リアクション
エピローグ
未来は過去を見ている。
過去に浸って今を諦めるためではない。新たなる未来に進むために、過去を見て学んでいるのだ。
機甲虫は人類との和平を結ぶため、特使を各学校に派遣した。その際に機甲石が各学校に譲渡され、機甲石をどう使うべきかは人に託された。
サートゥルヌス重力源生命体が去った今、機甲石が時間乱動現象を引き起こす事は無い。大部分の危険性が除去された機甲石は機晶石に類似する動力源の1つとして、各学校に受け入れられた。
使用例の1つとして、シャンバラ教導団は機甲石を用いた動力炉をアルト・ロニアに建設する事になった。これはダリルの提案による所が大きかった。
アルト・ロニアの住民には、約5000年前の大廃都に関する情報が全て公開された。その上で、機甲虫との戦いが終わった事が宣言された。
アルト・ロニアの住民はショックを受けたが、真実が全て開示された事である程度の不安は取り除かれた。
勿論、納得のいかない者もいた。人は、時として感情に身を任せる生き物だ。
機甲虫もまた、人類を完全に信用している訳ではない。アルト・ロニアの住民と機甲虫の間には、未だ深い溝が残っている。
両者の間に横たわる大きな溝を乗り越えられるかどうかは、当人たちにかかっている。
「本当に、少しずつだけど……人が戻ってきたわね」
上空からアルト・ロニアを見渡しながら、リネンが呟いた。
不意に、携帯電話が鳴った。アルト・ロニアの住民からのSOSだ。
『聞こえますか、リネンさん! アルト・ロニアの東部でデモが起きています! 彼らは機甲虫を排斥すべしと訴えています! このままでは暴力沙汰になりかねません!』
『アー、アー、こちらアルト・ロニア北部! 機甲虫排斥派が機甲虫に石を投げたせいで、睨み合いが発生している! 目撃者の証言によると、負傷者が出た模様! リネンさん、早くこっちに来てくれ!』
リネンは肩を竦めた。ここのところ、毎日のように事件が続いている。
青空の下、リネンはデファイアントに乗る相棒に声をかけた。
「ヘリワード、北部の方は頼める?」
「ええ、大丈夫よ」
「良し、じゃあ行きましょうか」
リネンは愛馬ネーベルグランツを駆り、現場に急行した。
遠くに去った者たちも、いつかは戻ってくるだろう。
戻って来ないとしても、それはそれで悪いことではない。自分だけの新天地を見つけて、そこに定住するのも人の自由だ。
全ては自由だ。人は――生命は、自由だ。
いつかきっと、邂逅する時もあるだろう。
――この、青空の下で。
〜FIN〜
●マスターコメント
初めましての方は初めまして、そうでない方はこんにちは。半間浦太です。
ここまで付き合って頂き、本当にありがとうございました。今回のシナリオを以て私は『蒼空のフロンティア』から離れます。皆さんの中に素敵な思い出が残る事を、心の底より願っています。
それでは、いつかまた会える日を願って。
ありがとうございました!