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お月見の祭り

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お月見の祭り
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 冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)は、泉 美緒(いずみ・みお)を誘ってお月見の祭りに来た。
「ここで美緒に告白してからもう一年経つのね……」
 一年前、小夜子はここで美緒に告白した。その時のことを、漠然と小夜子と美緒は思い出す。
「あっという間でしたけれど、たくさんのことがあったように思いますわ」
 美緒の言葉に微笑んで、小夜子は美緒の手を取る。
「以前は小舟で池に漕ぎ出しましたけど、今日は竹林にある細い散策路に行きましょうか?」
 そう言って小夜子と美緒は、竹林の間の細い散策路に入っていった。

 細い散策路を、小夜子と美緒は手をつないで寄り添って歩く。
「灯りもあるけど、転ばないように足下には気をつけてね」
「ありがとう、大丈夫ですわ」
 美緒はそう言うけれど、小夜子は美緒がつまづいてしまってもすぐに抱きとめられるように、握る手に少しだけ力を込めた。
「……ふふっ、あの月を見てると、告白した去年の事を思い出しますわ」
 小夜子の中に漠然とあった去年の思い出が、次々と形を取り戻していく。
 今日と同じくらいの気温だったこと、美緒を抱き寄せた時のぬくもりの感触……。
「あれから一年、美緒と一緒に過ごして色々あったわね。私は美緒に甘えて迷惑掛けたかもしれないけど……私は幸せだわ」
 そう言って、小夜子は美緒を見つめた。
「美緒はこの一年、どうだったかしら……?」
 小夜子に見つめられた美緒も、幸せそうに微笑んだ。
「とても充実していて、今まで以上に色んな事に触れられた、見聞を深めることのできた一年でしたわ。小夜子と過ごす時間は、いつも未知の世界を体験しているようで、とても楽しくて……」
「ありがとう、美緒」
 小夜子は美緒をそっと抱き締めた。
 小夜子と美緒と、互いの幸せがあってこその恋人だ。小夜子は、美緒が自身と過ごす一年の中で、楽しく過ごしてもらえたことを非常に嬉しく感じていた。
「美緒……」
 小夜子は、いつもよりも少し情熱的な口付けをした。
 口付けが終わり、小夜子は美緒を優しく抱き締める。
「……美緒、これからもよろしくお願いしますね」
 小夜子が囁くと、美緒は幸せそうな表情を見せた。
「わたくしの方こそ、これからもよろしくお願い致しますわ」

 それからも二人は、ゆっくりと二人きりの幸せな時間に浸っていた。