リアクション
〇 〇 〇 東の塔に増援到着後、神拳 ゼミナー(しんけん・ぜみなー)と合流し、ヴァル・ゴライオン(う゛ぁる・ごらいおん)はパートナー達と救助の名目で使用人居住区方面に来ていた。 借りてきた通信機の情報によると、刀真達が機関室に到着し、ヒグザとソフィアと交戦したようだ。また、ソフィアは別邸の方へテレポートで向ったとのことだった。 ヴァルはそのまま、刀真達のいる機関室へと向かい、崩れた壁を潜り抜けて、その部屋へと足を踏み入れたのだった。 「うおっ、寒いっス!」 シグノー イグゼーベン(しぐのー・いぐぜーべん)が身を震わせる。壁や床の一部が凍り付いていて、その部屋はとても寒かった。 「ソフィアがブリザードを放ちました」 「腕、斬り落とした」 説明をする刀真と月夜は酷い凍傷を負っているようだった。 「治療します」 キリカ・キリルク(きりか・きりるく)が皆の前に出ると、リカバリで一気に癒す。 別邸から宮殿までの間には、敵の姿もあり、交戦しながら訪れたヴァル達も無傷ではなかった。 「ありがとうございます」 刀真は息をついて、体の調子を確かめながら、ここで起こったことを簡単にヴァル達に説明をする。 それからもう1人。この部屋には人物がいる。 桐生 円(きりゅう・まどか)だ。 彼女は部屋の中のモニターに張り付いて、何も言わずに眺めている。 飛び出しても、1人ではたどり着けない。ソフィアのことも、他のパートナーのことも、助けることが出来なくて、ただ、悔しげに画面に映る人物達を見ている。 「別邸に向わせた兵器とキメラの指揮をとるつもりのようですね。キメラ制御装置なら1つ確保できています。逆にソフィアを襲わせましょう」 刀真が懐から皮袋を取り出した。 「キメラが敵になるぐらいなら、暴れてくれた方がいい!」 途端、円が機械のスイッチを押し、ダイヤルを回す。 操作方法など何も知らないが、ソフィアがこうして電波妨害をしていたことは見て知っている。 「……ありがとございます」 静に言って、刀真は背後から円を拘束する。 「これがキメラ制御装置か?」 刀真が円を剥がした場所に、ヴァルが入り込んで機械パネルを眺める。 刀真は制御装置を持ってはいない。そのようなものが存在していることだけを聞いていただけだ。 「離せ!」 「大人しくしていて下さい」 あえて説明はせずに、暴れるまどかを拘束しつづけ、ヴァルに操作を任せる。 「今のところ感知できる範囲に敵はいないが、注意しろよ」 ゼミナーはディテクトエビルで警戒を払っておく。 ここの調査に訪れた者がいると知ったら、ヒグザやまだ捕まっていない敵側の人物がいるのなら、乗り込んでくる可能性もあるのだから。 「光が漏れると、光条兵器使いが近づいてくる可能性があります。塞ぎましょう」 キリカは落ちていた布などで、壁の穴をふさいでいく。 「ふむ……。マニュアルのようなものあるっスけど、何が書いてあるのかさっぱり解らないっスね!」 シグノーはトレジャーセンスで室内を調べて、引き出しや棚の中から重要そうな書類や機械を取り出していく。 だが、それらが何であるのかは全くわからない。書類も読むことができなかった。 ヴァルは出かけにマリザから古代の文字について習おうとしたが、マリザも辞書を携帯しているわけではないので、短時間でヴァルに教えることも出来ず、ヴァルも記憶術を使ってもそれほどの情報を記憶するのには無理があった。 「操れはしないようだな」 ヴァルは円が押したスイッチやダイヤル、その周辺のレバーを操作し、モニターを確認しながらそう言った。 別邸の方角にもカメラは設置されているようだが、別邸自体を移しているモニターは存在しなかった。 映っている敵兵器はヴァルがスイッチを操作すると若干動きが鈍るように感じられるが、その程度だった。 「携帯電話も通信機も使えなくなる可能性があるが、電波を強めてみるか?」 ヴァルが刀真に問う。 「確認してみましょう」 刀真は通信機で本陣へ連絡を取る。 円を拘束したこと、機器類を狂わす電波の発生方法を把握したことなどを報告していく。 『最大にすると、携帯電話や通信機が最悪壊れる可能性がある。全ての指示を終えるまで待ってくれ』 優子からはそう返事が届く。 更に、円のことは怪我をさせないよう注意した上で出来るだけ早く宮殿前に連れてくるようにと指示があった。 「わかりました」 返事をした後、刀真は円の意識を奪った。 「使用人居住区方面に敵の姿はない。東塔は現在かなり優勢に見える。1割ほど別邸防衛に向ってくれ!」 ヴァルも通信機をいれ、モニターで状況を確認しながら味方にリアルタイムな状況を知らせていく。 北の塔に残っていた久途 侘助(くず・わびすけ)と香住 火藍(かすみ・からん)は、地下道からの爆発音と衝撃を受けた後、共に北の塔の調査を担当していた赤羽 美央(あかばね・みお)とジョセフ・テイラー(じょせふ・ていらー)を追って、地下道へ飛び込んでいた。 南に向う通路に敵の姿はなかったが、爆発により地下道が崩れており、少し進んだだけで先には進めなくなってしまう。 2人とも通信機も持っておらず、携帯電話もパートナー通話以外繋がらない状況であるため、本陣に確認を取ることも出来なかった。 「多分、赤羽はこの下だ」 本陣への連絡より、侘助は救助を急ぐことにし、火藍と共に、崩れた壁や瓦礫を後方へ投げ捨て、美央達の姿を探していた。 「無事見つかってくれよ……赤羽……!」 詫助が焦って下の方の瓦礫をどかしたところ、上から、土や石が崩れ落ちてくる。 「うわっ」 辛うじて避けて、落ちた瓦礫を後ろへ投げ飛ばす。 「落ち着いて慎重に。彼女達なら大丈夫っですよ」 火藍も撤去を急ぎながら、焦る侘助にそう言った。 「わかってる。赤羽……! 赤羽ー! 聞こえたら返事してくれー」 土を堀り、瓦礫を投げながら侘助は大声を上げ続ける。 |
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