リアクション
〇 〇 〇 皆が消えた後。 倒れていたアレナは体を起こして、しゃがみこんで。 1人で……泣いていた。 太陽の光が届かない、薄暗いこの地で。 優子は、訪れた者達は、どんな思いで毎日を過ごしていたのだろう。 長く苦しい戦いを耐え抜いた皆を地上に返すことは『しなければいけないこと』で。 自分も、地上の皆もそれを望んでいるけれど。 やっぱり。 1人は嫌で。 優子と一緒が良くて。 レイルのように、本当は泣いて嫌だと言っていたくて。 だけど。 自分はそのために造られた生き物だから。 女王の代わりとして造られた存在だから。 目に映る、光条兵器使いの遺体を見て思う。 心なんて、なければよかったのに、と。 命令で、動かせるよう造ればよかったのに、と。 心がなければ、私という存在も、倒れている彼らと同じように滅ぼしてもらえて。 楽に、なれるのに。 楽に、なりたいのに。 優子のいない世界で、目覚めることも。 中途半端に目覚めてしまい、一人で苦しい時を過ごすことも。 怖い。恐ろしい。狂ってしまいそう。命を今すぐ絶ってしまいたい。 「でも、できない……だめなこと……わがまま、言ってはいけない……」 ぽたぽた、涙を落としながら、アレナは杖をぎゅっと握り締める。 「アムリアナ様、お力をお貸し下さい」 そして、強い力で自分の体を可能な限り回復させる。 色々教えてくれた人。友人になってくれた人達のことを思い浮かべながら、アレナは南の塔へと歩いていく。 せめて、百合園女学院の下で眠りたいと。 「私は、やっぱりアレナとしては、生きられませんでした。私は十二星華のサジタリウス、なんです。ごめんな、さい……」 「アレナ」 呟きを否定するかのように、彼女の名前を呼ぶ声があった。 アレナは目を見開いて驚き、後退りする。 「皆に嘘ついたのか?」 目の前にいたのは……大谷地 康之(おおやち・やすゆき)だった。 「なんで、ここ、に」 驚くアレナに、康之はいつも通りの笑みを見せる。 「誰にも触らないで、木の陰に隠れてた」 「皆が心配します」 「某にはきちんと話した。俺が出した答えなら、止めない、覚悟もしてたって言ってた」 「他のお友達だって、心配します。嫌なはずです……っ」 「他のダチには他にも側にダチがいるし」 近づく康之を前に、アレナはぽろぽろと涙を落として、嗚咽を上げて泣き出す。 「俺はアレナを見捨てて笑える人間じゃねえし、何よりさっき助けるって言ったばっかだしな!」 そして、泣いている彼女のすぐ側で、康之は「一緒に残る」と告げる。 「嘘、ついてたら心の底から笑うなんて、できないぞ」 泣いているアレナに、康之は優しくそう言った。 アレナは嗚咽を漏らしながら、震える手を伸ばして康之の袖の裾を掴んだ。 「皆を護りたいのは本当です。でも、1人は嫌、1人になるのは嫌、だったんです……っ。いっしょに、いてください。ごめんなさい、ごめんなさい……」 「オレは自分の意思でここにいるんだから、謝ることなんて何もないぞ? アレナと一緒で嬉しい」 「あり、がと……」 「ん!」 2人は手を繋いで、暗い塔の中へと入った。 アレナは女王器を片手で胸に抱いて、友人達、アムリアナ、優子を思い浮かべて沢山の感謝をした後、目を閉じた。 南の塔から、他の3つの塔、それから宮殿時計塔の解除された結界に干渉していく。 「おやすみ。目を覚ました時が何時であっても、約束は変わらないからな!」 こくりと頷いた後、アレナは封印術を発動する。 強い力が膨らんで、塔と離宮を覆っていく。 暗い塔の中で。 アレナと康之は互いの手の暖かさを感じあいながら……。 長い眠りについた。 次に目覚めた時には、笑顔のキミに会えると信じて。 ―嘆きの邂逅 完― 担当マスターより▼担当マスター 川岸満里亜 ▼マスターコメント
嘆きの邂逅に、ご参加戴きありがとうございました。 |
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