校長室
黄金色の散歩道
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紅葉 とある天気の良い日のこと。 高円寺 柚(こうえんじ・ゆず)と高円寺 海(こうえんじ・かい)は少し遠出をして、夫婦で山に紅葉狩りをしに来ていた。 「晴れて良かったですね」 「ああ、向こうの山の紅葉まで良く見える」 過ごしやすいほど良い気候で、外出には最適な秋晴れ。 色付いたイチョウやモミジの葉がはらはらと舞い落ちて、足元を彩っていく。 「家の近くより山の方が赤と黄色が鮮やかで綺麗な気がしますね」 「そうだな」 海も柚に同意して、木々を見上げながら山を登っていく。 「ここが山頂か」 山頂に辿り着いた海が呟く。 あまり高い山ではないが、柚は少し疲れたように肩で息をした。 「大丈夫か?」 「はい……」 もう少し鍛えないと、と柚は苦笑いする。 (海くんは運動してるからあんまり疲れてないよね、きっと) ちらりと柚が横目で見た海は、普段とあまり変わらない表情で周囲を見回していた。 「この辺りにするか」 海がすぐ近くに見つけたのは向かいに広がる山々も紅葉していて、澄んだ青空との対比も美しい、絶景スポットだ。 三百六十度どこを見ても、息を飲むような光景が広がっている。 「すごい、綺麗……」 柚も思わずその美しい光景に見とれていた。 「時間もちょうど良いな」 海につられるように、柚も空を見上げた。 優しく周囲を照らす日は天高く、ちょうど頭上で輝いている。 昼食にするには、ピッタリの時間だ。 「お弁当出しますね」 から揚げや卵焼き、さまざまなおかずの入った、彩りのある柚の手作りお弁当だ。 「外で食べるお弁当は良いよな」 海がおにぎりを美味しそうに食べながら、呟く。 「いつもより美味しく感じますね」 美しい景色を見ながら、柚と海はお弁当を食べた。 色鮮やかな世界に、二人きり。 「こんなに綺麗な景色を二人じめできて、嬉しいです」 柚と海は寄り添って、紅葉に染まる山を眺めていたのだった。 お弁当を食べ終わった二人は、散策しながらぶらぶらと山道を下っていた。 「海くん海くん」 少し海の後ろを歩いていた柚が声をかける。 「ん?」 振り向いた海の目に、鮮やかな赤と黄が映った。 「わっ」 思わず驚きの声を上げる海。 柚がフラワーシャワーのように、集めたイチョウやモミジの葉を海にかけたのだ。 「まったく……」 口ではそう言いながら、海は小さく笑みを口元に浮かべた。 「フラワーシャワーみたいで、綺麗ですよね」 「ああ……そうだな」 そう言いながら、海が柚の手を取った。 足元に敷き詰められた、黄色と赤の絨毯。 頭上からは、ひらひらと静かに舞い散っていく鮮やかな葉。 二人手を繋いで寄り添って散策をしていると、温かな気持ちが胸の奥に浮かび上がってくる。s 「!」 ふと、柚の髪に海が手を触れた。 「……絡まってたぞ」 海が柚の髪に絡まっていた葉を取り除く。 なんだかそんなことが嬉しくて、柚ははにかんだように微笑んだ。 「これから寒くなると、もっと近くにいられますね」 「ああ」 ひらひらと舞い散る紅葉の中で、柚と海はどちらともなくキスをする。 美しい二人きりの色鮮やかな世界で、柚たちは幸福に身を委ねていたのだった。