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第6章 お気に入りのカフェ

 陽射しから逃れて、御神楽夫婦は高級カフェに入った。
 ここはパートナー達も時々利用している、お気に入りのお店だ。
 道路沿いの窓際の席に案内してもらい、御神楽 陽太(みかぐら・ようた)と、御神楽 環菜(みかぐら・かんな)は向かい合って腰かけた。
 互いにデザートセットを注文し、陽太はフルーツパフェと紅茶を、環菜はティラミスとコーヒーを選んだ。
「甘すぎず、上品な味です」
 陽太はパフェを食べて頷いた。
 アイスクリームの爽やかな甘みと、フルーツが調和し、とても美味しかった。
「こっちは、甘くておいしいわよ。でも、濃厚すぎないから飽きない味ね」
 環菜がティラミスを食べながら言う。
「……」
 せっかくだから、食べ合いましょう。はい、環菜、あ〜ん。
 と、普段の自分の姿を想像するが、店内にはそれなりの客が多く、窓の外にも多くの人の姿あるので。
「こっちのパフェも美味しいですよ」
 普通に陽太は自分のパフェを勧めた。
 環菜は特に何も言わずに、パフェにスプーンを伸ばして、食べて。
 それから、自然に自分のティラミスを陽太の方へ押した。
「ホント、今の時期に合った味ね」
「確かに、飽きない味ですね」
 互いに美味しさを確かめて、感想を言い合う。
 ふと……自分達のそんな姿を、店内にいる客達が。
 そして、道を歩く人々が見ていることに陽太は気付く。
(俺ではなくて、環菜を見ているようですね)
 帽子もサングラスもしておらず、清楚な薄着姿の彼女は――世界一宇宙一美しかった。
 陽太のひいき目を抜きにしても、彼女が綺麗であることは事実だった。
 結婚してからも尚、女性として魅力的であること。それは夫の存在と力があってこそ、なのだけれど。
 陽太はそこには気づかず、ただ、彼女の美しさを誇らしく、愛しく感じていた。
 そして、この妻に釣り合う佇まいを意識していく決意を新たにしていく。
「この間のバーベキュー楽しかったですね。次回はみんなも誘いましょうか?」
「そうね。賑やかすぎるのは、どうかと思うけれど」
「その前に、今度は是非2人で魚釣りにチャレンジしましょう」
「……ええ」
 環菜がちらりと陽太を見る。
 ちゃんと楽しませてよ、というように。
 勿論、一緒に楽しみましょうと、陽太も視線で返事をする。
「そういえば、環菜と俺のぬいぐるみ、舞花が大事にしてくれている様子です」
「あのぬいぐるみ……まだ持ってるのね」
「くすぐったい気分ですが、何となく嬉しいですよね」
「それは、まあ。……でも、部屋に誰か、呼んだりされるとね」
 見られたら恥ずかしいのか、環菜は少し照れているようだった。
「友達も増えたようですしね。種もみ学院にも在籍したようですよ。今頃頑張っていそうです」
「変な友達が増えたら困るわ」
 環菜の反応が、“母”として、心配しているように見えて。
 陽太はなんだか幸せな気持ちに包まれて、微笑を浮かべる。
 いや、こうして一緒に過ごしているだけで、常に幸せな気持ちに包まれているのだけれど。
 時々、窓の外を見て、降り注ぐ陽射しや、楽しげな人々の事を話したり。
 店内に流れている静かな音楽、飾られている絵画のこと。
 些細なことから、家族のことまで話は続いて。
 会話が尽きることなく、2人はゆっくりと午後の一時を2人で楽しんだ。