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嘆きの邂逅(最終回/全6回)

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嘆きの邂逅(最終回/全6回)
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〇     〇     〇


 皆が消えた後。
 倒れていたアレナは体を起こして、しゃがみこんで。
 1人で……泣いていた。
 太陽の光が届かない、薄暗いこの地で。
 優子は、訪れた者達は、どんな思いで毎日を過ごしていたのだろう。
 長く苦しい戦いを耐え抜いた皆を地上に返すことは『しなければいけないこと』で。
 自分も、地上の皆もそれを望んでいるけれど。
 やっぱり。
 1人は嫌で。
 優子と一緒が良くて。
 レイルのように、本当は泣いて嫌だと言っていたくて。
 だけど。
 自分はそのために造られた生き物だから。
 女王の代わりとして造られた存在だから。

 目に映る、光条兵器使いの遺体を見て思う。
 心なんて、なければよかったのに、と。
 命令で、動かせるよう造ればよかったのに、と。
 心がなければ、私という存在も、倒れている彼らと同じように滅ぼしてもらえて。
 楽に、なれるのに。
 楽に、なりたいのに。
 優子のいない世界で、目覚めることも。
 中途半端に目覚めてしまい、一人で苦しい時を過ごすことも。
 怖い。恐ろしい。狂ってしまいそう。命を今すぐ絶ってしまいたい。
「でも、できない……だめなこと……わがまま、言ってはいけない……」
 ぽたぽた、涙を落としながら、アレナは杖をぎゅっと握り締める。
「アムリアナ様、お力をお貸し下さい」
 そして、強い力で自分の体を可能な限り回復させる。
 色々教えてくれた人。友人になってくれた人達のことを思い浮かべながら、アレナは南の塔へと歩いていく。
 せめて、百合園女学院の下で眠りたいと。
「私は、やっぱりアレナとしては、生きられませんでした。私は十二星華のサジタリウス、なんです。ごめんな、さい……」
「アレナ」
 呟きを否定するかのように、彼女の名前を呼ぶ声があった。
 アレナは目を見開いて驚き、後退りする。
「皆に嘘ついたのか?」
 目の前にいたのは……大谷地 康之(おおやち・やすゆき)だった。
「なんで、ここ、に」
 驚くアレナに、康之はいつも通りの笑みを見せる。
「誰にも触らないで、木の陰に隠れてた」
「皆が心配します」
「某にはきちんと話した。俺が出した答えなら、止めない、覚悟もしてたって言ってた」
「他のお友達だって、心配します。嫌なはずです……っ」
「他のダチには他にも側にダチがいるし」
 近づく康之を前に、アレナはぽろぽろと涙を落として、嗚咽を上げて泣き出す。
「俺はアレナを見捨てて笑える人間じゃねえし、何よりさっき助けるって言ったばっかだしな!」
 そして、泣いている彼女のすぐ側で、康之は「一緒に残る」と告げる。
「嘘、ついてたら心の底から笑うなんて、できないぞ」
 泣いているアレナに、康之は優しくそう言った。
 アレナは嗚咽を漏らしながら、震える手を伸ばして康之の袖の裾を掴んだ。
「皆を護りたいのは本当です。でも、1人は嫌、1人になるのは嫌、だったんです……っ。いっしょに、いてください。ごめんなさい、ごめんなさい……」
「オレは自分の意思でここにいるんだから、謝ることなんて何もないぞ? アレナと一緒で嬉しい」
「あり、がと……」
「ん!」

 2人は手を繋いで、暗い塔の中へと入った。
 アレナは女王器を片手で胸に抱いて、友人達、アムリアナ、優子を思い浮かべて沢山の感謝をした後、目を閉じた。
 南の塔から、他の3つの塔、それから宮殿時計塔の解除された結界に干渉していく。
「おやすみ。目を覚ました時が何時であっても、約束は変わらないからな!」
 こくりと頷いた後、アレナは封印術を発動する。
 強い力が膨らんで、塔と離宮を覆っていく。
 暗い塔の中で。
 アレナと康之は互いの手の暖かさを感じあいながら……。
 長い眠りについた。

 次に目覚めた時には、笑顔のキミに会えると信じて。

 ―嘆きの邂逅 完―

担当マスターより

▼担当マスター

川岸満里亜

▼マスターコメント

嘆きの邂逅に、ご参加戴きありがとうございました。
皆様、本当にお疲れ様でした。

今回は1ページの文字数を少なめにしております。
文章量はいつも(いつもの2本分)よりやや多いくらいです。

殆どの方が、ご自身がやりたいことか責務としてやらねばならないことのどちらかに全力を注いでくださったと思います。
結果について、失敗と受け取られる方もいると思いますが、皆さんの頑張りと思いがとても素敵で感動させていただきました。

闇組織側に関しましては、シナリオ構想段階では全く予定をしていなかった桜井静香拉致事件などがあり、どうなることかと思いもしましたが、良い結末を迎えられたと感じています。
神楽崎分校のパーティは後日談シナリオで行いたいと思いますので、ご都合がつきましたら、ご参加いただければ幸いです!
役員や今後の運営方針などについても、検討が必要かと思います。

離宮側の本部に関しましては、私がもっと先導すべきだったかなと猛省しております。
1度だけ会議を行うことと、決定しなければならない事柄をこちら主導で提示させていただきましたが、できることなら、こうして毎回PC中心の話し合いの場を設けて、首脳部として離宮対策を地上面のみならず、進めてほしかったなと思いました。
今後このようなシナリオを行わせていただく際には、こちらで提示するか、本部はNPCに任せる方針で行わせていただこうと思いました(頭脳的にゲームメイクしたい方が少ない?)。

離宮側の地下に関しましては、最初に脅し過ぎてしまったかなという反省点があります。うー……ごめんなさい。
後半に入っても様子見や、危険なら踏み込まない、危なくなったら撤退という方針が殆どであり、お話が進みませんでした……。
その為、幾つかは若干強引に進めさせていただいており、そこまでのアクション書いてないよ!? と思われた方もいるかもしれません。

クリスと晴海に関しましては、関わってくださった方々に命を助けていただけました。
酷い目に遭わされているように見えると思いますがっ。でも、お蔭で彼女たちは助かったのです。
命を落とさずにすみましたし、未成年で人を殺めずにもすみましたので、考えを改める可能性はあるかと思います。

ソフィアは最初から、生存の可能性はほぼないだろうと思っていました。
ただ、クリスや晴海と同じく、強引に捕らえていたのなら(捕らえる系のアクションありませんでした)生き残ったかもしれません。それが彼女にとって良かったかというと、私はあまり良くはなかったんじゃないかな、と思います。
彼女の内心の真意は、長くなるのでここでは語りませんが、機会がありましたらご説明させていただくかもしれません。

【ご連絡】
大谷地康之(SFL0017267)様
リアクションの結果により、以後川岸のシナリオにご参加いただくことが出来なくなりました。
MCのご参加は勿論問題ありません。LC(康之さん)を追加された場合は、名前だけの登場、もしくはMCの思い出の中のシーンとして描かせていただきます。
アレナの心を護り、彼女を助けてくださり、本当にありがとうございます。

後日談シナリオを今月末頃に行いたいと思っております。
後日談シナリオでこのシナリオの結果を覆すことはできませんが、何か良いご提案をいただいた際には、番外編などを検討したいと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。

個別コメント、あまり書けていません。すみません。
貴重なアクション欄を割いての私信等、ありがとうございます。
ご参加本当にありがとうございました。

2011.2.13 場所の修正をしました。申し訳ありません。