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リアクション
6月某日の夜。
「今の季節、ジューンブライドで微笑ましいですよね」
ツァンダの御神楽邸。リビングでくつろいでいる御神楽 陽太(みかぐら・ようた)は、御神楽 環菜(みかぐら・かんな)に微笑みかけた。
「もうそんな季節なのね」
環菜もカレンダーを確認し、納得したように頷いた。
「俺たちも結婚3周年のお祝いをしませんか?」
「お祝い……いいわね」
陽太はリビングをくるりと見回した。
「思い立ったが吉日と言いますし」
陽太と環菜は、同時に眠っている陽菜の方を見た。ベッドに寝かしつけられた陽菜は、気持ち良さそうに眠っている。
「今から、お祝いしましょうか」
キッチンにあったあり合わせの材料で、ケーキの生地を作る。できあがった生地をオーブンに入れれば、今度は衣装探しだ。
誓いのタキシードと誓いのタイを手に取った陽太の隣で、環菜はワンピースやドレスを見繕っている。
「この白いドレスなら、ウェディングドレスらしくなるわね。
「あ、何かヴェールになりそうなものもあったらいいですね。レースか布か……」
こうして、その場の思いつきで、次々とプチ結婚式の準備が整っていく。
白いレースを手に取った陽太は、ふと、環菜がこちらを見て微笑んでいることに気付いた。
「どうしました?」
「ついさっきまではなかったものが形になっていく。それが、楽しいな……って」
「俺もです」
リビングのソファを端に寄せ、祭壇に見立てた机を置けば、そこは二人の結婚式場。
タキシード姿の陽太の腕に、白いドレスにレースのヴェールを被った環菜が立つ。
「陽太」
「何ですか?」
「三年前、結婚してからずっと、世界で二番目に幸せだったわ」
環菜はそう言って、少し照れながら自分の腕を絡めた。
「これからもずっと、世界で二番目に幸せよ」
「俺も、世界で一番幸せで……これからも、世界で一番幸せです」
陽太と環菜は、幸せを噛みしめるように見つめ合って、そして歩き出した。
二人並んで、ゆっくり、ゆっくり、歩む。陽太はヴェールを被った環菜の横顔を見た。
やっぱり、何年経っても環菜のことが好きだ。自然と高鳴る鼓動に、陽太は幸せを感じながら、歩を進める。
祭壇の前に立った二人は、誓いの糸をお互いの小指に巻きつける。
「ずっとずっと環菜のことを幸せにします」
「ずっとずっと陽太のことを幸せにします」
陽太と環菜は、お互いに誓い合う。
「俺は環菜と一緒に幸せな家庭をつくっていきたいです」
「私も陽太と一緒に幸せな家庭をつくっていくつもりよ」
「えっと、これからもよろしくお願いします」
「ふふ……こちらこそ、よろしくね」
環菜のヴェールを上げて、陽太はキスをする。
誓いの糸は鮮やかな赤に染まり、二人を祝福しているようだ。
キッチンからふんわりと、ケーキの甘い匂いが漂ってきていた。
「ケーキ、食べましょうか」
焼きあがってきたケーキに、二人で入刀。どちらともなく笑みが零れる。
「キッチンにあったものだけで作ったけれど、案外ちゃんとしたケーキになったわね」
ケーキを切り分ける環菜は、どことなく嬉しそうだ。
「本当に、幸せです」
「私もよ。こんなにも毎日幸せに過ごして来られて……本当に嬉しいわ」
陽太と環菜は、陽菜を起こしてしまわないように、少し声のトーンを落として語り合う。
二人で鉄道事業に奔走しながらも、毎日幸せに日々を過ごし、時には夫婦二人でデートをして。そんな中で、大切な愛娘、陽菜も産まれた。
陽太と環菜は、眠っている陽菜を見てどちらともなく微笑み合い……甘い口付けを交わした。
「愛しています」
「私も、愛してる」
寝室に向かいながら、陽太と環菜はもう一度キスをした。
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