやりとも見えていなかった。
今は模擬結婚式だけれど、いつか情勢が変わって落ち着いた時には--。
陽一は、心の中で未来の自分と理子の姿を思い浮かべながら、理子と並んで一歩一歩前へと歩いて行った。
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