リアクション
「かわいいどうぶつさん、いっぱいー!」
御神楽 陽太(みかぐら・ようた)のパートナーのノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)は、御神楽夫妻に話を聞いて、遠足に訪れていた。
子供化して遊んで楽しかったと聞いていたので、ノーンも可愛らしい幼児と化して、一緒に訪れたお友達と一緒に遠足を楽しんでいる。
「あの、ここのどうぶつさん、さわっていいの?」
「どうぞ。こうして背中を優しく撫でてあげてね。動物さん小さいから、ちょっと力を入れただけで痛いって感じちゃうから優しく優しくしてあげてね?」
「うん!」
スタッフのお姉さんに教えてもらった通り、ノーンはモルモットにそっと手を伸ばして、優しく優しく背中を撫でた。
モルモットは「キューキュー」と鳴き声を上げて、ノーンに目を向けた。
「ありがとって言ってるわ」
「ほんと? こっちこそありがとね。こわがらないでなでさせてくれて、ありがとね!」
「うさぎさんが、たくさん〜」
デュアルツインテールの5歳くらいの女の子、騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は、うさぎのコーナーに訪れていた。
「さわっていいの?」
スタッフのお姉さんに聞くと、お姉さんはうさちゃんを一匹、そっと差し出してくれた。
「やさしく撫でてあげてね」
「うんっ! えっと……いいこいいこ。なでなで」
詩穂がちっちゃな手で撫でると、うさちゃんは気持ちよさそうな顔で、小さな鳴き声をあげた。
「あははっ、かわいいっ」
「ちょうどごはんのじかんなんだって!」
うさぎの餌を手に、ノーンがとてとて近づいてきた。
「そうなの? それじゃ、ちほ、うさぎさんがたべるとこみるッ」
詩穂はしゃがんでうさぎたちをじっと眺める。
「うさぎさんたくさん、かわいいね! どうぞごはん」
ノーンはスタッフのお姉さんからもらった、兎用の餌を、兎たちに食べさせてあげる。
「おいしいですか? おいしいごはんをたべたらおひるねのじかんですよー」
詩穂はわくわく眺めていて、うさぎたちがご飯を終えて、のんびりくつろぎはじめたときに。
「ブラッシングのちゃんす! ツヤツヤでもっと愛されどうぶつにするのです☆」
詩穂はちゃんとスタッフのお姉さんに許してもらってから、うさちゃんたちの背をそっとそおっとブラシングさせてもらった。
「ふわふわの毛から小さなヒツジさんやケセランパサランがつくれるのです」
「けせらんぱさらん?」
ノーンが不思議そうに首をかしげる。
「そうなんです。どうぶつさんかぁいくて……ちほ、けせらんぱさらんんいなっちゃうですぅッ!」
目を輝かせて興奮して詩穂は良く分からないこと言った。
「え? え? それはたいへん? それともいいこと?」
「いいことなんです。でもこまるんです。ちほはおうちにかえって、やらなきゃいけないことが……でも、ケセランパサランもやらなきゃなんです」
「そうなんだ、それじゃいっしょにがんばろ!」
「うん、がんばりますッ!」
そうして詩穂とノーンは幼児語で大人にはわからない話をしながら、熱心にうさぎの世話をするのだった。
……そして数時間後。
気づけば2人とも疲れてうとうととしてしまっていた。
「ん……あ、やぎさんとふくろうさんがたくさんいるのです!」
動物小屋の中に、動物たちが増えている。
「んー……みたことないどうぶつさんだよ! このこもとってもかわいいよ!」
ノーンはヤギでも梟でも、兎でもモルモットでもない小動物を発見して、近づいた。
「せんせー、このこつれてかえってもいい?」
訪れていたリーアに尋ねるけれど。
「このこのおうちはここだけら、連れては帰れないわよ〜」
「うーん……そうなんだ。うーん……おうちにいたいよね?」
リスのような珍しい動物に聞いてみたら、動物は瞬きをした。
それがうんという返事のように見えて、ノーンは残念そうにため息をついて、諦めた。
「でもさいごに、なでさせて」
そして、手を伸ばしてその仔の背をそおっと撫でさせてもらった。
「つるつる、きもちいい〜」
「どうぶつさんたちも、おうちに帰る時間なのですねー。
でんでんでんぐりがえってばいばいばい、また会おうね☆」
詩穂は手を振りながら、先にリーアに連れられて小屋から出ていく。
「ノーンちゃんも、早くいらっしゃい」
「はあい」
リーアに呼ばれたノーンも、動物さんたちとさよならをして、動物小屋を後にしたのだった。
日が暮れてからは、夕涼みをして。
触れ合った小さな動物さんよりもっと小さな生命。
きらきらした蛍も観賞して。
沢山遊んだあと、お友達になった契約者の皆と笑い合いながら、帰っていったのだった。
○ ○ ○
「とうちゃんどこー? とうちゃーん」
ショートカットの5歳くらいの女の子、
泉 椿(いずみ・つばき)は大好きな父親の姿を探していた。
「たかいとこなら、とうちゃんがみつかるかも」
そう考えて、ジェットコースターに乗ってみたけれど、見えるのは景色と子供の姿ばかりで、父親の姿はどこにもなかった。
椿の父親は既に亡くなっていて、今日も一緒に来てはいないのだけれど……。幼児化した影響でよくわからなくなっており、探せば見つかるような気がして、椿は父親の姿を探して、求めて歩き回っていた。
「お父さんと逸れちゃったのかな?」
クレープ屋さんで接客をしていたお姉さんが話しかけてきた。
「うん、あたしのとうちゃんはいけめんで、とってもつよくてかっこいいんだ!
なあ、いっしょにさがしてくれよ」
椿はお姉さんの手をぎゅっと掴んでお願いをした。
「あっ、かっこいいおにいちゃんがいる!」
が、クレープを作っているイケメンのお兄さん店員を発見すると、お姉さんの手を離してカウンターにダッシュ。
「おにいちゃん、なまえは? いっしょにあそぼう!」
「ええっと、お兄さんは仕事中だから……」
「今の時間は私一人でも大丈夫だから、いってあげて。お父さんを探してるらしいの」
お姉さんがお兄さんにそう言って、仕事を代わってくれた。
「それじゃ、いこうか」
「うん、あたしはいずみつばき!」
カウンターから出てきたお兄さんの腕をぎゅっと掴んで、椿は笑顔を見せた。
クレープ屋さんのエプロンが似合う、優しく整った顔つきのお兄さんだった。
「おにいちゃん、なにのりたい? あたしはたかいところいくののりたい!」
「それじゃ、観覧車と空中ブランコ乗ろうか。お父さんやお友達の居場所もわかるかもしれないしね」
「うん!」
椿はお兄さんと一緒に観覧車や空中ブランコに乗って、思い切り楽しんだ。
お兄さんはその間、椿のお友達……リーアや子供化した契約者達を探していてくれていたみたいで。
「椿ちゃん、皆のところに行きましょう」
乗り物の出口に、お兄さんから連絡を受けた風見瑠奈が迎えに来てくれていた。
「うん……けどまだ、とうちゃんがみつかってないし、おにいちゃんとももっとあそびたい……」
駄々をこねはじめた椿だけれど。
「よし、つぎはどーぶつのしゃしんとろうぜ!」
「へんがおとか、うれそうだよな」
「あとはしってるすがたとか! これ、ケツたたくようのむちだ!」
木の棒を振り回している悪ガキ達の姿が目に入ると。
「こらー! どうぶつさんをいじめたらだめー! そういうやつは、あたしがぶっとばす!」
拳を振り上げて、悪ガキ達のところに走っていった。
そして追いかけ回しているうちに、仲良くなって。
気づけば一緒に楽しく、集合の時間まで遊んでいたのだった。