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お月見の祭り

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お月見の祭り
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 白波 理沙(しらなみ・りさ)は、雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)との待ち合わせ場所に立っていた。
 約束の時間から少し過ぎた。そろそろ、雅羅も来る頃だろうか。浴衣姿の理沙がそんなことを思いながらぼんやりと月を見上げていると、浴衣を来た雅羅が駆け足で理沙の元へと向かって来た。
「ごめんなさい、遅れて。その……ちょっと、色々あったの」
 雅羅の口ぶりからするに、何かしらの災厄に合ってきたようだ。
「雅羅が無事なら、何も問題ないわよ」
 そう言いながら、理沙は改めて雅羅の着ている浴衣を見た。
「浴衣、凄く雅羅に似合ってるわ、素敵よ」
「本当に? ありがとう。理沙も似合ってるわよ」
 ふふ、と理沙は雅羅に微笑みかける。
「それじゃあ、行きましょう」
 理沙と雅羅は、竹林の方へと向かって歩き始めた。

「お月見の日に見る月って、普段見る月よりもずっと綺麗に見えるわよね。……そう思って見るから、かしら」
 竹林の間をゆっくりと歩きながら、理沙は空に浮かぶ月を見上げる。
「普段あまり気に留めて見ないから、かもしれないわね」
 雅羅も理沙の言葉に賛同して、淡い光を放つ月をじっと見つめた。
「この辺りで少し、休憩しましょうか」
 しばらく散策路を歩いた理沙と雅羅は、道の途中に設けられていた縁台に腰掛けてお団子を分け合った。
 理沙がお餅を選ばなかったのは、雅羅が理沙の事をまだ親友の枠から外して見ていないだろう、と思ったからだ。
 それでも、美しい月を雅羅と一緒に見られて、今は雅羅の一番近くに居られて、理沙は嬉しく思う。
 だからこそ理沙は、以前した告白の返事を聞こうとはせず、お月見を楽しんだ。
「雅羅と一緒に過ごせる時間が今の私には宝物なのよ」
 そう伝えはしたが、雅羅からの返事は急かさなかった。
「私も、理沙と一緒に過ごす時間が本当に大切なの。今日も、誘ってくれてありがとう」
「ほら、いつも災厄ばかりで、あまり周りの景色を楽しんだりする余裕がなかったから……こうして一緒に普通に過ごせることが、嬉しいのよ」
「雅羅……」
 理沙は、雅羅の目を見つめて、微笑んだ。
「私、今、凄く楽しいわ♪」
 雅羅と理沙はそれからもしばらく月を眺めて、ひと時の穏やかな時間を過ごしていた。